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11 とあるパーティの話
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各地で不可思議な魔力だまりが観測された。
ダンジョン集中発生期前によくある予兆のひとつだ。メカニズムは解明されていないがおおよそ10年に1度起こるこの現象。いずれ魔力だまりは小ダンジョンへと姿を変える。勝手に消滅することも多いが場合によってダンジョンは広がりスタンピードが発生し市民へ牙をむく。
そうなる前にダンジョンはダンジョンコアを破壊し消滅させる。あるいは数は少ないが有用と判断されたダンジョンに限って管理者を置き適度なダンジョンモンスターの適正な間引きを行う。
地方都市スノークの街の郊外で確認された魔力だまりの調査に中堅パーティ〈銀狼の牙〉が抜擢された。冒険者ギルドよりの指名依頼だ。
スノークのギルドより徒歩で4時間ほどの魔力だまりが観測された森へ一行は向かっていた
「たかが魔力だまりの調査に俺らが出向く必要あるのか?たとえダンジョン化してたとしてもまだ低級パーティでいけるだろ」
青いヨロイをまとう剣士のニュートがぼやく。
「なんでも、最初凄え魔力値が観測されたらしいよ。王家のダンジョン並みの魔力値でスノークのギルドを上へ下への大騒ぎになったって。結局一気に魔力値が落ち着いて計器の間違いって事になったらしいけど、大事をとって事らしいっすよ。」
1番若い斥候のヒュッテが得意げに告げた
「それ、誰情報?」
主にヒールを担当する紅一点ユリアーヌが問いかけた
「受付嬢のサフィだよ。帰って来たら今度白ワインの上手い店に飲みに行こうって」
「あんの小娘、こっちが聞いた時は予備情報全くありませんって、すましくりかえって言ってたくせに」
「いいじゃないか、ギルドの指名依頼は実績になる。もし、ダンジョンが発生しているなら討伐すれば小さいがコアが手に入る。計器を混乱させる珍しいモンスターがいるなら、討伐せずにその結果をギルドに報告すればいい。今回の調査はそういうこった。どっちにしてもいい仕事だよ」
ヒュッテの罪のない返しと、ユリアーヌの怒りを混ぜ返すかのように最年長リーダー兼タンクのオーリが穏やかに告げた。このタルのような腹をした男は見た目を裏切って頭脳派なのだ。パーティ名の元になった〈銀狼〉はこの男が若い頃に討伐し、今は彼の肩から下がるマントとなったA級指定の魔物エルダーウルフから来ている。とても賢い狼型の魔物で討伐は頭脳戦になる事が多い。パーティの名前が伊達ではない事を肩の狼が語っているのだ。
一行は昼前には目的地が伺える場所に到着した。魔力だまりは大きな木の陰にあるほら穴が発生源のようだが暗く入口の形状もよく見えない。
ここで斥候ヒュッテの出番である。音も無くほら穴に忍び寄っていく。しばらくして首を傾げながら戻って来た。
「なんか、ドアあるっす。斥候中に完全にダンジョン化しました。大きな気配は3つ、ほとんど移動して無いと思うっす。ただ、ダンジョン化する前になんか掛け声みたいなの聞こえたんすよねー。」
「ドア?掛け声?」
オーリはダンジョン化の所で一度目を見開いたが、続きを促した。
「ドアは王都のお高い菓子屋で見かけるようなゴテゴテしてるような奴で、黒いっす。特に防御魔法や、移転陣の気配は無かったっす。
多分掛け声なんすよ。声は、こうなんか、べったぁってした感じのと、爽やかでキュンってなる感じのと、鬼軍曹みたいな感じだったっす。途中でダンジョン化しちまったんで内容まではわかんなかったっす」
そんなダンジョンは聞いた事がない。
しばらく考えこんだオーリはおもむろに口を開いた
「正面突破だ。ヒュッテとユリアーヌはいつも通り後衛へ。ニュート行くぞ」
生まれたてのダンジョンはモンスターがいてもゴブリン10匹目程がせいぜい。このパーティの敵では無い
気配のある3体のうちどれかはダンジョンマスターだろう。ダンジョンマスターは知性があり会話が出来るとされている。今回はあくまでも調査だ。ダンジョンマスターと話しをして、その内容を持ち帰れば依頼達成となる。マスターが抵抗する様ならばさっくりと討伐してしまえばいい。
「いらっしゃいませ(キラキラ)」
