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第31話。
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その日の午後三時過ぎ、セントアルバ空港国際線ターミナルに、一台の飛行機が降り立った。多数の乗客に呑まれながら、片桐華が出口へと向かう。
さっきから機内で、日焼け止めクリームを全身に塗るのに四苦八苦していた彼女は、空港の両替機で、大量の日本円を現地ドルに替えた。手持ちの現金を、ほとんどドルへと交換した彼女の目には、財布から溢れ出らんばかりのドル紙幣が映る。
一派遣警察官、しかもヒラの身分である自分に、迎えなど来るはずがない。タクシーを拾った彼女は、乗り込むと、すぐにスマホを取り出し、但馬のそれに繋いだ。
「もしもし、片桐ですが」
――おう。着いたか?
「ええ、今、着きました。これから捜査本部に向かうところです」
――捜査は一刻を争う生ものだ。急いできてくれ。
「分かってますよ。じゃあ、とりあえず報告ということで。いったん切りますね」
――ああ。じゃあな。
「失礼します」
華はスマホを仕舞い、化粧ポーチから化粧道具を取り出して、手鏡も出し、化粧直しをし始めた。タクシーの中で、平気な顔をして、鏡を覗き込む華に、運転手が顔を顰める。
基本的に華は、性格が歪だ。その性癖が、今までの人生で裏目に出たことも少なくない。元々、災いしてばかりなのだ。
今でも、車中の雰囲気は、だいぶ険悪になりつつある。
運転手は、何も言わなかった。いや、言う筈もないだろう。非は明らかに、彼女の方にあるのだから……。
何も言わずに、ハンドルを握り続ける運転手を尻目に、彼女は化粧する手を止めなかった。
その日の午後三時過ぎ、セントアルバ空港国際線ターミナルに、一台の飛行機が降り立った。多数の乗客に呑まれながら、片桐華が出口へと向かう。
さっきから機内で、日焼け止めクリームを全身に塗るのに四苦八苦していた彼女は、空港の両替機で、大量の日本円を現地ドルに替えた。手持ちの現金を、ほとんどドルへと交換した彼女の目には、財布から溢れ出らんばかりのドル紙幣が映る。
一派遣警察官、しかもヒラの身分である自分に、迎えなど来るはずがない。タクシーを拾った彼女は、乗り込むと、すぐにスマホを取り出し、但馬のそれに繋いだ。
「もしもし、片桐ですが」
――おう。着いたか?
「ええ、今、着きました。これから捜査本部に向かうところです」
――捜査は一刻を争う生ものだ。急いできてくれ。
「分かってますよ。じゃあ、とりあえず報告ということで。いったん切りますね」
――ああ。じゃあな。
「失礼します」
華はスマホを仕舞い、化粧ポーチから化粧道具を取り出して、手鏡も出し、化粧直しをし始めた。タクシーの中で、平気な顔をして、鏡を覗き込む華に、運転手が顔を顰める。
基本的に華は、性格が歪だ。その性癖が、今までの人生で裏目に出たことも少なくない。元々、災いしてばかりなのだ。
今でも、車中の雰囲気は、だいぶ険悪になりつつある。
運転手は、何も言わなかった。いや、言う筈もないだろう。非は明らかに、彼女の方にあるのだから……。
何も言わずに、ハンドルを握り続ける運転手を尻目に、彼女は化粧する手を止めなかった。
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