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011、漣白人先輩という人
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部室の静けさを破るように、目々澤部長が椅子を引く音が響いた。
私たちは全員、自然とその視線の先に吸い寄せられる。
「……白人、蓮華寺」
低く響くその声が、まるで空気そのものに圧力をかけたように感じられた。部長の口調に込められた何かを感じ取ったのか、白人は背もたれに寄りかかっていた身体を少し前に倒す。蓮華寺先輩も眼鏡を押し上げ、いつになく真剣な表情をしている。
「灰崎有理須の力は、これからこの部にとって不可欠になっていく。灰崎が俺たちに与える力について、まだ理解していないことばかりだが、魔法少年としての俺たちを支える力があることは確かだ。……だからこそ、お前たちにも協力してもらいたい。」
「協力……って?」
白人が先に口を開く。わざとらしく首を傾げながらも、その声には少しだけ警戒心がにじんでいた。
「わかっているだろう。灰崎とセックスしろ」
部長の直球の発言に、部室の温度が一瞬下がったように感じた。いや、それはたぶん私だけじゃない。蓮華寺先輩が微かに眉をひそめ、白人先輩は驚きと戸惑いが入り混じった顔を一瞬だけ見せた後、いつもの軽い調子で口を開いた。
「いやいや、待ってよ、部長。そりゃ部長が有理須ちゃんとして力を得たのは知ってるけど、だからと言って強制されることじゃないでしょ……セックスってのは」
白人先輩は苦笑しながら肩をすくめてみせたが、その視線がわずかに揺れているのを私は見逃さなかった。
「漣」
部長の一喝が白人先輩の笑みを消した。部長の目が白人を射抜くように真っ直ぐ向けられる。
「俺たちの戦いは日々厳しくなっている。怪物の動きが変わり始めた以上、俺たちも力を高めなければならない。俺と茶山の2人が力を増幅しただけでは、すぐに限界が来る」
蓮華寺先輩がそこでゆっくりと口を開いた。
「青慈の言っていることはわかるよ。でも……灰崎さん自身の意思も確認するべきだろう?」
その言葉に、部長の視線が蓮華寺先輩へと移る。短い沈黙が流れた後、部長は深く頷いた。
「当たり前だ。だが、灰崎がどう答えるにせよ、お前たちには協力する心積もりをしておいてもらう必要がある。それが魔法少年としての責任だ」
白人先輩はため息をついてソファにもたれ直した。
「責任、ねえ……分かってるってば。ただ、ほら、こういうのってもっと……自然な流れとか、タイミングとかさ、大事だと思うわけよ」
彼はいつもの軽い笑みを浮かべたが、その裏に何か含むものがあるように見えた。
笑顔の裏で、白人先輩の瞳には陰りがあるようにも見える。それは、責任を負うことへの重圧なのか、あるいは……恐れなのか。
恐れ?白人先輩が、何を恐れるんだろう。
「無理矢理するなんてことはできないし、オレはやっぱり有理須ちゃんとデートとかして、いいムードを作ってからさあ……」
「わかったから、一度黙れ」
部長はそう言うと、小さくため息をつく。蓮華寺先輩は真面目な表情のまま、小さく息をついている。
白人先輩の言葉は、いつも通りのチャラチャラしたものに聞こえる。でも、私には白人先輩は、どこか無理をしているように見えた。
――私との行為を、避けているようだ。
私のこと、嫌なのかな。誰からも好かれる美少女でないのはわかっている、けれど。そういう態度を取られると、少し傷ついてしまう。
「灰崎」
目々澤部長が私の名前を呼ぶ。厳しいけれど、部長の言葉は、優しい。
私が彼らとしなければならない行為のことを、きちんとわかっているのだ。
「あの時、ほかの部員と性行為をすることを踏まえて、それでもお前はマネージャーを続けることを決意した。しかし、だからと言って必ずこいつらとしろ、なんてことは言わない。ただ、お前の力を借りたい。頼めるか」
真剣な目つき。
目々澤部長のだらしない見た目と、その真摯な眼差しのギャップに、いつもドキドキしてしまう。
