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第4話。
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実際、俺の原稿は、怖いほど進んでいた。何と言うか、読み手が追っつかないぐらい進んでいて、出版社への入稿のほうが大変だった。添付ファイルで入稿する。パソコンは、同じものを使い続けていて、年季が入る分、手入れもする。
俺のパソコンはノート型で、ОSは最新のものだった。アップデートして、使う。邪魔されたくない。自室で、ちゃぶ台に置いて、使っていた。
紘一は、パソコンを持っていないし、持っていても、使えない。目も悪く、老眼で、はっきり言って、新聞もろくに読めない。それに、この一年間ぐらいで、悪父ぶりに、拍車がかかった。もう、俺も実際、相手したくないし、無駄だと思っている。『希望の家』を全てと考えているようで、街の人みんなで嫌う。俺は、あの馬鹿ジジイには、もう何も買ってやりたくなかった。
義務を果たさないで、ずっとテレビばかり見て、寛解もしてないような馬鹿老人に、言ってやることはない。時間の無駄だ。俺は、同じ磯崎家に同居していても、紘一にもう、何かを言うことはない。部屋で、好きな小説を書いて、出版社に入稿するのが忙しいから、はっきり言って、悪父のことを見ている暇がないのだ。
はっきりと言いたい。いつから、ああなったんだろうと、問いたい。多分、『希望の家』の職員の梅沢が来て、定期的に話すようになってから、紘一は梅沢の言うことだけを聞くようになり、俺や舞子の言うことを聞かなくなった。梅沢は、掃除係の男性だ。いつも、箒と塵取りと掃除機を持って、悪父の部屋を掃除しに来る。悪父は、某一流私大の英文科出身だけど、英語は、からきしだめで、はっきり言って、英会話などもできない。前述したとおり、投げた。舞子も投げた。もう、昼間の話し相手は、梅沢しかいない。はっきり言って、これが現実なんだろうと思う。その梅沢でさえ、最近、言うようになった。「紘一さんは、もう難しいね」と。実際、そうだ。俺も、原稿を書く時間以外に、街から出て、隣町の障碍者施設で働いているが、そこでの労働時間と、家での原稿執筆の時間、施設への送迎時間、睡眠時間を合わせると、もう手持ちの時間がない。その事実を、梅沢に告げると、梅沢が、
「賢さんは、若い。それに、作家さんなんだよね?じゃあ、たくさん書いて、本職になって。それがいい」
と言ってくれた。それを聞いて、ある意味、納得した。梅沢も、伊達に、『希望の家』から磯崎家に押しかけてきて、掃除だけしてるわけじゃないんだと。一方で、紘一に関しては、もう何の手立てもない、と思えた。現実問題、そうだ。そう思えたとき、妻が愛おしくなって、また、接近する感情が湧く。俺にとって、今の希望は、パソコンに詰まっている自作の小説と、隣町の障碍者施設での、磯崎家を食べさせるための労働、それに、舞子なのだ。(以下次号)
実際、俺の原稿は、怖いほど進んでいた。何と言うか、読み手が追っつかないぐらい進んでいて、出版社への入稿のほうが大変だった。添付ファイルで入稿する。パソコンは、同じものを使い続けていて、年季が入る分、手入れもする。
俺のパソコンはノート型で、ОSは最新のものだった。アップデートして、使う。邪魔されたくない。自室で、ちゃぶ台に置いて、使っていた。
紘一は、パソコンを持っていないし、持っていても、使えない。目も悪く、老眼で、はっきり言って、新聞もろくに読めない。それに、この一年間ぐらいで、悪父ぶりに、拍車がかかった。もう、俺も実際、相手したくないし、無駄だと思っている。『希望の家』を全てと考えているようで、街の人みんなで嫌う。俺は、あの馬鹿ジジイには、もう何も買ってやりたくなかった。
義務を果たさないで、ずっとテレビばかり見て、寛解もしてないような馬鹿老人に、言ってやることはない。時間の無駄だ。俺は、同じ磯崎家に同居していても、紘一にもう、何かを言うことはない。部屋で、好きな小説を書いて、出版社に入稿するのが忙しいから、はっきり言って、悪父のことを見ている暇がないのだ。
はっきりと言いたい。いつから、ああなったんだろうと、問いたい。多分、『希望の家』の職員の梅沢が来て、定期的に話すようになってから、紘一は梅沢の言うことだけを聞くようになり、俺や舞子の言うことを聞かなくなった。梅沢は、掃除係の男性だ。いつも、箒と塵取りと掃除機を持って、悪父の部屋を掃除しに来る。悪父は、某一流私大の英文科出身だけど、英語は、からきしだめで、はっきり言って、英会話などもできない。前述したとおり、投げた。舞子も投げた。もう、昼間の話し相手は、梅沢しかいない。はっきり言って、これが現実なんだろうと思う。その梅沢でさえ、最近、言うようになった。「紘一さんは、もう難しいね」と。実際、そうだ。俺も、原稿を書く時間以外に、街から出て、隣町の障碍者施設で働いているが、そこでの労働時間と、家での原稿執筆の時間、施設への送迎時間、睡眠時間を合わせると、もう手持ちの時間がない。その事実を、梅沢に告げると、梅沢が、
「賢さんは、若い。それに、作家さんなんだよね?じゃあ、たくさん書いて、本職になって。それがいい」
と言ってくれた。それを聞いて、ある意味、納得した。梅沢も、伊達に、『希望の家』から磯崎家に押しかけてきて、掃除だけしてるわけじゃないんだと。一方で、紘一に関しては、もう何の手立てもない、と思えた。現実問題、そうだ。そう思えたとき、妻が愛おしくなって、また、接近する感情が湧く。俺にとって、今の希望は、パソコンに詰まっている自作の小説と、隣町の障碍者施設での、磯崎家を食べさせるための労働、それに、舞子なのだ。(以下次号)
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