32 / 59
第二章
決意を新たにしてやりました。
しおりを挟む
「もちろん、聞いていますとも」
口に入っておりましたステーキをしっかり咀嚼して飲み込み、疎かになっておりました相槌と一緒に、誤解を解いておきます。
「アタイには、肉にかぶり付いてるようにしか見えないがね」
「まあ、失礼ですね。私、耳では食事などいたしませんわ。ほら、見て下さいまし、しっかりと空いているでしょう。サリー様のご高説ちゃんと耳に届いておりますとも」
「いちいち腹の立つ言い方をする子だね。まあ、いい……なら、こっからが本題だ」
サリー様はグッと机に上体を乗りだし、私にも同じように近くに寄るよう申しました。
「エポロに巣くってた魔獣てのは『番い』なんだよ。片割れを殺られて、黙っているとは思えないのさ。正直、今この場にいるのも生きた心地がしないね」
エイダンの方へ視線をやり、サリー様は肩を竦めて見せました。
「だから、今回の仕事は無しだ。エレノア、いいね」
「私はフィアですわ。そのような名で呼ぶのはよして下さいな」
私の言葉にサリー様は難しい顔をします。『何を言ってるんだ、話を聞いていたのか』と表情で責めているのでしょう。
しかし、私にはエレノアとして生きる理由などないのです。どんなに危険であろうと、フィアとして進むしかない。
それに、エイダンの身にそのような危険が迫っているのであれば、尚のことです。
「サリー様、その無駄に鍛え上げたお体は飾りですか? その程度のことで、尻尾を巻いて逃げるなど、情けないとは思いませんの」
最後に残した大きめのステーキ一切れに、勢いよくフォークを突き刺します。少々口元が汚れてしまいますが、一口にそれを頬張り反論して来ないサリー様の前でモッシャモッシャと頂きました。
「少々の危険は承知の上です。リスクを恐れていては何も掴めませんわ。大きく賭けて大きく勝ちましょう。今がその時ですわ」
脱ぎ捨てた趣味の悪いスカーフで口元を拭います。そして、私は伝票をサリー様に手渡し、席を立ちました。
「さあ、そうと決まればお仕事のお話をしましょう。時間がもったいないですから、教会への道すがらで結構でございますよ」
渋々席を立って下さったサリー様を横目に、私は少しだけ振り返りました。
「必ず、貴方の元へ参ります」
私の呟く言葉に、エイダンはもちろん気付きません。
それでも、今の私と貴方の縁は結ばれていると信じ、しばしの別れを噛みしめ、冒険者ギルドを後にしました。
口に入っておりましたステーキをしっかり咀嚼して飲み込み、疎かになっておりました相槌と一緒に、誤解を解いておきます。
「アタイには、肉にかぶり付いてるようにしか見えないがね」
「まあ、失礼ですね。私、耳では食事などいたしませんわ。ほら、見て下さいまし、しっかりと空いているでしょう。サリー様のご高説ちゃんと耳に届いておりますとも」
「いちいち腹の立つ言い方をする子だね。まあ、いい……なら、こっからが本題だ」
サリー様はグッと机に上体を乗りだし、私にも同じように近くに寄るよう申しました。
「エポロに巣くってた魔獣てのは『番い』なんだよ。片割れを殺られて、黙っているとは思えないのさ。正直、今この場にいるのも生きた心地がしないね」
エイダンの方へ視線をやり、サリー様は肩を竦めて見せました。
「だから、今回の仕事は無しだ。エレノア、いいね」
「私はフィアですわ。そのような名で呼ぶのはよして下さいな」
私の言葉にサリー様は難しい顔をします。『何を言ってるんだ、話を聞いていたのか』と表情で責めているのでしょう。
しかし、私にはエレノアとして生きる理由などないのです。どんなに危険であろうと、フィアとして進むしかない。
それに、エイダンの身にそのような危険が迫っているのであれば、尚のことです。
「サリー様、その無駄に鍛え上げたお体は飾りですか? その程度のことで、尻尾を巻いて逃げるなど、情けないとは思いませんの」
最後に残した大きめのステーキ一切れに、勢いよくフォークを突き刺します。少々口元が汚れてしまいますが、一口にそれを頬張り反論して来ないサリー様の前でモッシャモッシャと頂きました。
「少々の危険は承知の上です。リスクを恐れていては何も掴めませんわ。大きく賭けて大きく勝ちましょう。今がその時ですわ」
脱ぎ捨てた趣味の悪いスカーフで口元を拭います。そして、私は伝票をサリー様に手渡し、席を立ちました。
「さあ、そうと決まればお仕事のお話をしましょう。時間がもったいないですから、教会への道すがらで結構でございますよ」
渋々席を立って下さったサリー様を横目に、私は少しだけ振り返りました。
「必ず、貴方の元へ参ります」
私の呟く言葉に、エイダンはもちろん気付きません。
それでも、今の私と貴方の縁は結ばれていると信じ、しばしの別れを噛みしめ、冒険者ギルドを後にしました。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる