16 / 64
第16話。
しおりを挟む
16
ジミーが内回りの山手線に乗り、約束場所である新宿駅前の大型カメラ店前で、亜季を待つ。都会地とあって、人は山ほどいる。いろんな人間の目が行き交う。待つときは、時間潰しもできる。元々、統合失調症の彼は、思索が好きだ。何かを思うことが多い。本来的に、内向性が高いのだ。だから、作家になりたい。元々、文筆が好きなのだった。
彼女は、約束の午前十一時きっかりに来た。長い髪は、綺麗にまとめられている。濃い香りが漂ってきた。
「待った?」
「今、来たところ。……じゃあ、行こうか?」
そろって歩き出す。実際、アスファルトは、焼けるように熱い。また、熱が反射すると、辺りの気温は、一気に上がる。
新宿から、山手線に乗った。代々木、原宿などの駅を経て、東京駅に着く。東京駅から舞浜まで、JRが直通で一本出ている。
優に一時間くらい、電車に乗りっぱなしだ。トイレが我慢できない。長時間だから、クタクタに疲れる。
京葉線の車内は、スマホをいじる人たちが多い。皆、手元を見ている。ジミーたちは、並んで座っていた。特に不審な点はない。
そんな二人を、さっきから一緒に電車に乗り込んでいた、一人の私服警官がじっと見つめている。見られている方は、全く意識していない。気付かないのだろう。全く、この危ない追っ手に気付いてない。また、分からないのだろうと思う。
ジミーと亜季の香りが、密に混じり合う。二人の様子を見つめている私服警官は女性だ。
片桐華が、携帯していた無線機に向かって言う。手元に付けていて、すぐに声を放つ。
「マル被は舞浜行きの京葉線車内にいます。特に不審な点はありません」
――了解。
どうやら、応答しているのは、八田らしい。すぐに、声を返す。
――よし。監視続けろ!
「了解」
三十を過ぎてはいるものの、華は刑事課の刑事にしては珍しく女性で、若かった。窮屈なスーツに身を包み、似合わない格好をして、尾行している。気付かれてないから、いいのだ。勘付かれれば、一発で終わりだ。そう確信していた。
ジミーが内回りの山手線に乗り、約束場所である新宿駅前の大型カメラ店前で、亜季を待つ。都会地とあって、人は山ほどいる。いろんな人間の目が行き交う。待つときは、時間潰しもできる。元々、統合失調症の彼は、思索が好きだ。何かを思うことが多い。本来的に、内向性が高いのだ。だから、作家になりたい。元々、文筆が好きなのだった。
彼女は、約束の午前十一時きっかりに来た。長い髪は、綺麗にまとめられている。濃い香りが漂ってきた。
「待った?」
「今、来たところ。……じゃあ、行こうか?」
そろって歩き出す。実際、アスファルトは、焼けるように熱い。また、熱が反射すると、辺りの気温は、一気に上がる。
新宿から、山手線に乗った。代々木、原宿などの駅を経て、東京駅に着く。東京駅から舞浜まで、JRが直通で一本出ている。
優に一時間くらい、電車に乗りっぱなしだ。トイレが我慢できない。長時間だから、クタクタに疲れる。
京葉線の車内は、スマホをいじる人たちが多い。皆、手元を見ている。ジミーたちは、並んで座っていた。特に不審な点はない。
そんな二人を、さっきから一緒に電車に乗り込んでいた、一人の私服警官がじっと見つめている。見られている方は、全く意識していない。気付かないのだろう。全く、この危ない追っ手に気付いてない。また、分からないのだろうと思う。
ジミーと亜季の香りが、密に混じり合う。二人の様子を見つめている私服警官は女性だ。
片桐華が、携帯していた無線機に向かって言う。手元に付けていて、すぐに声を放つ。
「マル被は舞浜行きの京葉線車内にいます。特に不審な点はありません」
――了解。
どうやら、応答しているのは、八田らしい。すぐに、声を返す。
――よし。監視続けろ!
「了解」
三十を過ぎてはいるものの、華は刑事課の刑事にしては珍しく女性で、若かった。窮屈なスーツに身を包み、似合わない格好をして、尾行している。気付かれてないから、いいのだ。勘付かれれば、一発で終わりだ。そう確信していた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる