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第1話。
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俺は、妻の舞子のことが好きだ。実際、連れ添って十五年を超えるけど、愛し合えている。妻は、普段、外資系企業で、事務員をやっていて、俺は、地元の街で、作家をやっている。パソコンに向かって書くのだが、なかなか、売れるものを書けない。
舞子は、二〇二二年の八月も、通常通り出勤して、俺は、家で原稿を書いていた。確かに疲れる。俺の作品は、純粋な家族小説が多くて、時折、ミステリーやホラーなども手広く書き下ろしていた。多作で、業界では長い。また、俺のパソコンは、年季が入っていて、ずっと古いものを、十年以上使い続けている。作家は天職だ。一番やりたい仕事だった。
俺たち夫婦は、記憶の中で生き続けている。俺は、父の紘一とは、事実上、別れた。もう、用はないと思って、だ。父は認知症で、レビー小体型のようだった。実際、俺たちの邪魔ばかりしていて、寛解など、全くしていない。妻も、紘一のことは投げた。もう、いいと思ったらしい。舞子は賢い。役に立たない老人など、相手にはしない。
お盆の期間中、妻は仕事に回っていた。俺も、自宅で原稿を書きながら、過ごしていた。作家業は、トコトンやる。元々、自分に向いているからだ。老父は、部屋に引きこもって、テレビを見ている。馬鹿だ。どうしようもない。俺も投げていた。紘一が他人の邪魔ばかりして、一日の時間を適当に過ごすからだ。
「お父さんを、街の老健施設『希望の家』に預けようよ」
「老健施設?」
「うん。ちょうどいいじゃん。役立たないし、あたしたちの邪魔してばかりだし……」
妻は、実際、頭がいい。紘一の認知症を見抜いている。全て。
「あそこにぶち込めば、二度と、出てこれないわよ。それで、あの人終わり」
実際、罪になりかねない言動なのだが、舞子の物言いは、ストレートだ。父の悪父ぶりを見抜いている。それに、虚心坦懐だ。紘一は、この一年間ほど、ずっと部屋に引きこもり、出てこない。地元の人もみんな投げた。もう相手にはしない。『希望の家』は、希望と言っても、実際、絶望だ。何ら、希望などない。老人の姥捨て山である。俺も、あそこのことは知っている。
「アイツ、あそこにぶち込んでやったら、いいかもね?実際、再起不能になるし……」
正直、笑ってやった。紘一の馬鹿さぶりを、である。自分は、威張っていて、偉いとでも勘違いしている認知症老人。チャンチャラおかしい。(以下次号)
俺は、妻の舞子のことが好きだ。実際、連れ添って十五年を超えるけど、愛し合えている。妻は、普段、外資系企業で、事務員をやっていて、俺は、地元の街で、作家をやっている。パソコンに向かって書くのだが、なかなか、売れるものを書けない。
舞子は、二〇二二年の八月も、通常通り出勤して、俺は、家で原稿を書いていた。確かに疲れる。俺の作品は、純粋な家族小説が多くて、時折、ミステリーやホラーなども手広く書き下ろしていた。多作で、業界では長い。また、俺のパソコンは、年季が入っていて、ずっと古いものを、十年以上使い続けている。作家は天職だ。一番やりたい仕事だった。
俺たち夫婦は、記憶の中で生き続けている。俺は、父の紘一とは、事実上、別れた。もう、用はないと思って、だ。父は認知症で、レビー小体型のようだった。実際、俺たちの邪魔ばかりしていて、寛解など、全くしていない。妻も、紘一のことは投げた。もう、いいと思ったらしい。舞子は賢い。役に立たない老人など、相手にはしない。
お盆の期間中、妻は仕事に回っていた。俺も、自宅で原稿を書きながら、過ごしていた。作家業は、トコトンやる。元々、自分に向いているからだ。老父は、部屋に引きこもって、テレビを見ている。馬鹿だ。どうしようもない。俺も投げていた。紘一が他人の邪魔ばかりして、一日の時間を適当に過ごすからだ。
「お父さんを、街の老健施設『希望の家』に預けようよ」
「老健施設?」
「うん。ちょうどいいじゃん。役立たないし、あたしたちの邪魔してばかりだし……」
妻は、実際、頭がいい。紘一の認知症を見抜いている。全て。
「あそこにぶち込めば、二度と、出てこれないわよ。それで、あの人終わり」
実際、罪になりかねない言動なのだが、舞子の物言いは、ストレートだ。父の悪父ぶりを見抜いている。それに、虚心坦懐だ。紘一は、この一年間ほど、ずっと部屋に引きこもり、出てこない。地元の人もみんな投げた。もう相手にはしない。『希望の家』は、希望と言っても、実際、絶望だ。何ら、希望などない。老人の姥捨て山である。俺も、あそこのことは知っている。
「アイツ、あそこにぶち込んでやったら、いいかもね?実際、再起不能になるし……」
正直、笑ってやった。紘一の馬鹿さぶりを、である。自分は、威張っていて、偉いとでも勘違いしている認知症老人。チャンチャラおかしい。(以下次号)
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