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エンカウント:マンティコア
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坂嶋征矢は、駅前の風景をぐるりと見渡した。
十七歳。すらりと上背がある。
容貌は端正だが、あまり動かない釣り上がり気味の三白眼のせいで、少々ぶっきらぼうで低体温な印象。
征矢の目の前にあるのは、どこにでもある地方のベッドタウンだった。
はっきり言えば、無個性で退屈。
征矢はそう考えていた。
わずか数分後、まったくもってそれは大間違いだったと気づくことになるのだが。
駅前ロータリーのど真ん中に、わりと大きな看板が立っていた。
[ 籠目市 異世界特区指定都市 ]
……なんだこれは。
横目でそれを見ながら、しかし征矢は深く考えずに歩き過ぎる。
征矢は携帯端末の地図を見返す。目的地はここから徒歩で二、三十分。バスに乗るのが早いようだが、慣れない土地のバスはなんとなく苦手だ。天気もいい。ボストンバッグを片手に、征矢はのんびりと歩いていくことにした。
駅前の商業地区を抜けると、住宅街。そこもしばらく歩くと、だんだん家と家の間隔が広くなってくる。人通りはもちろん、車もほとんど往来しない。のんびりした土地だ。
バサバサバサッ!
唐突に。
その静けさが破られた。
前触れもなく頭上で起こった耳慣れない音に、征矢は思わず首をすくめる。
「なんだ? カラスか?」
確かに鳥の羽ばたきに似ていたが、だとすればとんでもなくでっかい鳥だろう。
一瞬、頭上をなにかが飛び過ぎるのが視野の端に見えた気がした。
視線を前に戻すと――――
いつの間にか、目の前に人が立っていた。
女の子だ。
一見してふつーの女の子ではない。
砂色の髪からは、まるっこいケモ耳が一対ぴょこんと。
そこここに金属のトゲトゲがついた、ほぼ全身をぴっちり覆う革鎧みたいなものを身に着けている。しかしそんないでたちでも、バストライン、ヒップラインともに豊かなのははっきり見て取れる。手足もすらりと長い。
背中にはコウモリのような小さな翼がたたまれていて、お尻からはひょろっと長いしっぽが伸びている。
ぱっと見、ちょっと突飛なメタルバンドのステージ衣装という感じもしないではない。
年齢は征矢と同じくらい、十代後半に見える。顔立ちは美少女と表現してどこからも文句は来ないだろう。とりわけくっきりした眉は凛々しくさえある。
異装の美少女は不敵な笑みを浮かべ、征矢にビシィッと指を差した。口許から大きな犬歯がのぞく。
「サカシマセイヤだな!?」
征矢は無感情に、相手を見下ろす。
「そうだけど、なに?」
「ここで死んでもらうぞ。予言の勇者よ」
「は?」
怪訝そうな征矢の表情を怯えと受け取ったか、美少女はさらにすごむ。
「いいやただ殺すだけではない! 地べたに引き倒しありとあらゆる陵辱を加えてヒィヒィ泣き叫ばせ、誇りも尊厳もすべて汚し尽くしたうえで残虐な死をくれてやる! ふはははは!」
「………………」
けっこうな間、征矢は無言、かつ無表情で眼前の美少女を凝視した。
「ふはははは! どうした! 恐怖で声も出んか!」
「………………」
征矢の沈黙は続く。
高校生男子の平均身長を余裕で超える締まった長身に加え、ただでさえ冷たい印象の顔は黙り込むとさらに威圧的になる。
うち続く静寂がだんだん不安になったのか、異装の少女が叫ぶ。
「な、なんとか言え! 無言やめろ! 無言こわい!」
どうやらこの娘、顔つきから想像されるほど肝は太くないらしい。
ようやく、征矢は重い口を開いた。
「ちょっと聞いてもいいか」
少女は安心したのか、ちょっと声が高くなる。
「いいだろう、ふははは! だが命乞いは聞かんぞ」
征矢は携帯端末の電話機能を呼び出す。
「おつむのイカレたヘビメタ痴女に絡まれた場合、連絡するのは警察か? 病院か?」
