王政復古の権能使い

星天

文字の大きさ
4 / 6
第一章 荒野

第一話 巨岩

しおりを挟む
 赤茶色の荒野は人というか生命が住むのには向いてないのだろうか。民家どこら、人工物すら見えない。少なくとも聖也には見えなかった。見逃してる可能性もあるかもしれないと一考したが、そんなことはないだろうと振り払う。

 聖也はクラクラする身体を何とか持ちこたえ、自分の奮い立たせる。彼の体力は限界に近かったが、何とか一歩ずつ足を進める。

 足を進めた先にあるのはひたすら続く荒野だった。出口のない迷路を彷徨っているような感じがしてきた聖也。ここまで気力で持ってきたが、ついにばったりと倒れた。

 赤い土が軽く舞い上がる。

 (ここで死ぬのか)

 無情に降り注ぐ日光は柔らかなものではなく、悪魔の攻撃のように感じれた。

 「死にたくない……」

 だが、身体を起こす気力はなく、建材が身体に突き刺さったときのように全く動けなかった。

 「なんでこんなところで死んでいる人がいるの!?」

 可愛らしい声が聞こえた。

 顔だけを微かに動かし、上を見上げる。


 ――淡い水色の布地が見えた。


 もうちょっと上を見ると、覗き込むように見ている美少女がいた。淡い水色の髪に、青い目。そして、白色のワンピースのような感じの服。

 さっきのパンツだったのか……。聖也は若干、不埒なことを考えたが、頭の中から追い出す。今はそれどころじゃない。

 「た……すけて」

 聖也は少女に慈悲を乞うた。ただ、数時間炎天下を歩いていたのと、水分を全く取っていなかったことから、喉はカラカラだった。なので、口から出た言葉は掠れていた。

 「えっ、喋れるの!?」

 まるで幽霊を見たように驚いた少女。だが、すぐに背負ったバックパックから筒のようなものを取り出し、聖也に差し出す。

 「はい。これ、水……温いかもしれないけど」

 そう言って、筒のようなものに入れられた水を飲ませてくれた少女を見上げて、聖也は立ちあがった。

 喉が潤ったことにより、ある程度、話せるようになった聖也はお礼を言った。

 「ありがとう。倒れて死ぬとこだった」
 「いいわ。別に。水だって、無限にとれるし……」

 少女はそう言った。

 「私はナミ。あなたは?」
 「俺は聖也。駒原聖也」
 「ふーん。まぁ、何も持ってないようだし、家に来る?」

 思いがけない提案に聖也は驚く。迷惑にならないかと考えたが、このままでは死ぬだろうと思い、好意に甘えることにした。

 「お願いできる?」
 「勿論。情けは人のためならずよ」

 優しそうな彼女はそう言って、微笑んだ。

 一瞬、ドキッとしてしまった聖也は、弥生のことを思い浮かべて、ぶんぶんと頭を振る。

 ナミの後ろに彼はついていくことになった。

 そこで食事と寝る場所を借りて、少し休憩しよう。聖也はそう考え、後ろをついていった。







 赤い荒野を彷徨うように歩いた聖也たちの前に現れたのは巨大な一枚岩だった。とても巨大だ。オーストラリアのエアーズロックを想起させるような岩は彼の前に突如として現れた。

 (こんなに大きい岩があそこから見えないなんて、馬鹿なことがあるのか?)

 聖也は考えるが、答えが出ない。考えている間にもナミは結構なペースで歩いていくので、聖也はついていくのがやっとだ。

 ナミはどんどん岩に寄っていく。

 「もしかして、ナミ。家って……」

 聖也が恐る恐る尋ねる。

 「うん。この『巨岩』の中よ」

 リンっと鈴の音が鳴る。

 「帰ったよぉ!」

 ナミが言った。

 眼の前の空気を撫でるように触れる。すると、見えなかった扉が姿を現す。まるでさっきの岩のようだ。自分の眼を疑ってしまう聖也だが、無理もないだろう。

 「おぉ、帰ったか」

 そこには優しそうな爺さんがいた。好々爺という言葉が正しいだろう。

 「今日の夕食はシチューだぞ……って誰だ、その坊主」

 優しそうな笑みを浮かべ、老人は言う。だが、すぐに目を怪しげなものを見る目に変え、聖也を眺める。

 「うん? 『権能者』か?」

 爺さんが声をかけてくる。

 「珍しい髪色だな。どこの出身だ」

 聖也は素直に答えるべきか悩んだが、答えることにした。

 「東京です」
 「「トウキョウ」?」
 「はい……」

 「ふむ」と呟き、爺さんは少し考えているようだ。

 「すまない。その「トウキョウ」という地名は知らぬ。一体、どこにあるのだ」
 
 (はっ?)

