『拳銃』

篠崎俊樹

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第8話。

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     8
「……犯行は警察関係者、もしくは、警察に在籍した経験のある人間か?」
 東山がそう呟くと、鍋島が、
「この指紋は特徴がある。渦が独特だ。しかも、銃から検出された指紋が、前科者のものなら、警察にいて、在籍時か、退職後に、犯罪、もしくはそれに相当する行為を犯して、前科者リストに氏名等の記載がなされた人間がホシだ」
 と言い切った。実際、その通りだ。しかも、拳銃保管庫のセキュリティーシステムを突破できるのは、警察に在籍していて、関連情報を持っている人間だけが、できることだ。これは、事件解決において、決め手になる。野田が、
「この指紋は……、科捜研に回して、鑑定だな?だが、俺は、この指紋の持ち主の人物に心当たりがある」
 と言った。
「心当たり……ですか」
 東山が仰天して、そう問うと、野田が、
「ああ。この指紋は、俺も見覚えがあるんだよな。確か……、そうだ、三年前の、朝倉市内のガソリンスタンド放火事件で、放火犯を逮捕寸前に取り逃がして、責任を取る形で、警察を追われた岸川陽一警部のものじゃないかな?」
 と言った。
「岸川元警部なら、今、朝倉市内の自宅に引退していて、もう再起不能なはずですが……」
 鍋島がそう言うと、東山が、
「だが、岸川がホシなら、警察に在籍していた以上、拳銃保管庫の仕組みは知っているはずだし、拳銃二丁を弾丸ごと盗み出して、首になった腹いせに、警察を強請って、現金を要求することぐらい、朝飯前のはずだ」
 と言い切った。デカの勘だ。警察において、退職刑事が、自分の元持っていた力を不正に使って、警察に腹いせをし、銃器を盗み出すことだって、考えられないことはない。実に、アンフェアだ。だが、となると、岸川に接近し、事情を聴くしかない。
 鍋島が、駐在たちを引き上げさせて、
「岸川元警部から、事情を聴こう。それしかない」
 と言って、乗ってきていた覆面パトカーに乗り込み、
「お先するよ。……東山、お前は、今口署長から、捜査許可取れ」
 と言って、アクセルを踏み込んで、ハンドルを切り、走らせる。農道の土埃が舞い上がって、鍋島の車両は走り去った。東山は、スマホで、今口に連絡した。至急、岸川元警部から事情を聴くために動きたい旨伝え、宮野の柿畑を出て、朝倉署へと舞い戻った。署は、旧甘木市にある。署には、過去二十年分以上の刑事事件の関連資料がコンピューターに格納され、いつでも、自由に閲覧できるようになっている。おそらく、岸川は拳銃二丁を不正に盗み出し、引き換えに、現金を脅し取るつもりだったのだろう。元警察官とはいえ、恥じ入る行為だ。(以下次号)
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