転生令嬢の幸福論

はなッぱち

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第二章

過去を敵視してやりました。

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 これで少しは未来が変わるはず。そう思ったのも束の間、私は気付いてしまいました。エイダンが英雄になるのを阻止したとして、私はどうなるのかと。

 もちろん、この場合の私とは、フィア嬢として存在している、この私です。

 エイダンは英雄にはならず、気ままな旅を終えれば私の元に戻るのかもしれません。私の望んだ将来がそこにはあるように思います。

 しかし、それでは困ってしまいます。だって、私エイダンと結ばれる為に、こうして人様の人生を乗っ取ってまで再チャレンジをしていますのに、自分自身に彼を奪われるなんてありえません。

「アリシア、僕を信じてくれ。きっと、君が誇れるような一回りも二回りも大きな人間になって戻って来るよ」

「エイダン……もちろんよ、もちろん信じているわ」

 彼の手を取り、涙などチラつかせて、当然のように彼の抱擁を受け止めているあの女。長年連れ添った誰よりも親しき間柄ですが、今この瞬間、私は私を敵だと思い知りました。

 その真っ平らの胸に絶望を与えてあげましょう。もう、何が何だか分からなくなってきましたが、私の目的はただ一つ。その障害となるならば、自分自身さえも切り捨てるのみでございます。

 しっかりと隠すように巻いていたスカーフを脱ぎ捨て、私は武器を構えました。周りで見ていた殿方のどよめきが、その攻撃力の高さを物語っています。

 殺れる。この胸囲を持ってすれば、あのような平たい胸には負けません。ただの腐れ縁で結ばれた絆など、ないも等しいのです。

 今この場でエイダンの身も心も奪ってみせましょうとも!

「なんとッ貴殿はもしや、あのエポロ山に住み着いた魔獣をたった一人で打ち倒した御方ではあるまいか」

 私が自分自身と対決する為に歩み始めた矢先でした。

 どこから現れたのか、それは見目麗しい青年が、歌劇のような思わず皆の視線を集めてしまうような声で、エイダンと私の間に割って入ります。
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