 「いや、でも日本語を話してるし、日本の首都がわからないってどういうこどですか?」
 「「ニホンゴ」? 「ニホン」? すまないが、それは地名か? そんな場所、全く聞いたことがない」
 「そうですか」

 そう言われた引き下がるしかない。

 聖也は逆にこちらから質問することにした。

 「すみませんが、ここはどこでしょうか」
 「うん? ここは『巨岩』だが……あぁ国名か。ギリギリ『魔道国家シャルム』の領地だな。付近一帯が荒野だから実際に誰かがしっかり管理していることはないぞ」

 (シャルム……? そんな国、聞いたことないぞ)

 もしや……という気持ちが聖也を襲う。

 「いやしかし、『権能者』とは珍しい。儂ぐらい有名人になっててもおかしくないんじゃけどなぁ」

 (うん? ナルシスト?)

 「そうだね。爺さんは『幻顕権能』を持っていた魔法師だったから、確かにそうなんだけど、なんかイラッてくるよね」

 ナミもそんなこと言った。

 「ふむぅ。しかし、儂のことすら知らんとは……【幻想】っていう二つ名を持っていたのになぁ。活躍度が足りなかったか」

 ブツブツと小さな声でアギは呟く。聖也はアギ爺と呼ぶことにした。

 「そんなこといいから、ご飯でも食べようよ」

 ナミがそう言った。

 「おぉ、そうだな。坊主は何か食べれないものはあるか?」
 「特にないです」

 「おぉ、そうか」とアギ爺が呟き、ご飯を取りに行った。








 「その眼の色は『権能者』だろう」

 熱々のシチューを木の皿に盛りつけられていた。どうやら、普通のスプーンを使って食べるようだ。非現実的な場所だったが、食事は普通なのだなと、聖也は思った。

 「異色眼。『権能者』にしか持ち得ぬ特徴だろう」

 (うん? 異色眼?)

 聖也は自分の知らない単語を聞いて、不思議に思った。尋ねてみる。

 「異色眼とは?」
 「それぞれの眼の色が異なっている眼よ」

 当たり前だろうといった感じでナミが答える。

 「『権能者』は?」

 更にわからない質問をした聖也。だが、今度の反応は先ほどのものとは大きく異なった。まるでサンタクロースが実在しないと知った子どものような反応だ。

 「えっ? 知らないの?」
 「大丈夫か、記憶喪失というやつか?」

 ナミとアギ爺が驚きの声を上げた。

 「え、えぇ。もしかしたら、そうなのかもしれませんね」

 聖也は適当な相槌を打ち、どちらかが質問に答えてくれることを願った。

 「はぁ、まぁでは、基本的なところかじゃ。いや、待て、先にお主の『権能』を調べよう。そうした方が説明しやすいかもしれない」

 そう言って、アギ爺はスプーンを起き、奥の部屋に行った。何やら、探し物をしているようだ。ガサガサと何かを探る音が聖也の耳まで届いた。

 「あった。『解析板』。これに血を垂らしてくれ」

 アギ爺は手に小さなナイフを聖也を渡した。白銀の刃が鈍く光り、恐ろしく思えた聖也は少し躊躇う。だが、悩んでいても仕方がないと割り切り、親指の腹を軽く切った。

 「うっ……」

 少し呻くような声をあげてしまう。

 「情けないなぁ」

 ナミはそう言った。若干、じと目だ。これは怒ってるのでは……と彼は考えたが、特に何も言わなかった。

 「出たぞ……えと……『召喚権能』『継承権能』? はっ……?」

 『権能』の名前を読み上げた後、アギ爺は硬直したようになった。その後、ぎこちない様子で聖也を見た。
 当の本人の聖也は自分がなぜ、そんな風に見られているのかわからず、戸惑ってしまう。

 「『二重適正者|《デュエルミュータント》』? 嘘だろ」

 アギ爺が呻くような驚きの声を上げる。まるで信じられないというこった感じの表情なナミとアギ爺。

 そんな中、聖也が的外れなことを言った。

 「それで、それは一体何なんですか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

処理中です...