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まんちこさん vs 幻獣少女隊
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いつも穏やかなミノンの目が、突然けわしくなる。
「殺し屋……? 征矢さんに悪いことをする子は、許さないんだなも!」
逃げるどころか、ぐっと頭を低くして、ミノンはマンティコアに向かって突進する。ふだんののんびりしたミノンからは考えられないスピードだった。
え?
意表を突く行動に、メルシャは対応できない。
次の瞬間、角のあるミノンの頭が、砲丸のようにメルシャの腹にぶち込まれる。
「んごふっ!」
メルシャはふっ飛ばされ、ゴロンゴロンと廊下の端まで転がっていく。
(なんだ……この破壊力は……!)
内臓が口から全部出ちゃいそうな一撃だった。
それでもメルシャはなんとかよたよたと立ち上がる。マンティコアの肉体はタフだ。並の幻獣なら体が二つに折りたたまれていたことだろう。
目の前にあったドアを押し開け、中へ飛び込む。
ベッドには、真っ赤なネグリジェを着たポエニッサがいた。
「な、なんですのあなたは!」
メルシャはそれを無視して、窓に頭から突っ込んだ。
ガラスが粉々に割れ、メルシャは虚空へ躍り出る。
背中の翼を開き、暗い空へとはばたく。ここまでくれば安心だ。
(ふー、あぶないところだった。寿命が縮まっ……ん?)
メルシャの視界が、いきなり明るくなった。
頭上に、美しい翼を開いた幻獣娘がいた。全身が煌々と燃え盛っている。
メルシャの目がまん丸になる。
(フェニックス!?)
ポエニッサは激怒の表情でメルシャを見下ろしていた。
「よくもわたくしのお部屋をめちゃくちゃにしてくださいましたわね! 灰におなり、このケダモノ!」
炎に包まれたポエニッサの強烈なドロップキックがメルシャの背中に炸裂する。
「んがはっ! 熱っ! 痛っ!」
翼の根本を蹴られて、マンティコアのはばたきが止まる。
「うわあああああああ!」
メルシャはまっすぐ、椿の家の庭へ墜落した。
べちゃん! 芝生へ大の字に激突。
(くっそ……な、なんなんだこの家の連中は……)
並の幻獣なら死んでいてもおかしくないダメージだが、メルシャはどうにかこうにか身を起こす。
繰り返すが、マンティコアの肉体はとにかくタフなのだ。
すぐ目の前に、パジャマ姿の小さな女の子がしゃがんでこっちを見ていた。アルルだ。
アルルは小首をかしげて尋ねる。
「生きてるのです?」
メルシャはゼエゼエ喘ぎながらも、その子供に手を伸ばした。
「あ、当たり前だ。魔王軍の将がこれしきで死ぬか。おい子供、悪いが人質になってもら……」
アルルは静かに、自分の頭に咲いている花をぐっと引っ張った。
キィィィィィィィィィ!
とんでもない音量と高周波数の声がアルルの口からほとばしる。
目の前で爆弾が破裂したみたいな衝撃波がメルシャの脳を激しくシェイクする。
マンティコアはまたまた吹き飛ばされて、仰向けにひっくり返った。
並の幻獣ならもう一度死んでもおかしくないダメージだが、メルシャはまだ意識を保っていた。
しつこいようだが、マンティコアの肉体はムダにタフなのだ。
とはいえ、脳へのダメージで全身がしびれ、手足はもう動かせない。
「あぐう……」
そんなメルシャを、また別の可憐な美少女がのぞき込む。真っ白な髪に、まっすぐな一本角。ユニコーンだ。
ユニカは心配そうにささやく。
「ひどい目に合っちゃったわねぇ。だいじょうぶ?」
かすれた声で、メルシャはなんとか答える。
「だ……だいじょうぶじゃない……体が……動かない……」
「まあ、かわいそうなマンティコアさん。ほら、わたしが抱っこしてあげる」
女神のように優しい表情で、ユニカはメルシャを抱き起こす。
よくわからないが、こいつは無害のようだ。メルシャはほっと安堵の吐息。
ユニカは薄笑いをたたえ、なぜかメルシャの体を撫で回し始める。
「あなた、よく見るととっても可愛い顔してるのねぇ。それに……処女だし」
「は!?」
メルシャの豊かなバストを、ユニカは両手でわしわしとまさぐる。
「いい体してるのねぇ。とってもおいしそう……ああん、でもこの鎧がジャマねえ。脱がせちゃおうかしら、でゅふふふふ」
「なっ……や、やめろ! 乳を揉むな! あーっ、鎧を脱がすなあ!」
メルシャの顔がさらに青ざめていく。
安心したのもつかの間。今までの幻獣とは別の意味でヤバいのに捕まってしまった。
見回すと、いつの間にか取り囲まれていた。
さっきのミノタウロス、フェニックス、アルラウネ。それに金属バットを肩に担いだ征矢。
「おい、やめとけ馬子」
征矢が言うと、ユニコーンはしぶしぶセクハラの手を止めた。
「あん、いいとこだったのぃ」
た、助かった……。
いや違う。もうおしまいだ。予言の勇者は、オレを撲殺するだろう。あのおそろしい硬い棒で。
メルシャはそこで気を失った。
「殺し屋……? 征矢さんに悪いことをする子は、許さないんだなも!」
逃げるどころか、ぐっと頭を低くして、ミノンはマンティコアに向かって突進する。ふだんののんびりしたミノンからは考えられないスピードだった。
え?
