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鬼を斬った失格者
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アーシュは、全力で森の中を疾駆していた。
木々の中を掻き分け、掻き分け、全速力で森の出口へと向かっていた。
自分の黒髪が、木の葉を絡め取っていく鬱陶しさに舌打ちしつつ、駆け抜けていく。
「あー、くっそ……何が初心者にオススメだ!完全に初見殺しじゃねーか!」
悪態をつきながらも、足はたしかに、出口の方に向かっていく。流石に小二時間ぐらいの距離なら、完璧に覚えている。
数分前はのんびり通ってた道も、今では、後ろから追ってくる化け物との、レース場だ。
こんな芸当ができるあたり、流石、腐っても能力持ち……というべきか、否か。
この世界では、特殊な能力を持つ者たちがいる。
【能力者《ユーザー》】
生まれながらにして、特殊な力を持つ【能力者《ユーザー》】は、生まれながらにして、その地位は確立されていたのである。
だが、【能力者《ユーザー》】たちの中にも冷遇される者たちはいる。
【失格者《ルーザー》】と揶揄される者たちだ。
全ての能力の基準となる判別書……能力をランク分けした書の中で、最低ランクであるFランク基準の能力を持つ者。
能力を持って生まれたのに、そこらの村人と変わらない……それが【失格者《ルーザー》】だ。
アーシュはこの【失格者《ルーザー》】に含まれる。
何の力があるのか……終ぞわからなかったからだ。
天性の剣技があるわけでもなく、強い武器を召喚できるわけでもなく……
本当に普通の……そこらの村人市民と変わらない一般人と一緒の力しかなかった。
故に、Fランクよりも、冷遇を受けている彼に殆ど、討伐依頼が回ってくることはなかったのである。
だが、今回、偶然に偶然が重なり、今までのコツコツと雑用仕事をこなした努力が叶ったような思いがしたアーシュは即答で引き受け、今に至る。
そう。偶然にも、この森の中でもトップクラスのモンスター群の、生息地《テリトリー》に侵入するなんて……さらにそこで、モンスターに見つかり、追いかけられるハメになるなんて……きっと、依頼者も、職員も考えてもいなかったのだろう。
かくいうアーシュ本人ですら考えていなかったのだから仕方ない事故とは言える。
「はぁはぁ……そろそろ出口だな……」
もうあと少しで、森の出口といったところ。ふと気を緩め、周りを見渡す。
違和感を感じた。
逡巡……そして、気付いた。
研ぎ澄まされた五感が、巨大な存在感、殺気を感知する。
(マズイ、マズイ、マズイ!)
慌てながら、剣を構えた。剣を片手で持ち、半身で構える。いつでも、振れるようにリラックスした状態で……
(来る……!)
アーシュがそう感じた瞬間、巨大な衝撃が襲う。
荒れ狂う生存本能に、言い聞かせるように!宥めるようにして、自身の気持ちを落ち着かせる。
「マジかよ……化け物め……」
小さな嘆息と共に、剣を強く握る。
それはこの森の中で最悪の遭遇《エンカウント》だった。
アーシュはその異形に斬りかかった。何千回と繰り返した袈裟斬り。だが、表皮に阻まれる。恐ろしく硬い身体。
「ッ!」
鋼のような巨躯は、その身には似合わぬ高速で、拳を振るった。アーシュは間一髪のところで避ける。
(流石はモンスター様……俺が何千回と振っても届かない……クソッタレが!)
『鬼』……それがシンプルかつ、ベストな呼び名だろう。その中でも、目の前のような白い身体を持つ異形は、別格な強さを持つという。
あくまで口伝えの噂でしかない。が、こいつの力は別格だ。
アーシュは考えるのをやめようとする。
こんなこと考えても無駄だから。
「あークッソ、俺もこんな力があれば……!」
距離をとって、嫌味を吐く。
恐らく、ここで死ぬのだろう、とアーシュは悟る。どうやっても自分の剣が、力が、あの鬼に届く未来が見えない。
何千回と繰り返した斬撃も、何万回と繰り返した鍛錬も……
所詮、最初から持ってる奴には敵わない。
だが……
――足掻くならとことん足掻いてやる。
「ガァァアアアッッッッ!」
言葉にできない奇怪な叫び声とともに、鬼は突進してきた……
「来いよ、化け物!」
震えながらもアーシュも思わず叫び、再び剣と拳が交差する。
考える前に避けろ!