頭脳派オーリの推測はどちらも大きく外れた。扉を開けダンジョンに突入した〈銀狼の牙〉を出迎えたのは王都でもお目にかかったことの無い様な可憐な乙女からの歓迎の言葉だったのだ
ダンジョン集中発生期前によくある予兆のひとつだ。メカニズムは解明されていないがおおよそ10年に1度起こるこの現象。いずれ魔力だまりは小ダンジョンへと姿を変える。勝手に消滅することも多いが場合によってダンジョンは広がりスタンピードが発生し市民へ牙をむく。
そうなる前にダンジョンはダンジョンコアを破壊し消滅させる。あるいは数は少ないが有用と判断されたダンジョンに限って管理者を置き適度なダンジョンモンスターの適正な間引きを行う。
地方都市スノークの街の郊外で確認された魔力だまりの調査に中堅パーティ〈銀狼の牙〉が抜擢された。冒険者ギルドよりの指名依頼だ。
スノークのギルドより徒歩で4時間ほどの魔力だまりが観測された森へ一行は向かっていた
「たかが魔力だまりの調査に俺らが出向く必要あるのか?たとえダンジョン化してたとしてもまだ低級パーティでいけるだろ」
青いヨロイをまとう剣士のニュートがぼやく。
「なんでも、最初凄え魔力値が観測されたらしいよ。王家のダンジョン並みの魔力値でスノークのギルドを上へ下への大騒ぎになったって。結局一気に魔力値が落ち着いて計器の間違いって事になったらしいけど、大事をとって事らしいっすよ。」
1番若い斥候のヒュッテが得意げに告げた
「それ、誰情報?」
主にヒールを担当する紅一点ユリアーヌが問いかけた
「受付嬢のサフィだよ。帰って来たら今度白ワインの上手い店に飲みに行こうって」
「あんの小娘、こっちが聞いた時は予備情報全くありませんって、すましくりかえって言ってたくせに」
「いいじゃないか、ギルドの指名依頼は実績になる。もし、ダンジョンが発生しているなら討伐すれば小さいがコアが手に入る。計器を混乱させる珍しいモンスターがいるなら、討伐せずにその結果をギルドに報告すればいい。今回の調査はそういうこった。どっちにしてもいい仕事だよ」
ヒュッテの罪のない返しと、ユリアーヌの怒りを混ぜ返すかのように最年長リーダー兼タンクのオーリが穏やかに告げた。このタルのような腹をした男は見た目を裏切って頭脳派なのだ。パーティ名の元になった〈銀狼〉はこの男が若い頃に討伐し、今は彼の肩から下がるマントとなったA級指定の魔物エルダーウルフから来ている。とても賢い狼型の魔物で討伐は頭脳戦になる事が多い。パーティの名前が伊達ではない事を肩の狼が語っているのだ。
一行は昼前には目的地が伺える場所に到着した。魔力だまりは大きな木の陰にあるほら穴が発生源のようだが暗く入口の形状もよく見えない。
ここで斥候ヒュッテの出番である。音も無くほら穴に忍び寄っていく。しばらくして首を傾げながら戻って来た。
「なんか、ドアあるっす。斥候中に完全にダンジョン化しました。大きな気配は3つ、ほとんど移動して無いと思うっす。ただ、ダンジョン化する前になんか掛け声みたいなの聞こえたんすよねー。」
「ドア?掛け声?」
オーリはダンジョン化の所で一度目を見開いたが、続きを促した。
「ドアは王都のお高い菓子屋で見かけるようなゴテゴテしてるような奴で、黒いっす。特に防御魔法や、移転陣の気配は無かったっす。
多分掛け声なんすよ。声は、こうなんか、べったぁってした感じのと、爽やかでキュンってなる感じのと、鬼軍曹みたいな感じだったっす。途中でダンジョン化しちまったんで内容まではわかんなかったっす」
そんなダンジョンは聞いた事がない。
しばらく考えこんだオーリはおもむろに口を開いた
「正面突破だ。ヒュッテとユリアーヌはいつも通り後衛へ。ニュート行くぞ」
生まれたてのダンジョンはモンスターがいてもゴブリン10匹目程がせいぜい。このパーティの敵では無い
気配のある3体のうちどれかはダンジョンマスターだろう。ダンジョンマスターは知性があり会話が出来るとされている。今回はあくまでも調査だ。ダンジョンマスターと話しをして、その内容を持ち帰れば依頼達成となる。マスターが抵抗する様ならばさっくりと討伐してしまえばいい。
「いらっしゃいませ(キラキラ)」
頭脳派オーリの推測はどちらも大きく外れた。扉を開けダンジョンに突入した〈銀狼の牙〉を出迎えたのは王都でもお目にかかったことの無い様な可憐な乙女からの歓迎の言葉だったのだ
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