「ち、痴女とはなんだ無礼な! 我が名は魔王軍麾下の精鋭幻獣兵団第八軍団長、メルシャ・マンティコーラ将軍! 〈爆毒暴牙のマンティコア〉メルシャ閣下とはオレのことだ!」
「まんちこ? お前まんちこっていうのか。親ひどいな」
「違う! マンティコアだ! あと名前はメルシャだから!」
「だいたい軍団長ってわりには寂しいな。お前ひとりじゃないか。軍団はどうした?」
少女の背後に征矢は視線を向ける。確かにあたりにはほかに誰もいない。
〈爆毒暴牙のマンティコア〉は少し赤くなって怒鳴る。
「う、うるさいっ。魔王軍は今ちょっと人手不足なのだ! そ、それに貴様ひとり殺すのに軍団なぞいらん! オレひとりで十分だ!」
「そうかそうかー。大変だなーそれは」
もう征矢はいじっている携帯端末から目も上げない。
マンティコアのメルシャはますます気色ばむ。
「あーっ、貴様、オレを鼻であしらっているな!」
「はいはい。今お巡りさん呼んでやるからな。ちょっとおとなしくしてような」
正解。完璧に鼻であしらっている。
「オ、オレを女と思って侮ると、後悔することになるぞ……!」
自称〈爆毒暴牙のマンティコア〉メルシャ閣下はせいぜい身長百六十センチ台半ばくらいの女子である。
もし万一本当につかみかられても、自分の体格なら余裕で突き放せる。征矢はそう高をくくっている。
もちろん刃物でも持っていれば話は別だが――――
「なめるな小僧っ!」
メルシャがいきなり飛びかかってくる。思いがけず素早い。
「うわっ」
征矢は反射的に身をかわす。はずみで携帯端末が手から離れて地面に落ちる。
ギィン!
耳障りな金属音。
振り返ると、電柱にくくりつけられてた鉄板製の立て看板が、レーザーカッターでも使ったみたいに真っ二つになっていた。
反応がわずかでも遅ければ、征矢がああなっていたところだ。
「なっ!?」
ニヤリとしてメルシャは両手を自分の顔の前にかざす。
両手のツメが長く、鋭く突き出していた。
「見たか、必殺マンティコア・クロウの切れ味! ふはははは!」
「マジか……」
どういう理屈かわからないが、どうもこの女、冗談抜きで征矢を殺すつもりで、しかもその能力があるようだ。
現状どうやら真剣に、生命の危機っぽい。
〈爆毒暴牙のマンティコア〉メルシャは征矢の驚いた顔がよほど痛快だったのか、両手を腰に当ててさらなる高笑いを始めた。
「ふはははは! ようやくオレの言葉を信じたか! だがすでに時遅し! このマンティコアのツメとキバに狙われたからには、無力な人間でしかない貴様にはもはや恥辱と死あるのみと知れい! おのれの不覚を呪いつつ苦悶の中で果てるがいい哀れな人げ」
「人間パンチ!」
ばこっ。
征矢の右ストレートが、きれいにメルシャの顔面を貫く。
メルシャはへなへなと地面に座り込み、両手で顔を押さえる。
「い、痛い! なにをする!?」
〈爆毒暴牙のマンティコア〉、驚きの口ほどにもなさ。
「弱っ! いや、なにをするはこっちの台詞だが」
「女の子の顔殴るかふつう!? 正気を疑う!」
「さっき女と思うなと自分で言ったから」
メルシャは悔しそうに両腕をばたばたさせる。
「それとこれとは話が別!」
「身勝手!」
「ケガでもしたらどうする気だ!」
「お前今、本気でおれのこと殺そうとしたよな? その口で言うか?」
征矢は不良でもケンカ好きでもないが、小さい頃から家庭環境を理由に、面倒な手合に因縁をつけられることは多かった。そういう場合の「対処法」は自然に身に付いている。恵まれた体格のおかげもあって、負けたことはほとんどない。
マンティコアのメルシャは、ゆらりと立ち上がった。背後にはどよよんとあやしいオーラが燃え、顔には不気味な笑みが。
「ククク……バカが。このオレに、とうとう本気を出させてしまったようだな」
「なあ、おれもう行っていいか。急いでるんだが」
心底めんどくさそーに征矢は言う。
「ダメ! 行くな! 見るがいい、オレの奥の手である必殺の武器を」
メルシャの長いしっぽが、ひゅんっとしなって頭の上まで立ち上がる。
しっぽはライオンのそれのように尖端が毛の房になっている。