意表を突く行動に、メルシャは対応できない。
次の瞬間、角のあるミノンの頭が、砲丸のようにメルシャの腹にぶち込まれる。
「んごふっ!」
メルシャはふっ飛ばされ、ゴロンゴロンと廊下の端まで転がっていく。
(なんだ……この破壊力は……!)
内臓が口から全部出ちゃいそうな一撃だった。
それでもメルシャはなんとかよたよたと立ち上がる。マンティコアの肉体はタフだ。並の幻獣なら体が二つに折りたたまれていたことだろう。
目の前にあったドアを押し開け、中へ飛び込む。
ベッドには、真っ赤なネグリジェを着たポエニッサがいた。
「な、なんですのあなたは!」
メルシャはそれを無視して、窓に頭から突っ込んだ。
ガラスが粉々に割れ、メルシャは虚空へ躍り出る。
背中の翼を開き、暗い空へとはばたく。ここまでくれば安心だ。
(ふー、あぶないところだった。寿命が縮まっ……ん?)
メルシャの視界が、いきなり明るくなった。
頭上に、美しい翼を開いた幻獣娘がいた。全身が煌々と燃え盛っている。
メルシャの目がまん丸になる。
(フェニックス!?)
ポエニッサは激怒の表情でメルシャを見下ろしていた。
「よくもわたくしのお部屋をめちゃくちゃにしてくださいましたわね! 灰におなり、このケダモノ!」
炎に包まれたポエニッサの強烈なドロップキックがメルシャの背中に炸裂する。
「んがはっ! 熱っ! 痛っ!」
翼の根本を蹴られて、マンティコアのはばたきが止まる。
「うわあああああああ!」
メルシャはまっすぐ、椿の家の庭へ墜落した。
べちゃん! 芝生へ大の字に激突。
(くっそ……な、なんなんだこの家の連中は……)
並の幻獣なら死んでいてもおかしくないダメージだが、メルシャはどうにかこうにか身を起こす。
繰り返すが、マンティコアの肉体はとにかくタフなのだ。
すぐ目の前に、パジャマ姿の小さな女の子がしゃがんでこっちを見ていた。アルルだ。
アルルは小首をかしげて尋ねる。
「生きてるのです?」
メルシャはゼエゼエ喘ぎながらも、その子供に手を伸ばした。
「あ、当たり前だ。魔王軍の将がこれしきで死ぬか。おい子供、悪いが人質になってもら……」
アルルは静かに、自分の頭に咲いている花をぐっと引っ張った。
キィィィィィィィィィ!
とんでもない音量と高周波数の声がアルルの口からほとばしる。
目の前で爆弾が破裂したみたいな衝撃波がメルシャの脳を激しくシェイクする。
マンティコアはまたまた吹き飛ばされて、仰向けにひっくり返った。
並の幻獣ならもう一度死んでもおかしくないダメージだが、メルシャはまだ意識を保っていた。
しつこいようだが、マンティコアの肉体はムダにタフなのだ。
とはいえ、脳へのダメージで全身がしびれ、手足はもう動かせない。
「あぐう……」
そんなメルシャを、また別の可憐な美少女がのぞき込む。真っ白な髪に、まっすぐな一本角。ユニコーンだ。
ユニカは心配そうにささやく。
「ひどい目に合っちゃったわねぇ。だいじょうぶ?」
かすれた声で、メルシャはなんとか答える。
「だ……だいじょうぶじゃない……体が……動かない……」
「まあ、かわいそうなマンティコアさん。ほら、わたしが抱っこしてあげる」
女神のように優しい表情で、ユニカはメルシャを抱き起こす。
よくわからないが、こいつは無害のようだ。メルシャはほっと安堵の吐息。
ユニカは薄笑いをたたえ、なぜかメルシャの体を撫で回し始める。
「あなた、よく見るととっても可愛い顔してるのねぇ。それに……処女だし」
「は!?」
メルシャの豊かなバストを、ユニカは両手でわしわしとまさぐる。
「いい体してるのねぇ。とってもおいしそう……ああん、でもこの鎧がジャマねえ。脱がせちゃおうかしら、でゅふふふふ」
「なっ……や、やめろ! 乳を揉むな! あーっ、鎧を脱がすなあ!」
メルシャの顔がさらに青ざめていく。
安心したのもつかの間。今までの幻獣とは別の意味でヤバいのに捕まってしまった。
見回すと、いつの間にか取り囲まれていた。
さっきのミノタウロス、フェニックス、アルラウネ。それに金属バットを肩に担いだ征矢。
「おい、やめとけ馬子」
征矢が言うと、ユニコーンはしぶしぶセクハラの手を止めた。
「あん、いいとこだったのぃ」
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いや違う。もうおしまいだ。予言の勇者は、オレを撲殺するだろう。あのおそろしい硬い棒で。
メルシャはそこで気を失った。
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