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第四章 王都
第三十二話 幻想の使い手 後編
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「そもそもにお主、固有術式を何だと思っとる?」
「普通の術式などからは完全な独立した魔術です。例えば、天使が使う天術や森精族《エルフ》たちが使う精霊魔術などです」
「そうじゃ。妾が使う幻術もその一種じゃ」
「だがな……」とイルシャが続けた言葉は事前に俺が立てていた予想どおりだった。
「正確には術式さえ完璧に再現できれば、誰でも発動できるんじゃ。でもな、通常の魔術構築とは全く違う故に研究も進まないから、固有魔術師《ユニークマジシャン》なんて言葉が世間では作られたりするんじゃ」
確かに固有魔術師《ユニークマジシャン》という言葉は聞いたことがある。王女様の魔術講義の時に出てきた。
「さて、お主は特別な力があるのじゃろう?」
「はい。【術の天才】【術式読取】【術式理解】という技能を持っています」
それを言うと、イルシャの眼がキラキラと光る。
「そうじゃ。妾の力を模倣できるかもしれないのじゃろ。面白い」
とは言っても、この力は【創造権能】で創っただけなんだよな。
【術の天才】
【分類】才覚系
【説明】魔術に関する能力に補正が掛かり、脳内の魔術部分に関する制限を外す
【術式読取】
【分類】魔術系
【希少度《レアリティ》】通常《ノーマル》
【説明】魔術を見れば、術式を読み取ることができる
【術式理解】
【分類】魔術系
【希少度《レアリティ》】通常《ノーマル》
【説明】術式を覚え、理解する。但し、【術式読取】との併用は負担が大きい
【術式読取】と【術式理解】を取得したお陰で、相手が魔術を使用したら、その魔術を自分の物にできる。
そして、あの囚人から奪った【並列思考】。これのお陰で術式を瞬時に【解析】を行える。
「では小童……見とれよ、これこそ妾の魔術【幻想境界】」
途端、世界が歪む。
思わず目を瞑ってしまう。しかし、発動瞬間を見たので、脳内で解析を続ける。
【幻想境界】
複雑な術式が脳内を飛び交う。数字や文字の羅列が頭を痛くする。
これは思っていた以上だ。術式が複雑すぎる。【術式理解】を用いても、完全に理解できない……
と脳内で四苦八苦しているうちに歪んだ世界がもとに戻り始める。しかし、そこはさっきの部屋ではなかった。
室内にいるはずなのに、空が見える。床を見ると、そこは野原だった。
「これこそが妾の魔術……【幻想秘術】の一端【幻想境界】。自分の想像した世界を自由に創れる。ただ、全てが幻。例えば、珍しいアイテムなんかを創りだすことはできても、ただの幻だからな」
「幻の空間を創り出すのが【幻想境界】ですか……」
「小童は特別だからな。この魔術の攻撃転用を教えてやろう」
【幻想秘術】が攻撃に転用できるのか……興味がある。
「まずは獲物を用意せんとな【魔獣召喚《サモンモンスター》:毒蛇】」
床に術式が描かれ、魔術陣が現れる。そこから出てきたのは小さな蛇だった。
「【巨大化】」
蛇は魔術を受け、大きくなる。確か、毒蛇はEランクの魔獣だ。そこまでは強くない。けど、今は俺の背丈ぐらいはある。流石に寒気がする。
「では、見とけ【幻焉】」
刹那、毒蛇の身体が揺れ出す。ガタガタと言う効果音さえ聞こえてきそうなほどに揺れている。
「これは一体?」
俺は思わず疑問を口に出す。
「毒蛇は今、幻想の中に入り込んだ。小童、全ての生物が皆等しく持っておる感情とは何か知っておるか」
「わかりません」
「それはな」
そこで、毒蛇は泡を吹いて倒れる。
「恐怖だ」
そこには少女の姿はなかった。背丈の小さい老婆がいた。
「今、毒蛇が見たのは死……自分が死んだ場面《シーン》を幻として永遠と見せられていた。幻の世界の
中では、妾の思う通りになる。あの毒蛇はあの一瞬で、何十もの『死』を見たのじゃ」
「直接、死の体験、恐怖を刷り込み、自我を崩壊させるということですか」
「その通りじゃ。妾が考えた魔術じゃ」
【幻想秘術】。幻を操り、人を殺す魔術か。
「解析は終了しました。【幻想境界】は使えるようになりました」
「ほう。その速度で模倣するか。なら発動させてみよ」
「わかりました」
俺は術式を組み始める。【魔術】の欄に刻まれた魔術は殆どノータイムで発動できるが、術式から組む場合は少しの時間が必要になる。初めての演算に時間がかかるのだ。
「【幻想境界】」
発動した魔術が世界を塗り替えていく。
想像した世界は和室。久しぶりに日本の部屋を再現してみる。
「ほう。すごいな。この速度で固有術式を解析し、模倣するとは……」
いつの間にか、少女の姿に戻ったイルシャが言った。
「では、【幻焉】は模倣できたのか?」
「いえ、まだです。術式が【幻想境界】と完全に違うし、さらに難しいので解析が進んでいません」
「そうか。いやはや、しかし、まさか固有術式を完全に模倣できる奴が現れるとはのう」
イルシャは驚きながら言う。俺は少しこそばゆいような感じがした。