房の毛一本一本が、ふいにザザッと逆立つ。
柔らかかった毛が一瞬で鋭い針と化し、その尖端から少しずつ黄色い液体がポタポタと滴る。
「なんだそれ。キモいな」
「キ、キモいって言うな! これぞ我が必殺武器、マンティコア・ポイズンテイルだ! 軽催眠から即死級まで毒の種類・濃度は自由自在! しかも針は吹き矢のように発射することも可能! もはや貴様に逃げ道はないぞ愚かな人間よ! 我が毒針によって血反吐を吐き悶えのたうちながら絶命するのだ! ふはははは!」
「ほほう。それはいいことを聞いた」
「ふん、死ぬる覚悟を決めたか。いい心がけだ」
征矢はバッグから突き出しているグリップを握り、ぐいと引っ張った。
鈍く銀色に光る金属バットが現れる。「アルティマスラッガー」というあまり聞いたことのないブランドマークがプリントされている。素材は強度抜群の超々ジュラルミン製。
ちなみに征矢は野球部員だったことも、野球を趣味にしたこともない。
心ならずも非友好的な対人関係が発生してしまったときのための安全保障である。ほとんどの場合、上背があって目つきの鋭い征矢がこれを持ち出すと、相手は退散する。
残念ながら、今目の前にいるヤツはそうではなかったが。
肩を揺すって、さらに笑いだす。
「ふはははは笑止! そのような棒きれでこのオレに太刀打ちできると思うてか! 人間の浅知恵ここに極まれり! せいぜい悪あがきをするがいい! その短い棒で間合いに入る前に、貴様は針ネズミになってくたばるのだからな! まったくちゃんちゃらおかし……」
「人間バット投げ!」
びゅっ!
予備動作ゼロの下手投げで征矢が投げつけた金属バットは、無回転でまっすぐ飛んでマンティコアのどてっ腹に「ぼすっ」とめり込んだ。
「おっ……ぶうぅ……!!」
先端がまともに胃袋を突き、メルシャはお腹を押さえて膝をつく。
メルシャはショックに目を見開き、口をぱくぱくさせる。
「投げた……こんな硬い棒を……! お、おのれ……おのれえサカシマセイヤ! 絶対に死なす! 食らえマンティコア・ポイズンテイルニードル!」
マンティコアのしっぽが、征矢を狙う。
長さ十五センチ以上はある細い鋭利な毒針が数本、放たれた。
「人間バッグシールド!」
持っていた大きなボストンバッグを盾に、征矢は突進する。
針はすべて、ぷすぷすとバッグに突き刺さるばかり。
「――――からの人間キック!」
バッグの向こうから、征矢の長い脚が振り出される。
ぼこす!
スニーカーの厚いソールが、膝立ちしているマンティコアの顔面を撃ち抜く。
今度は前蹴りが、クリーンヒット。
「あぴいいい……」
マンティコア娘は、虹のように華麗な鼻血の軌跡を描きながらスローモーションで仰向けにぶっ倒れた。
いよいよ真っ赤になった鼻を押さえてメルシャは悲痛な声をあげる。
「お、女の子の顔面蹴った! お、鬼か貴様!」
「致死性の毒針で人刺そうとしたヤツの言う台詞か。正当防衛もいいとこだ」
征矢のド正論、鉄壁である。
「つ、強い……! やはり恐ろしい男よ……このマンティコアの必殺技ポイズンテイルニードルをいとも簡単にかわすとは」
征矢はさらに一歩踏み出し、冷たい顔でマンティコアを見下ろす。スニーカーはしっかりと毒針しっぽを踏みつけ、第二射を許さない態勢だ。拾い上げたバットを肩に担ぐと、陽光を受けて銀色のヘッドがギラリと光る。
「ま……なんだっけ。まんちことか言ったか」
「まんちこって言うな!」
「なんでもいい。とにかく忠告しておく。本気でケンカに勝とうとするなら、必殺技をいちいち相手に事前告知しないことだ」
メルシャの顔におののきの色が浮かぶ。
「こ、こいつ、すでに幻獣の殺り方を知り尽くしている……! やはり予言は本当だったか……」
「いや、知らない。お前が弱すぎでバカすぎなだけだ」
やけになってマンティコアは叫ぶ。
「くそう! しかしオレとて魔王軍の一翼を担う将! 決して降伏などせん! 必ずや貴様の息の根を……」
「まだやる気か?」
ぎろり。征矢はとびきり冷ややかな目つきになる。
ごつ!
金属バットをメルシャの脚の間に突き立てる。たまたまそこにあったコーヒーの空き缶がぺちゃんこになる。
とたんにメルシャは泣きべそをかき始めた。
「わかった……降参する……降参すればいいのだろえふんえふん」
「一秒でへたれたな」
「自分、痛いのとかほんとダメなんでえふんえふん」
「お前その程度の根性でよく将軍だとか殺すとかたいそうなことぬかしたな」
とりあえず、もう危険なことはしてこなさそうだ。征矢はゆっくりとしっぽを踏んでいる足をどけてやる。
「なにをしたかったのか知らんけど、次からケンカは相手見て売れ。いいな」
諭すように征矢は言う。
うずくまったまま、メルシャは怯えきった目で征矢を見上げる。しっぽがくるんと太ももの間に巻き込まれている。肉食獣が本能的に見せてしまう恐怖と降伏の表現だ。
「こ、殺さないのか……?」
「やめろ殺すとか道端で人聞きの悪い」
「ほんとか? でも陵辱はするんだな? するよな? だって貴様すごい性欲強そうだし……」
征矢はたまらず声を張り上げる。
「そ、そんなことするか! お前、人をなんだと思っている!」
「ひいいい! ごめんなさい! せめてその硬い棒は使わないで!」
じょわあああ。
征矢の足の下が、急に濡れてくる。黄色い水たまりがどんどん広がっている。
ぎょっとして征矢はマンティコアから飛び離れた。
「うわっ! なんだこれ! 汚ない!」
メルシャはぷるぷると首を振った。
「あっ、違う! これ尿じゃない! 尿じゃないから!」
「じゃあなんだ」
「毒液」
「うわああああ!」
征矢はさらに距離を取る。
もじもじとマンティコアは言う。
「オレ、緊張すると毒腺がユルくなって液が洩れてしまうのだ」
「物騒だな!」
「あっ、でもこういうときに出ちゃう汁はすごく薄いんで大丈夫だ。毒性とかぜんぜんないんで。なんなら飲んでも無害」
「飲むか! 往来にややこしいものを撒くな!」
メルシャはよたよたと立ち上がり、ゆっくりと後ずさっていく。
征矢との距離が安全圏までたっぷり離れたのを確認する。
するとまた、態度が豹変した。
「ふん! きょ、今日のところはこれくらいで勘弁してやる!」
「はあ?」
「だが必ずや貴様の純潔と命はもらう! 首を洗って待っていろサカシマセイヤ! ふーはははは!」
バサッ。マンティコアが背中にたたんでいたコウモリのような羽根が大きく開き、はばたく。
たちまちマンティコアのメルシャは空高くに飛び上がり、姿が見えなくなってしまった。
「ばーかばーか! おたんちーん!」
という捨て台詞を残して。
残された征矢は、しばらくぽかんと空を見上げていた。
「空を……飛んだ……?」
最初は頭のどうかしたコスプレイヤーかなにかと思った。
ツメで鉄板を切り裂いたのも、しっぽから毒針を飛ばしたのも、なにかそういう特殊な器具を装着していたのだろうと説明をつけられる。
だが、コウモリの羽根で空を飛ぶとなると話は別だ。
ほんとに人間じゃなかったのかあいつ。マジで。
しかしなぜ、そんな奴がおれの命を狙うのか。
ていうかそもそもアレはなんだ。人間か? UMAか?
まあいい。超常現象について考えるのはあとだ。今は目的地に向かわないと。
征矢は常に冷静、かつ合理主義者だ。生来いささか鈍感なのか、少々のことには動じず、喜怒哀楽の表出もあまり強くない。前の学校では「鉄仮面」などと呼ばれたこともある。
地面に落ちたバッグと携帯端末を拾い上げ、征矢は先を急いだ。
「ここか、叔母さんのうち」
住宅地もかなりはずれのほうに、そのカフェ〈クリプティアム〉はあった。
思ったよりずっと大きいな。
征矢は感心して、その立派な店構えを見上げる。
自宅を改装した喫茶店と聞いていたので、てっきりテーブルが二つ三つのこぢんまりした店を想像していた。思いがけずかなり本格的な広さがありそうだ。
レンガ造りのコテージ様式風。二階建てで、三角屋根に並んだ屋根窓もしゃれている。入り口へ通じるちょっとしたアプローチもレンガ敷きだ。
征矢にとっては、今日から働く場所でもある。その営業形態も他人事ではない。
あらためて、叔母さんからのメールを見直す。
住所と〈クリプティアム〉の店名だけがある。ということは、ここから入れということか。
一回大きく息を吸って、征矢は喫茶店の扉を開けた。
十七歳。すらりと上背がある。
容貌は端正だが、あまり動かない釣り上がり気味の三白眼のせいで、少々ぶっきらぼうで低体温な印象。
征矢の目の前にあるのは、どこにでもある地方のベッドタウンだった。
はっきり言えば、無個性で退屈。
征矢はそう考えていた。
わずか数分後、まったくもってそれは大間違いだったと気づくことになるのだが。
駅前ロータリーのど真ん中に、わりと大きな看板が立っていた。
[ 籠目市 異世界特区指定都市 ]
……なんだこれは。
横目でそれを見ながら、しかし征矢は深く考えずに歩き過ぎる。
征矢は携帯端末の地図を見返す。目的地はここから徒歩で二、三十分。バスに乗るのが早いようだが、慣れない土地のバスはなんとなく苦手だ。天気もいい。ボストンバッグを片手に、征矢はのんびりと歩いていくことにした。
駅前の商業地区を抜けると、住宅街。そこもしばらく歩くと、だんだん家と家の間隔が広くなってくる。人通りはもちろん、車もほとんど往来しない。のんびりした土地だ。
バサバサバサッ!
