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第三章
お土産を頂いてやりました。
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そもそもこの箱の構造自体、この世には存在しないそうで、錠と呼応して引き出しの数が変わると聞いています。
最高で百ほど利用出来る物まで見せて頂きましたが、ユリア様がご使用の錠は、お手頃価格の(とは言え軽くお屋敷が一軒建ってしまうほどのお値段ではございますが)二つ引き出しがあるタイプでした。
「うぅううっぅ、ほんとになんなのこの子」
「なんせ、アタイの相棒だからねぇ」
悔しそうに涙を滲ませるユリア様に、サリー様が私にとっては不本意なことを言って笑います。
再び封印を解いて下さった箱から出て来たのは、それは見事なピンク色に輝く卵ほどの大きさがある宝石でした。
「ほう……こりゃあ見事なピンクダイヤだ。聖女志望がこんなところにもいるとは、笑わせてくれるね」
サリー様の言葉にユリア様はウッと言葉を詰まらせました。どういう意味か伺うと、このピンクダイヤと呼ばれる宝石は、女神様が大変好まれるのだと、教えて下さいました。
「では、ありがたく、こちらもお借りしますね」
魚を釣るのにも餌が必要ですから、女神様を誘き出す為にはこの宝石が必要になるかもしれません。
「本当に帰って来たら返してくれるんでしょうね」
ユリア様はご自分の立場をご理解なさっていないようで、実に無礼な視線を向けてきます。
「道中で私がマザー様にバッタリ出会わないことを女神様にお祈りなさったらどうかしら?」
ご忠告さし上げたと言うのに、ユリア様は人を泥棒だ悪魔だ物騒な言葉で罵りながら、大泣きを始めました。ラッパ飲みしていたワインの酔いが回られているようです。
「んじゃ、この二つはアタイが預かっとくよ」
水晶とダイヤをサリー様は自分のポケットにしまおうとなさいました。持ち逃げするのではないかしらと、視線で抗議しました所「その目を止めな。アンタが持ってたら教会に没収されちまうだろが」と呆れた表情をされしまいます。
最高で百ほど利用出来る物まで見せて頂きましたが、ユリア様がご使用の錠は、お手頃価格の(とは言え軽くお屋敷が一軒建ってしまうほどのお値段ではございますが)二つ引き出しがあるタイプでした。
「うぅううっぅ、ほんとになんなのこの子」
「なんせ、アタイの相棒だからねぇ」
悔しそうに涙を滲ませるユリア様に、サリー様が私にとっては不本意なことを言って笑います。
再び封印を解いて下さった箱から出て来たのは、それは見事なピンク色に輝く卵ほどの大きさがある宝石でした。
「ほう……こりゃあ見事なピンクダイヤだ。聖女志望がこんなところにもいるとは、笑わせてくれるね」
サリー様の言葉にユリア様はウッと言葉を詰まらせました。どういう意味か伺うと、このピンクダイヤと呼ばれる宝石は、女神様が大変好まれるのだと、教えて下さいました。
「では、ありがたく、こちらもお借りしますね」
魚を釣るのにも餌が必要ですから、女神様を誘き出す為にはこの宝石が必要になるかもしれません。
「本当に帰って来たら返してくれるんでしょうね」
ユリア様はご自分の立場をご理解なさっていないようで、実に無礼な視線を向けてきます。
「道中で私がマザー様にバッタリ出会わないことを女神様にお祈りなさったらどうかしら?」
ご忠告さし上げたと言うのに、ユリア様は人を泥棒だ悪魔だ物騒な言葉で罵りながら、大泣きを始めました。ラッパ飲みしていたワインの酔いが回られているようです。
「んじゃ、この二つはアタイが預かっとくよ」
水晶とダイヤをサリー様は自分のポケットにしまおうとなさいました。持ち逃げするのではないかしらと、視線で抗議しました所「その目を止めな。アンタが持ってたら教会に没収されちまうだろが」と呆れた表情をされしまいます。
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