女子だけどダンジョンマスターやってます

ストロボフェア

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12 お客様第1号

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「んで、なんの商いをしてる店なんだ?」

タルの容赦ないつっこみにとっさにミカリはテーブルの上に広げてたままの化粧品を指して言った。

「あちらの様な化粧水、乳液、様々な女性向け商品を取り扱う、女性をうちと外から光り輝かせる為のショップでございます、お客様。」

ショップを開店しといて何を売るか決めてないとかバレたら恥ずかし過ぎると焦ったミカリがなんとかひねり出した答えに自我自賛した次の瞬間、

「こんな人里離れた場所にか?」

タルの容赦無い質問が返ってきた。立地なぞ知らん。誘拐されてから一度も外に出ていないし。ショップの立地は本社のお偉いさんがリサーチと会議に金と時間をかけて決めるもんだ。
今度こそミカリが言い返せないでいると、

「「ひでぶっ」」

タルと青いガチムチがふっとんで行った。人間って真横に飛ぶんだね。壁に直撃してめっちゃ痛そうだよ。足が変な方向に曲がっていないか?。血はちゃんと吹いて帰ってくれるのかな?



「買います」

シルバーの髪に紫色のローブを羽織ったお姉さんが目の前にいた。目がなんかマジだし。えぇ、この人、細い腕で今、後ろからおっさん2人まとめて吹っ飛ばしたよね?どんって重いいい音したよね?ツレじゃないのかな?内輪もめは外でやってよね。混乱を極める頭とは別にミカリの口は、

「はぁい、ありがとうございます。どういった物お探しですかぁ?ざっくりイメージとかありますぅ?」
ユリアーヌを猫足の椅子に誘導しながら、完全に接客モードにシフトしていた。

そんなミカリの頭の片隅でこんなアナウンスが流れていた
〈侵入者2名負傷、HP20145p分のDPがダンジョンに入ります〉




ーーとあるヒーラーの話

中堅パーティ〈銀狼の牙〉の紅一点ユリアーヌはかなりイライラしていた。

ユリアーヌは高名な魔法使いを多く輩出するスワン公爵の流れを組む一族に生まれた。

幼少の頃より治癒魔法に優れ、魔法学校を優秀な成績で卒業した。その後、今の〈銀狼の牙〉の前に2つのパーティで経験を積んだ。

治癒系以外にいくつかの支援魔法や攻撃魔法を使える魔法使いとして〈銀狼の牙〉では充実した毎日を送っていると思う。


ただ、最近ギルドの受付嬢になったサフィという若い女の態度が気にくわない。

斥候のヒュッテに懸想してあまり相手にされないものだから、同じパーティの唯一の女性であるユリアーヌにチョイチョイ嫌がらせを仕掛けてくるのだ。
陰でユリアーヌの事をババァ呼ばわりしているのは前から知っているし、こないだなど「最近流行りのお店なんておばさんにはわかりませんよね」チラッチラッなどと〈銀狼の牙〉一同がカウンターの前に揃う中でかましてきたりするのだ!

8つも下のヒュッテにそんな気持ちはさらさらないが、腹が立つものは立つのだ。
確かに私はあんたより10以上上でお肌もプリプリじゃないし、クマだって最近気になる!お前の様に親の金で買った蜂蜜パックを毎日したりもしていない。
金があるならば装備につぎ込んだ。私は納得してこの人生を歩いている!もう十年程〈銀狼の牙〉で仕事をしたら冒険者を辞め、装備を売り払い魔法薬でも商ってゆっくり暮らすのだ。誰にも迷惑などかけていない!
それに小娘め、お前だって老いる時がくるのだ!



そんなある日、いつも通り依頼をこなす最中に私の秘めた願望を解き放つ言葉が飛び込んで来たのだ

「ーーーー女性をうちと外から光り輝かせる為のショップでございます、お客様。」

「買います!」
私はそう言って前に進み出て店主と向かいあった。

何か障害物を突き飛ばした様な気もするし、それがパーティメンバーだった様な気もする、更に今まで見た事も無いような身体強化魔法が発動した様な気もするが本当にどうでもよかった。

私は今まで歩いて来た様な堅実で真面目な魔法使いとしてでは無く、ひとりの女性として光り輝く自分を愛してあげたかってのだ!
あんな小娘の若さに嫉妬する自分が心底悔しかったのだ!
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