避ける前に斬れ!
無我の境地で、身体が経験にのみによって動き出す。
アーシュはひたすらに、斬りつける……化け物の持つ、天然の鎧など、ぶち壊して仕舞えばいいと言わんばかりの狂った連撃。
鬼の攻撃をひたすらに、躱し続ける……化け物の持つ、驚異のスピードなんて、遅く感じると言わんばかりの回避。
今までの経験が……全ての出来事が、血肉なって生きている。身体の中で力に変わっていく。
【失格者《ルーザー》】と揶揄されるキッカケの正体不明の能力。
『いつか努力は報われる』
それが彼の力だった。
キンッ!
甲高い金属音が鳴り響く。剣と剣が交錯したような音……だったが、実際に交錯したのは、アーシュの振るった斬撃と、鬼の拳。
カンッ! カンッ! カンッ!
更に交差する互いの攻撃。
「それがお前の本気か!」
若干の歓喜にも似た声でアーシュは叫ぶ。
もはや、親しい友人以上の存在に見える眼の前の好敵手も二ヤリと嗤った気がした。
本当に金属……否、それ以上の硬さではないだろうか、とアーシュは感じた。だが、もはやそんなこと関係ない。
今のアーシュの剣は……もう誰にも負けない。
己の努力。己の能力。
それらは華開き、大輪を咲かせる。
即ち、己の限界すらも飛び越えて――
――終ぞ届くのか……
――何千、何万、何億と振るった斬撃は……!
――今……
――流麗な曲線を描き出し……
――そして……
――――――白い巨躯を斬った。
「え?もう一度おねがいできますか?」
依頼担当の職員はそう聞き返した。
それもそのはずである。
Fランクの雑務をこなしていた、【失格者《ルーザー》】が、いきなり、Sランク相当のモンスターの討伐報告を持ち込んだのである。
「『鬼』……しかも、白を討伐しました。たしか、白は、普通のものとは違い、常時討伐依頼にありましたよね?」
職員は返答に詰まる。
「ありますが……あれはなにせ」
アーシュは口を噤む。
この職員はまだいい。まだ直接的には言わないのだから。
本来、モンスターの討伐は、【能力者《ユーザー》】が行う物だ。常時討伐依頼も、一部のモンスターを除き、ほぼ全てが実質的な【能力者《ユーザー》】限定の依頼だ。
正直なところ、この制度に意味があるかと言われれば、首をひねる者が多いだろう。そもそもに能力すら持たず、武芸を極め、モンスターを討伐できる力を持つものもいるのだから。
「……では、素材売却と、依頼達成報酬を」
悔しいという気持ちを抑えきり、アーシュは自身の腰巾着から、本来の討伐対象である、魔狼の白い牙と、『鬼』の角を取りだした。
「確かに……では、依頼報酬の――」
職員がそう言った瞬間、入口からいかつい男が現れた。
「……おい、受付嬢。緊急事態だ。森に『鬼』の特殊個体の死体があった」
「……え?」
受付嬢はアーシュを驚愕に満ちた目で見た。
「あぁ……身体が真っ二つに斬られていた。恐らく相当な高位の【能力者《ユーザー》】の可能性が高い。そう言った討伐報告はないか?」
職員は言っていいのかわからない。といった様相を醸し出した。
「どうした? もうすでに報告があったのか?」
「は、はい」
「して、そいつは誰だ?」
男は、辺りを見渡した。
「そこの……彼です」
「……ん? 君が『鬼』を倒した者か?」
アーシュは首を縦に振る。
「よければ能力を教えてくれないかい? 天性の剣術のようなものかい?」
「その前に、あなたは誰ですか? いきなり能力を聞くのは少々、マナーというか礼儀に欠けるように感じるのですが?」
アーシュは男に対してそう言った。
「あぁ、そうだね。初対面だった。こちらの不手際を許してくれると嬉しい。私は、この施設長だ」
若干、動揺しそうになったのが、アーシュは耐えた。
男は口を開く。
「さて、一体どんな能力なんだい?」
アーシュは、言った。
「わかりません」
「ん? どういうことだい?」
「――俺は【失格者】なので」
これは後に、有名な御伽話になる序章も序章。
「鬼を斬った失格者」
木々の中を掻き分け、掻き分け、全速力で森の出口へと向かっていた。