唐突に。
その静けさが破られた。
前触れもなく頭上で起こった耳慣れない音に、征矢は思わず首をすくめる。
「なんだ? カラスか?」
確かに鳥の羽ばたきに似ていたが、だとすればとんでもなくでっかい鳥だろう。
一瞬、頭上をなにかが飛び過ぎるのが視野の端に見えた気がした。
視線を前に戻すと――――
いつの間にか、目の前に人が立っていた。
女の子だ。
一見してふつーの女の子ではない。
砂色の髪からは、まるっこいケモ耳が一対ぴょこんと。
そこここに金属のトゲトゲがついた、ほぼ全身をぴっちり覆う革鎧みたいなものを身に着けている。しかしそんないでたちでも、バストライン、ヒップラインともに豊かなのははっきり見て取れる。手足もすらりと長い。
背中にはコウモリのような小さな翼がたたまれていて、お尻からはひょろっと長いしっぽが伸びている。
ぱっと見、ちょっと突飛なメタルバンドのステージ衣装という感じもしないではない。
年齢は征矢と同じくらい、十代後半に見える。顔立ちは美少女と表現してどこからも文句は来ないだろう。とりわけくっきりした眉は凛々しくさえある。
異装の美少女は不敵な笑みを浮かべ、征矢にビシィッと指を差した。口許から大きな犬歯がのぞく。
「サカシマセイヤだな!?」
征矢は無感情に、相手を見下ろす。
「そうだけど、なに?」
「ここで死んでもらうぞ。予言の勇者よ」
「は?」
怪訝そうな征矢の表情を怯えと受け取ったか、美少女はさらにすごむ。
「いいやただ殺すだけではない! 地べたに引き倒しありとあらゆる陵辱を加えてヒィヒィ泣き叫ばせ、誇りも尊厳もすべて汚し尽くしたうえで残虐な死をくれてやる! ふはははは!」
「………………」
けっこうな間、征矢は無言、かつ無表情で眼前の美少女を凝視した。
「ふはははは! どうした! 恐怖で声も出んか!」
「………………」
征矢の沈黙は続く。
高校生男子の平均身長を余裕で超える締まった長身に加え、ただでさえ冷たい印象の顔は黙り込むとさらに威圧的になる。
うち続く静寂がだんだん不安になったのか、異装の少女が叫ぶ。
「な、なんとか言え! 無言やめろ! 無言こわい!」
どうやらこの娘、顔つきから想像されるほど肝は太くないらしい。
ようやく、征矢は重い口を開いた。
「ちょっと聞いてもいいか」
少女は安心したのか、ちょっと声が高くなる。
「いいだろう、ふははは! だが命乞いは聞かんぞ」
征矢は携帯端末の電話機能を呼び出す。
「おつむのイカレたヘビメタ痴女に絡まれた場合、連絡するのは警察か? 病院か?」
「ち、痴女とはなんだ無礼な! 我が名は魔王軍麾下の精鋭幻獣兵団第八軍団長、メルシャ・マンティコーラ将軍! 〈爆毒暴牙のマンティコア〉メルシャ閣下とはオレのことだ!」
「まんちこ? お前まんちこっていうのか。親ひどいな」
「違う! マンティコアだ! あと名前はメルシャだから!」
「だいたい軍団長ってわりには寂しいな。お前ひとりじゃないか。軍団はどうした?」
少女の背後に征矢は視線を向ける。確かにあたりにはほかに誰もいない。
〈爆毒暴牙のマンティコア〉は少し赤くなって怒鳴る。
「う、うるさいっ。魔王軍は今ちょっと人手不足なのだ! そ、それに貴様ひとり殺すのに軍団なぞいらん! オレひとりで十分だ!」
「そうかそうかー。大変だなーそれは」
もう征矢はいじっている携帯端末から目も上げない。
マンティコアのメルシャはますます気色ばむ。
「あーっ、貴様、オレを鼻であしらっているな!」
「はいはい。今お巡りさん呼んでやるからな。ちょっとおとなしくしてような」
正解。完璧に鼻であしらっている。
「オ、オレを女と思って侮ると、後悔することになるぞ……!」
自称〈爆毒暴牙のマンティコア〉メルシャ閣下はせいぜい身長百六十センチ台半ばくらいの女子である。
もし万一本当につかみかられても、自分の体格なら余裕で突き放せる。征矢はそう高をくくっている。
もちろん刃物でも持っていれば話は別だが――――
「なめるな小僧っ!」
メルシャがいきなり飛びかかってくる。思いがけず素早い。
「うわっ」
征矢は反射的に身をかわす。はずみで携帯端末が手から離れて地面に落ちる。
ギィン!
耳障りな金属音。
振り返ると、電柱にくくりつけられてた鉄板製の立て看板が、レーザーカッターでも使ったみたいに真っ二つになっていた。
反応がわずかでも遅ければ、征矢がああなっていたところだ。
「なっ!?」
ニヤリとしてメルシャは両手を自分の顔の前にかざす。
両手のツメが長く、鋭く突き出していた。
「見たか、必殺マンティコア・クロウの切れ味! ふはははは!」
「マジか……」
どういう理屈かわからないが、どうもこの女、冗談抜きで征矢を殺すつもりで、しかもその能力があるようだ。
現状どうやら真剣に、生命の危機っぽい。
〈爆毒暴牙のマンティコア〉メルシャは征矢の驚いた顔がよほど痛快だったのか、両手を腰に当ててさらなる高笑いを始めた。
「ふはははは! ようやくオレの言葉を信じたか! だがすでに時遅し! このマンティコアのツメとキバに狙われたからには、無力な人間でしかない貴様にはもはや恥辱と死あるのみと知れい! おのれの不覚を呪いつつ苦悶の中で果てるがいい哀れな人げ」
「人間パンチ!」
ばこっ。
征矢の右ストレートが、きれいにメルシャの顔面を貫く。
メルシャはへなへなと地面に座り込み、両手で顔を押さえる。
「い、痛い! なにをする!?」
〈爆毒暴牙のマンティコア〉、驚きの口ほどにもなさ。
「弱っ! いや、なにをするはこっちの台詞だが」
「女の子の顔殴るかふつう!? 正気を疑う!」
「さっき女と思うなと自分で言ったから」
メルシャは悔しそうに両腕をばたばたさせる。
「それとこれとは話が別!」
「身勝手!」
「ケガでもしたらどうする気だ!」
「お前今、本気でおれのこと殺そうとしたよな? その口で言うか?」
征矢は不良でもケンカ好きでもないが、小さい頃から家庭環境を理由に、面倒な手合に因縁をつけられることは多かった。そういう場合の「対処法」は自然に身に付いている。恵まれた体格のおかげもあって、負けたことはほとんどない。
マンティコアのメルシャは、ゆらりと立ち上がった。背後にはどよよんとあやしいオーラが燃え、顔には不気味な笑みが。
「ククク……バカが。このオレに、とうとう本気を出させてしまったようだな」
「なあ、おれもう行っていいか。急いでるんだが」
心底めんどくさそーに征矢は言う。
「ダメ! 行くな! 見るがいい、オレの奥の手である必殺の武器を」
メルシャの長いしっぽが、ひゅんっとしなって頭の上まで立ち上がる。
しっぽはライオンのそれのように尖端が毛の房になっている。
房の毛一本一本が、ふいにザザッと逆立つ。
柔らかかった毛が一瞬で鋭い針と化し、その尖端から少しずつ黄色い液体がポタポタと滴る。
「なんだそれ。キモいな」
「キ、キモいって言うな! これぞ我が必殺武器、マンティコア・ポイズンテイルだ! 軽催眠から即死級まで毒の種類・濃度は自由自在! しかも針は吹き矢のように発射することも可能! もはや貴様に逃げ道はないぞ愚かな人間よ! 我が毒針によって血反吐を吐き悶えのたうちながら絶命するのだ! ふはははは!」
