女子だけどダンジョンマスターやってます

ストロボフェア

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番外編3 フレアのある休日3

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監禁生活も20日を超えたころ竜騎士の本署に魔術師ギルドのローズが訪ねてきた。
私の自宅の捜査隊に魔術師として参加させられて、私がここにいる経緯も把握しているらしい。
しかもあのミカリから託されたという荷物と共に。

荷物はベッドカバーだった。なんとゴブのお手製らしい。
ベッドカバーは良家の娘が花嫁修行の一環として制作し、婚家に持参するものだ。
下町生まれ育った私はこんな綺麗な刺繍糸に触れたことすらないが。

ベッドカバーは赤やらピンクやらの派手な花が一面に咲き乱れ、その中にいくつもの小さなベヒモスが覗いている。
伝統的スタイルに見せかけて厄災をつっこんでくるとは新婚カップルにどんな未来をこめているのだ。
まあ、私は独身だし関係ない、竜騎士本署のベッドルームは殺風景だ。焼き菓子だの紅茶だのがつまった箱もあった。両方ともありがたくちょうだいしよう。


ローズはひとしきり自分のシャンデリアにあう壁紙について熱く語って帰っていった。
シャンデリアのローンが終わってまたあのダンジョンで何か購入しようと考えているらしい。

その夜は何故だかドラゴン達の「ルールー」という声が聞こえなかった。

外をうかがおうにも窓は開けないように言われているので、部屋の中でできる鍛錬を終えベッドに入ろうとした所だった

ドッカーン

すごい音がして窓をふりかえると、そこには窓はなく、窓のあった壁から一頭のドラゴンが顔をのぞかせていた。オレンジ色の大きなドラゴンだ。こいつが勝ち残った個体だろう

「ルールー」
何か咥えている。あれはレッドスターだろうか?火山帯に咲く赤い花。

「ありがとう、私にくれるのか」

「ルールー」

ドラゴンの思いに応えることはできないが、せっかく摘んできてくれたのだ。花くらい受け取ってもいいだろう。

星型の赤い花を受け取り、鼻づらをなでてやる。
「ルールールールールー」壁を破壊したドラゴンはうれしそうに目を細めた

「フレア、大丈夫ですか!?」

エルがノックもせずに飛び込んできた。まあ、ドアを突き破るよりはお行儀がいいだろう。

「ああ、受け取ってしまった」

ああ、この花か?エルも欲しかったのか?

「あなたと、そのドラゴンの間に契約がなされた」

がっくりと肩をおとしたエルは、悪い予感はしていたのです。あなたの友人の魔術師が契約の印の布を持ち込んだ時から、、とブツブツと言い始めた。
その間もドラゴンはご機嫌そうに鼻を私におしつけてくる

「とりあえず、お前はねどこにかえれ。ここは人が寝る場所だ」

「グルッ」

ドラゴンは返事をして夜空へと飛び出していった。

完全に気の抜けたエルを続き間の応接室のソファに座らせて話を聞いた。部屋の下では竜騎士たちがドラゴンの空けた穴に気づいたのだろう、少し騒がしくなった。

「あなたがドラゴンの供物を、契約の布の前で受け取った。それであなたとあのドラゴンの契約が成立しました」

「供物?ただの花だぞ?それに契約の布など知らぬ」

「ドラゴンがルールーと声を発し、竜騎士候補生が同意を示す。
花を受け取ったことで同意が得られたと考えて良いでしょう。

契約の布は汚れを知らぬ乙女が祈りを込めて刺繍を施し、その後強い魔力で、通常は司祭が施しますが、契約の完全な締結の加護を込めた布のことです。
貴族が娘の嫁入りに家と家との結びつきを完全なものにすべく持たせるような物です。

ええ、あなたのベッドに敷いてあるような強力な契約の布はお目にかかったことがありませんが。
いにしえの誓約の通り条件がそろい契約は成立しました

あのドラゴンは外まで漏れた契約の布の気配を察して、フレアが布の前に出るタイミングをずっとはかっていたのでしょう。
そして壁を壊した。

、、、私にはその思い切りがたりなかった」



あれよあれよという間に私はこの国の竜騎士となった。

もちろん竜騎士としての訓練は積んでいないただの冒険者だ。

こうなってしまった以上一国民としてドラゴンと共に魔物と戦うことに異存はない。

国王陛下の叙勲もうけることになった
ふらふらとドラゴンを連れて他国にいかれてはたまらないとのことだろう

陛下の御前で拝謁した際、小さな声で
「そなた、ミュケー公も共に貰い受けてくれてもよいのだぞ」
と耳打ちされた。
ミュケー公?エルのことか?これ以上首に鈴はいらぬぞ。
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