自分の黒髪が、木の葉を絡め取っていく鬱陶しさに舌打ちしつつ、駆け抜けていく。
「あー、くっそ……何が初心者にオススメだ!完全に初見殺しじゃねーか!」
悪態をつきながらも、足はたしかに、出口の方に向かっていく。流石に小二時間ぐらいの距離なら、完璧に覚えている。
数分前はのんびり通ってた道も、今では、後ろから追ってくる化け物との、レース場だ。
こんな芸当ができるあたり、流石、腐っても能力持ち……というべきか、否か。
この世界では、特殊な能力を持つ者たちがいる。
【能力者《ユーザー》】
生まれながらにして、特殊な力を持つ【能力者《ユーザー》】は、生まれながらにして、その地位は確立されていたのである。
だが、【能力者《ユーザー》】たちの中にも冷遇される者たちはいる。
【失格者《ルーザー》】と揶揄される者たちだ。
全ての能力の基準となる判別書……能力をランク分けした書の中で、最低ランクであるFランク基準の能力を持つ者。
能力を持って生まれたのに、そこらの村人と変わらない……それが【失格者《ルーザー》】だ。
アーシュはこの【失格者《ルーザー》】に含まれる。
何の力があるのか……終ぞわからなかったからだ。
天性の剣技があるわけでもなく、強い武器を召喚できるわけでもなく……
本当に普通の……そこらの村人市民と変わらない一般人と一緒の力しかなかった。
故に、Fランクよりも、冷遇を受けている彼に殆ど、討伐依頼が回ってくることはなかったのである。
だが、今回、偶然に偶然が重なり、今までのコツコツと雑用仕事をこなした努力が叶ったような思いがしたアーシュは即答で引き受け、今に至る。
そう。偶然にも、この森の中でもトップクラスのモンスター群の、生息地《テリトリー》に侵入するなんて……さらにそこで、モンスターに見つかり、追いかけられるハメになるなんて……きっと、依頼者も、職員も考えてもいなかったのだろう。
かくいうアーシュ本人ですら考えていなかったのだから仕方ない事故とは言える。
「はぁはぁ……そろそろ出口だな……」
もうあと少しで、森の出口といったところ。ふと気を緩め、周りを見渡す。
違和感を感じた。
逡巡……そして、気付いた。
研ぎ澄まされた五感が、巨大な存在感、殺気を感知する。
(マズイ、マズイ、マズイ!)
慌てながら、剣を構えた。剣を片手で持ち、半身で構える。いつでも、振れるようにリラックスした状態で……
(来る……!)
アーシュがそう感じた瞬間、巨大な衝撃が襲う。
荒れ狂う生存本能に、言い聞かせるように!宥めるようにして、自身の気持ちを落ち着かせる。
「マジかよ……化け物め……」
小さな嘆息と共に、剣を強く握る。
それはこの森の中で最悪の遭遇《エンカウント》だった。
アーシュはその異形に斬りかかった。何千回と繰り返した袈裟斬り。だが、表皮に阻まれる。恐ろしく硬い身体。
「ッ!」
鋼のような巨躯は、その身には似合わぬ高速で、拳を振るった。アーシュは間一髪のところで避ける。
(流石はモンスター様……俺が何千回と振っても届かない……クソッタレが!)
『鬼』……それがシンプルかつ、ベストな呼び名だろう。その中でも、目の前のような白い身体を持つ異形は、別格な強さを持つという。
あくまで口伝えの噂でしかない。が、こいつの力は別格だ。
アーシュは考えるのをやめようとする。
こんなこと考えても無駄だから。
「あークッソ、俺もこんな力があれば……!」
距離をとって、嫌味を吐く。
恐らく、ここで死ぬのだろう、とアーシュは悟る。どうやっても自分の剣が、力が、あの鬼に届く未来が見えない。
何千回と繰り返した斬撃も、何万回と繰り返した鍛錬も……
所詮、最初から持ってる奴には敵わない。
だが……
――足掻くならとことん足掻いてやる。
「ガァァアアアッッッッ!」
言葉にできない奇怪な叫び声とともに、鬼は突進してきた……
「来いよ、化け物!」
震えながらもアーシュも思わず叫び、再び剣と拳が交差する。
考える前に避けろ!
避ける前に斬れ!
無我の境地で、身体が経験にのみによって動き出す。
アーシュはひたすらに、斬りつける……化け物の持つ、天然の鎧など、ぶち壊して仕舞えばいいと言わんばかりの狂った連撃。
鬼の攻撃をひたすらに、躱し続ける……化け物の持つ、驚異のスピードなんて、遅く感じると言わんばかりの回避。
今までの経験が……全ての出来事が、血肉なって生きている。身体の中で力に変わっていく。
【失格者《ルーザー》】と揶揄されるキッカケの正体不明の能力。
『いつか努力は報われる』
それが彼の力だった。
キンッ!
甲高い金属音が鳴り響く。剣と剣が交錯したような音……だったが、実際に交錯したのは、アーシュの振るった斬撃と、鬼の拳。
カンッ! カンッ! カンッ!
更に交差する互いの攻撃。
「それがお前の本気か!」
若干の歓喜にも似た声でアーシュは叫ぶ。
もはや、親しい友人以上の存在に見える眼の前の好敵手も二ヤリと嗤った気がした。
本当に金属……否、それ以上の硬さではないだろうか、とアーシュは感じた。だが、もはやそんなこと関係ない。
今のアーシュの剣は……もう誰にも負けない。
己の努力。己の能力。
それらは華開き、大輪を咲かせる。
即ち、己の限界すらも飛び越えて――
――終ぞ届くのか……
――何千、何万、何億と振るった斬撃は……!
――今……
――流麗な曲線を描き出し……
――そして……
――――――白い巨躯を斬った。
「え?もう一度おねがいできますか?」
依頼担当の職員はそう聞き返した。
それもそのはずである。
Fランクの雑務をこなしていた、【失格者《ルーザー》】が、いきなり、Sランク相当のモンスターの討伐報告を持ち込んだのである。
「『鬼』……しかも、白を討伐しました。たしか、白は、普通のものとは違い、常時討伐依頼にありましたよね?」
職員は返答に詰まる。
「ありますが……あれはなにせ」
アーシュは口を噤む。
この職員はまだいい。まだ直接的には言わないのだから。
本来、モンスターの討伐は、【能力者《ユーザー》】が行う物だ。常時討伐依頼も、一部のモンスターを除き、ほぼ全てが実質的な【能力者《ユーザー》】限定の依頼だ。
正直なところ、この制度に意味があるかと言われれば、首をひねる者が多いだろう。そもそもに能力すら持たず、武芸を極め、モンスターを討伐できる力を持つものもいるのだから。
「……では、素材売却と、依頼達成報酬を」
悔しいという気持ちを抑えきり、アーシュは自身の腰巾着から、本来の討伐対象である、魔狼の白い牙と、『鬼』の角を取りだした。
「確かに……では、依頼報酬の――」
職員がそう言った瞬間、入口からいかつい男が現れた。
「……おい、受付嬢。緊急事態だ。森に『鬼』の特殊個体の死体があった」
「……え?」
受付嬢はアーシュを驚愕に満ちた目で見た。
「あぁ……身体が真っ二つに斬られていた。恐らく相当な高位の【能力者《ユーザー》】の可能性が高い。そう言った討伐報告はないか?」
職員は言っていいのかわからない。といった様相を醸し出した。
「どうした? もうすでに報告があったのか?」
「は、はい」
「して、そいつは誰だ?」
男は、辺りを見渡した。
「そこの……彼です」
「……ん? 君が『鬼』を倒した者か?」
アーシュは首を縦に振る。
「よければ能力を教えてくれないかい? 天性の剣術のようなものかい?」
「その前に、あなたは誰ですか? いきなり能力を聞くのは少々、マナーというか礼儀に欠けるように感じるのですが?」
アーシュは男に対してそう言った。
「あぁ、そうだね。初対面だった。こちらの不手際を許してくれると嬉しい。私は、この施設長だ」
若干、動揺しそうになったのが、アーシュは耐えた。
男は口を開く。
「さて、一体どんな能力なんだい?」
アーシュは、言った。
「わかりません」
「ん? どういうことだい?」
「――俺は【失格者】なので」
これは後に、有名な御伽話になる序章も序章。
「鬼を斬った失格者」
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