「ほほう。それはいいことを聞いた」
「ふん、死ぬる覚悟を決めたか。いい心がけだ」
征矢はバッグから突き出しているグリップを握り、ぐいと引っ張った。
鈍く銀色に光る金属バットが現れる。「アルティマスラッガー」というあまり聞いたことのないブランドマークがプリントされている。素材は強度抜群の超々ジュラルミン製。
ちなみに征矢は野球部員だったことも、野球を趣味にしたこともない。
心ならずも非友好的な対人関係が発生してしまったときのための安全保障である。ほとんどの場合、上背があって目つきの鋭い征矢がこれを持ち出すと、相手は退散する。
残念ながら、今目の前にいるヤツはそうではなかったが。
肩を揺すって、さらに笑いだす。
「ふはははは笑止! そのような棒きれでこのオレに太刀打ちできると思うてか! 人間の浅知恵ここに極まれり! せいぜい悪あがきをするがいい! その短い棒で間合いに入る前に、貴様は針ネズミになってくたばるのだからな! まったくちゃんちゃらおかし……」
「人間バット投げ!」
びゅっ!
予備動作ゼロの下手投げで征矢が投げつけた金属バットは、無回転でまっすぐ飛んでマンティコアのどてっ腹に「ぼすっ」とめり込んだ。
「おっ……ぶうぅ……!!」
先端がまともに胃袋を突き、メルシャはお腹を押さえて膝をつく。
メルシャはショックに目を見開き、口をぱくぱくさせる。
「投げた……こんな硬い棒を……! お、おのれ……おのれえサカシマセイヤ! 絶対に死なす! 食らえマンティコア・ポイズンテイルニードル!」
マンティコアのしっぽが、征矢を狙う。
長さ十五センチ以上はある細い鋭利な毒針が数本、放たれた。
「人間バッグシールド!」
持っていた大きなボストンバッグを盾に、征矢は突進する。
針はすべて、ぷすぷすとバッグに突き刺さるばかり。
「――――からの人間キック!」
バッグの向こうから、征矢の長い脚が振り出される。
ぼこす!
スニーカーの厚いソールが、膝立ちしているマンティコアの顔面を撃ち抜く。
今度は前蹴りが、クリーンヒット。
「あぴいいい……」
マンティコア娘は、虹のように華麗な鼻血の軌跡を描きながらスローモーションで仰向けにぶっ倒れた。
いよいよ真っ赤になった鼻を押さえてメルシャは悲痛な声をあげる。
「お、女の子の顔面蹴った! お、鬼か貴様!」
「致死性の毒針で人刺そうとしたヤツの言う台詞か。正当防衛もいいとこだ」
征矢のド正論、鉄壁である。
「つ、強い……! やはり恐ろしい男よ……このマンティコアの必殺技ポイズンテイルニードルをいとも簡単にかわすとは」
征矢はさらに一歩踏み出し、冷たい顔でマンティコアを見下ろす。スニーカーはしっかりと毒針しっぽを踏みつけ、第二射を許さない態勢だ。拾い上げたバットを肩に担ぐと、陽光を受けて銀色のヘッドがギラリと光る。
「ま……なんだっけ。まんちことか言ったか」
「まんちこって言うな!」
「なんでもいい。とにかく忠告しておく。本気でケンカに勝とうとするなら、必殺技をいちいち相手に事前告知しないことだ」
メルシャの顔におののきの色が浮かぶ。
「こ、こいつ、すでに幻獣の殺り方を知り尽くしている……! やはり予言は本当だったか……」
「いや、知らない。お前が弱すぎでバカすぎなだけだ」
やけになってマンティコアは叫ぶ。
「くそう! しかしオレとて魔王軍の一翼を担う将! 決して降伏などせん! 必ずや貴様の息の根を……」
「まだやる気か?」
ぎろり。征矢はとびきり冷ややかな目つきになる。
ごつ!
