『拳銃』

篠崎俊樹

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第9話。

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 東山は帰署すると、署内のコンピューターに向かい、岸川が失態を犯した、三年前のガソリンスタンド放火事件について、詳細を調べた。あの事件は、二〇一九年の十一月に巻き起こり、放火犯はスタンドにガソリンをばら撒き、ライターで火を点けて、全焼させてから、逃走した。その事件の捜査を担当したのが、岸川陽一元警部だ。
 東山はコンピューターの電源を落として、必要な部分だけ、プリントアウトし、捜査資料として持ってから、岸川の自宅へと向かった。自宅は、朝倉市の、烏集院という集落にある。山の中で、車がないと、交通が不便な場所だ。
 自宅の玄関口に表札が付けてあり、鍵が掛かっていた。ノックしても、反応がない。庭に回って、窓から中を覗き込んだ瞬間、東山は驚いた。岸川と思しき老人が、寝巻のまま、台所のテーブルに突っ伏して、倒れているじゃないか!
 すぐに鍵を不動産屋に頼んで開けてもらって、中に入ると、屋内は農薬の濃い臭気が鼻を突いた。岸川はテーブルに突っ伏して、青くなっている。死んでいるようだった。顔の近くにあるコップに、透明な色の液体が入っていて、それが、高濃度の農薬を希釈した水だと分かった。自殺を図ったのか?そう思って、検証していると、ちょうど、リビングの机の上に、手書きの遺書のようなものがあった。それには、「朝倉署の拳銃保管庫から、拳銃二丁を盗んで、警察に一億円要求したのは、私です。死んでお詫びいたします」と、パソコンで打たれた文書があった。偽装自殺の可能性がある。岸川はコマだったのか?東山には、そう思われた。やがて、表で、県警のパトカーのサイレンが鳴る音が聞こえてきた。すぐに、事件と知って、刑事たちが駆け付けてきたらしい。東山が、臨場した刑事に、
「岸川は死んでます」
 と告げると、パトカーに同乗していた朝倉署の小川が、
「東山さん、岸川の死は、不審ですよ。自分で農薬を飲んだんじゃなくて、誰かに飲まされたんじゃないですか?」
 と現場を一目見てから、言った。そして、検視官が来た後、本格的な捜査が始まった。いわゆる、口が封じられたのだ。ホンボシは、どこかにいる。岸川は、スケープゴート、事件において、単なるコマに過ぎなかったのだ。(以下次号)
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