その後、俺はおいしい菓子を頂き、帰った。
「では、ありがとうございました」
「じゃあの」
俺は屋敷を後にした。
「普通の術式などからは完全な独立した魔術です。例えば、天使が使う天術や森精族《エルフ》たちが使う精霊魔術などです」
「そうじゃ。妾が使う幻術もその一種じゃ」
「だがな……」とイルシャが続けた言葉は事前に俺が立てていた予想どおりだった。
「正確には術式さえ完璧に再現できれば、誰でも発動できるんじゃ。でもな、通常の魔術構築とは全く違う故に研究も進まないから、固有魔術師《ユニークマジシャン》なんて言葉が世間では作られたりするんじゃ」
確かに固有魔術師《ユニークマジシャン》という言葉は聞いたことがある。王女様の魔術講義の時に出てきた。
「さて、お主は特別な力があるのじゃろう?」
「はい。【術の天才】【術式読取】【術式理解】という技能を持っています」
それを言うと、イルシャの眼がキラキラと光る。
「そうじゃ。妾の力を模倣できるかもしれないのじゃろ。面白い」
とは言っても、この力は【創造権能】で創っただけなんだよな。
【術の天才】
【分類】才覚系
【説明】魔術に関する能力に補正が掛かり、脳内の魔術部分に関する制限を外す
【術式読取】
【分類】魔術系
【希少度《レアリティ》】通常《ノーマル》
【説明】魔術を見れば、術式を読み取ることができる
【術式理解】
【分類】魔術系
【希少度《レアリティ》】通常《ノーマル》
【説明】術式を覚え、理解する。但し、【術式読取】との併用は負担が大きい
【術式読取】と【術式理解】を取得したお陰で、相手が魔術を使用したら、その魔術を自分の物にできる。
そして、あの囚人から奪った【並列思考】。これのお陰で術式を瞬時に【解析】を行える。
「では小童……見とれよ、これこそ妾の魔術【幻想境界】」
途端、世界が歪む。
思わず目を瞑ってしまう。しかし、発動瞬間を見たので、脳内で解析を続ける。
【幻想境界】
複雑な術式が脳内を飛び交う。数字や文字の羅列が頭を痛くする。
これは思っていた以上だ。術式が複雑すぎる。【術式理解】を用いても、完全に理解できない……
と脳内で四苦八苦しているうちに歪んだ世界がもとに戻り始める。しかし、そこはさっきの部屋ではなかった。
室内にいるはずなのに、空が見える。床を見ると、そこは野原だった。
「これこそが妾の魔術……【幻想秘術】の一端【幻想境界】。自分の想像した世界を自由に創れる。ただ、全てが幻。例えば、珍しいアイテムなんかを創りだすことはできても、ただの幻だからな」
「幻の空間を創り出すのが【幻想境界】ですか……」
「小童は特別だからな。この魔術の攻撃転用を教えてやろう」
【幻想秘術】が攻撃に転用できるのか……興味がある。
「まずは獲物を用意せんとな【魔獣召喚《サモンモンスター》:毒蛇】」
床に術式が描かれ、魔術陣が現れる。そこから出てきたのは小さな蛇だった。
「【巨大化】」
蛇は魔術を受け、大きくなる。確か、毒蛇はEランクの魔獣だ。そこまでは強くない。けど、今は俺の背丈ぐらいはある。流石に寒気がする。
「では、見とけ【幻焉】」
刹那、毒蛇の身体が揺れ出す。ガタガタと言う効果音さえ聞こえてきそうなほどに揺れている。
「これは一体?」
俺は思わず疑問を口に出す。
「毒蛇は今、幻想の中に入り込んだ。小童、全ての生物が皆等しく持っておる感情とは何か知っておるか」
「わかりません」
「それはな」
そこで、毒蛇は泡を吹いて倒れる。
「恐怖だ」
そこには少女の姿はなかった。背丈の小さい老婆がいた。
「今、毒蛇が見たのは死……自分が死んだ場面《シーン》を幻として永遠と見せられていた。幻の世界の
中では、妾の思う通りになる。あの毒蛇はあの一瞬で、何十もの『死』を見たのじゃ」
「直接、死の体験、恐怖を刷り込み、自我を崩壊させるということですか」
「その通りじゃ。妾が考えた魔術じゃ」
【幻想秘術】。幻を操り、人を殺す魔術か。
「解析は終了しました。【幻想境界】は使えるようになりました」
「ほう。その速度で模倣するか。なら発動させてみよ」
「わかりました」
俺は術式を組み始める。【魔術】の欄に刻まれた魔術は殆どノータイムで発動できるが、術式から組む場合は少しの時間が必要になる。初めての演算に時間がかかるのだ。
「【幻想境界】」
発動した魔術が世界を塗り替えていく。
想像した世界は和室。久しぶりに日本の部屋を再現してみる。
「ほう。すごいな。この速度で固有術式を解析し、模倣するとは……」
いつの間にか、少女の姿に戻ったイルシャが言った。
「では、【幻焉】は模倣できたのか?」
「いえ、まだです。術式が【幻想境界】と完全に違うし、さらに難しいので解析が進んでいません」
「そうか。いやはや、しかし、まさか固有術式を完全に模倣できる奴が現れるとはのう」
イルシャは驚きながら言う。俺は少しこそばゆいような感じがした。
その後、俺はおいしい菓子を頂き、帰った。
「では、ありがとうございました」
「じゃあの」
俺は屋敷を後にした。
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