金属バットをメルシャの脚の間に突き立てる。たまたまそこにあったコーヒーの空き缶がぺちゃんこになる。
とたんにメルシャは泣きべそをかき始めた。
「わかった……降参する……降参すればいいのだろえふんえふん」
「一秒でへたれたな」
「自分、痛いのとかほんとダメなんでえふんえふん」
「お前その程度の根性でよく将軍だとか殺すとかたいそうなことぬかしたな」
とりあえず、もう危険なことはしてこなさそうだ。征矢はゆっくりとしっぽを踏んでいる足をどけてやる。
「なにをしたかったのか知らんけど、次からケンカは相手見て売れ。いいな」
諭すように征矢は言う。
うずくまったまま、メルシャは怯えきった目で征矢を見上げる。しっぽがくるんと太ももの間に巻き込まれている。肉食獣が本能的に見せてしまう恐怖と降伏の表現だ。
「こ、殺さないのか……?」
「やめろ殺すとか道端で人聞きの悪い」
「ほんとか? でも陵辱はするんだな? するよな? だって貴様すごい性欲強そうだし……」
征矢はたまらず声を張り上げる。
「そ、そんなことするか! お前、人をなんだと思っている!」
「ひいいい! ごめんなさい! せめてその硬い棒は使わないで!」
じょわあああ。
征矢の足の下が、急に濡れてくる。黄色い水たまりがどんどん広がっている。
ぎょっとして征矢はマンティコアから飛び離れた。
「うわっ! なんだこれ! 汚ない!」
メルシャはぷるぷると首を振った。
「あっ、違う! これ尿じゃない! 尿じゃないから!」
「じゃあなんだ」
「毒液」
「うわああああ!」
征矢はさらに距離を取る。
もじもじとマンティコアは言う。
「オレ、緊張すると毒腺がユルくなって液が洩れてしまうのだ」
「物騒だな!」
「あっ、でもこういうときに出ちゃう汁はすごく薄いんで大丈夫だ。毒性とかぜんぜんないんで。なんなら飲んでも無害」
「飲むか! 往来にややこしいものを撒くな!」
メルシャはよたよたと立ち上がり、ゆっくりと後ずさっていく。
征矢との距離が安全圏までたっぷり離れたのを確認する。
するとまた、態度が豹変した。
「ふん! きょ、今日のところはこれくらいで勘弁してやる!」
「はあ?」
「だが必ずや貴様の純潔と命はもらう! 首を洗って待っていろサカシマセイヤ! ふーはははは!」
バサッ。マンティコアが背中にたたんでいたコウモリのような羽根が大きく開き、はばたく。
たちまちマンティコアのメルシャは空高くに飛び上がり、姿が見えなくなってしまった。
「ばーかばーか! おたんちーん!」
という捨て台詞を残して。
残された征矢は、しばらくぽかんと空を見上げていた。
「空を……飛んだ……?」
最初は頭のどうかしたコスプレイヤーかなにかと思った。
ツメで鉄板を切り裂いたのも、しっぽから毒針を飛ばしたのも、なにかそういう特殊な器具を装着していたのだろうと説明をつけられる。
だが、コウモリの羽根で空を飛ぶとなると話は別だ。
ほんとに人間じゃなかったのかあいつ。マジで。
しかしなぜ、そんな奴がおれの命を狙うのか。
ていうかそもそもアレはなんだ。人間か? UMAか?
まあいい。超常現象について考えるのはあとだ。今は目的地に向かわないと。
征矢は常に冷静、かつ合理主義者だ。生来いささか鈍感なのか、少々のことには動じず、喜怒哀楽の表出もあまり強くない。前の学校では「鉄仮面」などと呼ばれたこともある。
地面に落ちたバッグと携帯端末を拾い上げ、征矢は先を急いだ。
「ここか、叔母さんのうち」
住宅地もかなりはずれのほうに、そのカフェ〈クリプティアム〉はあった。
思ったよりずっと大きいな。
征矢は感心して、その立派な店構えを見上げる。
自宅を改装した喫茶店と聞いていたので、てっきりテーブルが二つ三つのこぢんまりした店を想像していた。思いがけずかなり本格的な広さがありそうだ。
レンガ造りのコテージ様式風。二階建てで、三角屋根に並んだ屋根窓もしゃれている。入り口へ通じるちょっとしたアプローチもレンガ敷きだ。
征矢にとっては、今日から働く場所でもある。その営業形態も他人事ではない。
あらためて、叔母さんからのメールを見直す。
住所と〈クリプティアム〉の店名だけがある。ということは、ここから入れということか。
一回大きく息を吸って、征矢は喫茶店の扉を開けた。
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