33 / 59
第三章
聖女宣言をしてやりました。
しおりを挟む
冒険者ギルドの一件で、私のやるべきことがようやく見えてきた気が致しました。
エイダンにはこのまま予定通り英雄へ道を進んで頂きまして、私は旅の道中で合流する、そして予定通りに運命的な出会いをして結ばれるのです。
その演出に魔王を倒すなんて、なかなかロマンティックじゃありませんか。
命を懸けて世界を救ったカップルには、その後の人生、幸福しか待っていないに違いないのです。
ならば、今急いてエイダンと接触する必要はありません。自分と争うというのも、正直気持ちの良いものではありませんし……まあ邪魔をするならば容赦はしませんが。
「本当にいいのかい。下手をすると死ぬよ」
「もう、私一度は死んでいますもの。かまうものですか」
ギルドを出てから何度となく繰り返されたサリー様のご忠告に、いい加減うんざりして本音で答えますと、ようやくご理解頂けたのか、彼女の足にも迷いが消えました。
「そこまで覚悟の上なら、アタイが止める理由はないね」
足を止めて私を見つめますサリー様の表情で、この旅の危険度が窺えます。けれど、引く訳にはいきません。しっかり見つめ返すと、サリー様は豪快に破顔されました。
「安心しな。アタイを誰だと思ってんだい。魔獣が出ようと何が出ようと、アンタ一人くらい抱えて逃げ切ってやるよ」
「そんな弱気でどうしますか。魔獣が出たらステーキにしてご馳走してやるくらい言って下さいまし」
「んなモン食ったら、腹から腐って死んじまうよ。胸くそ悪こと言うんじゃないよ、まったく」
なんと! サリー様ですら、魔獣を食べようとはなさらないのですね。
確かに、内臓がどうになっていそうな勢いでお腹は下しましたが、死ぬほどのモノではありませんでしたけどね。
「なら、とっとと教会に話つけに行くよ。アンタ今回の仕事について、どこまで把握してるんだい。抜けがあるなら、道中に説明してやるよ」
埃っぽい道を歩き、二つ先の通りにある教会へと向かいます。サリー様の言葉に私はスクラップした新聞記事を思い出し『フィア』がたどる未来を告げました。
「隣国の援軍に召集されて、医療班の一員として遠征に向かい、潤いのない旅路で聖女として華々しくデビュー。奇跡の力を持って、殿方を癒やしますわ」
エイダンにはこのまま予定通り英雄へ道を進んで頂きまして、私は旅の道中で合流する、そして予定通りに運命的な出会いをして結ばれるのです。
その演出に魔王を倒すなんて、なかなかロマンティックじゃありませんか。
命を懸けて世界を救ったカップルには、その後の人生、幸福しか待っていないに違いないのです。
ならば、今急いてエイダンと接触する必要はありません。自分と争うというのも、正直気持ちの良いものではありませんし……まあ邪魔をするならば容赦はしませんが。
「本当にいいのかい。下手をすると死ぬよ」
「もう、私一度は死んでいますもの。かまうものですか」
ギルドを出てから何度となく繰り返されたサリー様のご忠告に、いい加減うんざりして本音で答えますと、ようやくご理解頂けたのか、彼女の足にも迷いが消えました。
「そこまで覚悟の上なら、アタイが止める理由はないね」
足を止めて私を見つめますサリー様の表情で、この旅の危険度が窺えます。けれど、引く訳にはいきません。しっかり見つめ返すと、サリー様は豪快に破顔されました。
「安心しな。アタイを誰だと思ってんだい。魔獣が出ようと何が出ようと、アンタ一人くらい抱えて逃げ切ってやるよ」
「そんな弱気でどうしますか。魔獣が出たらステーキにしてご馳走してやるくらい言って下さいまし」
「んなモン食ったら、腹から腐って死んじまうよ。胸くそ悪こと言うんじゃないよ、まったく」
なんと! サリー様ですら、魔獣を食べようとはなさらないのですね。
確かに、内臓がどうになっていそうな勢いでお腹は下しましたが、死ぬほどのモノではありませんでしたけどね。
「なら、とっとと教会に話つけに行くよ。アンタ今回の仕事について、どこまで把握してるんだい。抜けがあるなら、道中に説明してやるよ」
埃っぽい道を歩き、二つ先の通りにある教会へと向かいます。サリー様の言葉に私はスクラップした新聞記事を思い出し『フィア』がたどる未来を告げました。
「隣国の援軍に召集されて、医療班の一員として遠征に向かい、潤いのない旅路で聖女として華々しくデビュー。奇跡の力を持って、殿方を癒やしますわ」
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる