アルヴニカ戦記 ~斜陽国家のリブート型貴種流離譚~

あ、まん。

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戦火再演

第43話

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砂浜に残っていた連中を片付けた。
15人倒すのに1分もいらなかった。
3人ほど逃げられたので、一刻も早く追いかけたい。
だが、トネルダ中隊長の怪我が思ったよりひどい。
応急処置をしている間にセレを乗せた小舟が戻ってきた。

「サオン殿」
「はい?」
「すまなかった」

キサ王国の戦士を疑い、かつ過小評価してしまったことを謝罪してきた。
自分にあやまられても困る。
あやまるなら、亡くなった彼の部下に頭を下げるべきだ。
3回目の小舟でメイメイ、リャム、ポメラが揃った。

「はやく行くアル」
「え、でも……」

兵達の数はまだ少ない。
この先にどれだけ敵がいるかわからないのに……。

「海賊じゃなかったアル」

メイメイが、背中の巨大な背嚢から武器らしきものを取り出す。
取っ手が何個もあり、細長い箱のような不思議な形をしている。
海賊じゃなければ連中は何者なのか?
メイメイに聞こうとしたら、リャムが答えた。

「おそらくキューロビア連邦の工作員です」

キューロビア連邦と言えば、人質を取って外交交渉に使うような卑劣な国。
だから、こんなホン皇国の南端まで侵入してきた?
目的は金持ちや貴族を攫って身代金を要求するつもりかもしれない……。

「海賊じゃないなら十中八九無事ネ! ただし……」

どちらにせよ人質は生かしておく必要がある。
だから今は無事のはず、とメイメイは答えるが、その表情はいつになく硬い。
時間が経てば経つほど、魔導船「緋雷零式」で逃げられる可能性が高い。
セレを残して、人質を奪還するべくメイメイ達と4人で先を急ぐ。

森の中へ入ると、まっすぐにある方向を目指す。
機転を利かせたポメラが、例の単眼蝙蝠アーリマンを作って島へ飛ばしていた。
お陰で道にも迷わず行き先も明確なので非常に助かる。
逃げたキューロビア兵は岩山の陰にある入口から洞窟の中に入ったそうだ。
迷わず、一気に洞窟の中へ侵入する。

「根源よ、荒ぶる雹雨の……」

ポメラが詠唱を始めた。
外周をぐるりと連絡通路が囲む2階部分に出た。
1階には、20名ほどの兵が待ち構えている。
2階の反対側では弓矢でポメラを狙っている連邦兵が見えた。

「アイツは任せるアル」

メイメイの言葉を信じて2階の弓兵は任せて、1階へ飛び降りる。
降りた自分へ兵が殺到するが、砂浜の時と同様、何の脅威にもなり得ない。

「ぐぁぁああ!」

2階の弓兵が1階に落ちてきた。
身体が痙攣している。
メイメイがどんな兵器を使ったのか気になる。

「颶風となりて、其を律せよ──」

ポメラの魔法の完成を見計らって、すばやく1階の広場から離脱しようとした。
だが、まだ息のある連邦兵に足を掴まれていることに気が付く。

──笑っている。
初陣の時に出会ったあの笑っている男の顔を思い出し背筋が冷たくなった。
広場が真っ白になり、微かに悲鳴が聞こえてくる。

危なかった……。
左肩の赤い手がギリギリで部屋の隅っこに身体を引っ張ってくれた……。
これで片付いたはず。
階段を探して2階へ戻ろうとすると、ポメラの悲鳴が聞こえた。

「その手を離すアル!」
「動くな!? この女がどうなってもいいのか?」

階段を上がるとポメラが人質にされていた。
おそらく魔法を行使するため、メイメイとリャムから離れた隙を狙われたのかも。

他には誰もおらず、連邦兵はひとりきり。
だが、ちょっと間抜け過ぎると思う。
メイメイ達の方を見ているが、背後に立っている自分に気が付いていない。
後ろから持っていた短剣を奪い、直剣グラディウスの柄で殴って気絶させた。

顔を見ると、例のポペイでトネルダが怪しいと証言した男。
ということは、やはり、ここに攫われた人達が囚われているはず。
リャムが男の手足に短い縄を当てると、勝手にきつく縛り上げていく。
これも魔導具のひとつなんだろうか?

「……サオン」
「うん?」

拘束具を見つつも周囲を警戒していると、ポメラが自分の名を呼んだ。
顔が赤くなっている……首を絞められて苦しかったのかも。

「ありがとう」
「いや、お互い様だから」

お礼を言われることなんてしていない。

「一個借りてあげる」
「え? うん、わかった」

ちょっと何を言っているかが、よくわからなかった。
貸しを作った形なんだろうが、彼女の気が済むのなら好きにしたらいい。

階段を下りて大広間を抜けると、通路があり、横に牢屋がある。
牢屋の中はからで扉が乱暴に開け放たれたままなので、急いでいたとみられる。
その通路を急いで前に進む。
角を曲がったところで、目隠しされて鎖に繋がれた人たちを発見した。

「くそっ、お前たち、れッ!?」

鎖を握って先頭にいる隊長格らしき男が命令する。
だが、向かってきた兵士を10秒も経たないうちに倒した。
呻き声とともに隊長格の男が鎖を離す。
黒腕ジルから回収した籠手がうまく使えた。
右肩を貫通したようで、流れ出す血を左手で押さえている。

「リャム」
「わかりました」

隊長格の男を自分が殴って気絶させると、メイメイがリャムにここを任せた。
今は一刻もはやく魔導船、緋雷零式の下へ辿りつかなければならない。
もし、船を持ち去られたらホン皇国として相当な痛手だろう。

ぐるりと周遊できる場所に出た。
自分達を見て、連邦兵が魔導船に繋げていた縄梯子を切り落とした。

でも大丈夫。
船が動き出す前にポメラの魔法が完成した。
氷の階段。
氷でできているが、不思議と滑らない。

氷の階段を使って魔導船に乗り込む。
自分とメイで船に残っていた残りの工作員を倒していく。
向かってくるものを容赦なく斬り捨てる自分に対して、メイメイは違う。

四角い箱から色付きの液体を飛ばしている。
それに触れると麻痺や昏睡状態になるらしい。

船を制圧した自分達は魔導船に救助した13人や捕えた連邦兵を乗せた。
島を裏側から出て、表に回り、亡くなった兵士を回収した。
勝てるには勝てたが、本当は犠牲を出さずに済んだ戦いだった……。
皆、浮かれることなく暗い雰囲気のまま、ポペイの街へと戻る。


帰りの船の中。

「サオンくぅーん!」

やけに甘い声で自分の名を呼ぶメイメイ。
なんか一人だけやけに機嫌が良い……。

「その剣と左肩の赤い腕は何アルかな~?」

マズい、バレた……。

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