転生令嬢の幸福論

はなッぱち

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第三章

一息入れてやりました。

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「ここの身体検査はあそこまで調べられるんだ。いくらアンタでも隠しようがないだろ」

 ご自分の下腹部をパンパン叩きながら、非常に下品なことを言われます。

「そこはユリア様のご威光でスルーしますから平気ですわ」

「んなことしたら、一発で怪しまれるぜ。せめて都を出るまでは大人しくしてな。ユリアはこんな危ない橋を渡るような奴だよ。関わりがあることを知らしめてメリットはないだろ。最悪、婆さんにコイツを売り渡すなら尚更な」

 指先で水晶を放り投げ、奪い返そうとしたのでしょうか、飛びかかって来たユリア様をヒョイと避け、サリー様はベルトと一体化した小さなポケットに二つを共納めてしまわれます。

「サリー様は私とユリア様、どちらの味方ですの」

 言いように丸め込まれた感があり、私はサリー様に詰め寄りました。

「安心しな、今はアンタに首ったけさ。何があろうと、アンタはアタイが守ってやるよ」

 このようなお言葉は出来れば殿方に言って頂きたいものです。

「てぇ訳だ。ユリア、その首が胴体と別れたくねぇってんなら、分かってるね。この世間知らずなお嬢ちゃんをよろしく頼むよ」

「わかったわよ……そっちこそ、依頼はちゃんとこなしてよ。教会はガルーダ王子がお隠れになると、ひっくり返るの。なんとしても、無事にご帰還されないと困るのよ」

 あら、依頼ってそもそも、どういったものだったかしら。私には関係ないことなのですけれど、ここで退席するのも躊躇われますので、お二人の会話に耳を傾けます。

「具体的にはアタイに何をさせたいんだい。さすがに王族の身辺警護を傭兵なんぞには任せないんだろ。なら刺客の排除かい」

「ええ、現状で二十三人の刺客が兵の中に紛れているの。サリーにはそいつらを始末して欲しい」

 実に物騒なお話です。口直しに折角ですので、私もワインを頂いてしまいましょう。
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