白人先輩と、蓮華寺先輩のほうを見る。そして累を。
みんな、真剣なんだ。
「はい、みなさんが、よければ――」
そう私が言うと、目々澤部長はほっとした様子で椅子に座る。
「タイミングはお前たちに任せる。しかし、あまりグズグズはするなよ」
蓮華寺先輩は、その言葉に少し顔を赤らめてうつむいてしまう。穏やかな先輩の、女慣れ指定なさそうな態度が微笑ましくて、なんだかキュンとしてしまう。
一方の白人先輩は、パイプ椅子に腰かけ足を組んだまま前髪を弄っている。なんだか落ち着かない様子だ。
インフルエンサーで、モデル。
白人先輩は気者だ。学園ではいつも人に囲まれていて、教えてもらったInstagramの画面の中の白人先輩は楽しそうで、キラキラ輝いて見える。女の子にだって、モテているに違いない。
彼女だっているかもしれない。というか、こんなにカッコよくてかわいい先輩に、彼女がいないわけがないだろう。
……これまでに、いろんな人と、えっちしてきたのかな。
……ほかの人と比べられたりしたら、ちょっと嫌だな。
……やっぱり、私みたいな普通の子じゃ、白人先輩は嫌なのかな。
……いや、私が白人先輩としたい、ってことじゃなくて。えっと……。
そんなことを考えながら白人先輩を見つめていると、先輩がこちらを向く。目が合うと、白人先輩の顔が一気に赤くなる。
バン、と白人先輩が長机を叩く。
「あー!オレ今日撮影あるの忘れてた。部長、すみません。また明日!」
白人先輩はそう言うと、慌てて部室を出て行ってしまった。
部室を出ていった白人先輩の背中を、私たちはぽかんと見つめていた。
「……なんだアイツ」
部長の言葉を聞きながら、私は胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚を覚えていた。
私を避けた……、いや。逃げた……?
白人先輩のいつもの軽い態度と、どこか違う今日の態度。
何か引っかかるものがある。心の中がちくちくする。彼の笑顔の裏にあるものが、私にはどうしても分からなかった。
私は居ても立ってもいられなくて、立ち上がった。
「すみません、私も行きます!」
私は部室を出て、白人先輩の後を追った。
撮影なんて、嘘に決まってる。
白人先輩と話がしたかった。
私たちは全員、自然とその視線の先に吸い寄せられる。
「……白人、蓮華寺」
低く響くその声が、まるで空気そのものに圧力をかけたように感じられた。部長の口調に込められた何かを感じ取ったのか、白人は背もたれに寄りかかっていた身体を少し前に倒す。蓮華寺先輩も眼鏡を押し上げ、いつになく真剣な表情をしている。
「灰崎有理須の力は、これからこの部にとって不可欠になっていく。灰崎が俺たちに与える力について、まだ理解していないことばかりだが、魔法少年としての俺たちを支える力があることは確かだ。……だからこそ、お前たちにも協力してもらいたい。」
「協力……って?」
白人が先に口を開く。わざとらしく首を傾げながらも、その声には少しだけ警戒心がにじんでいた。
「わかっているだろう。灰崎とセックスしろ」
部長の直球の発言に、部室の温度が一瞬下がったように感じた。いや、それはたぶん私だけじゃない。蓮華寺先輩が微かに眉をひそめ、白人先輩は驚きと戸惑いが入り混じった顔を一瞬だけ見せた後、いつもの軽い調子で口を開いた。
「いやいや、待ってよ、部長。そりゃ部長が有理須ちゃんとして力を得たのは知ってるけど、だからと言って強制されることじゃないでしょ……セックスってのは」
白人先輩は苦笑しながら肩をすくめてみせたが、その視線がわずかに揺れているのを私は見逃さなかった。
「漣」
部長の一喝が白人先輩の笑みを消した。部長の目が白人を射抜くように真っ直ぐ向けられる。
「俺たちの戦いは日々厳しくなっている。怪物の動きが変わり始めた以上、俺たちも力を高めなければならない。俺と茶山の2人が力を増幅しただけでは、すぐに限界が来る」
蓮華寺先輩がそこでゆっくりと口を開いた。
「青慈の言っていることはわかるよ。でも……灰崎さん自身の意思も確認するべきだろう?」
その言葉に、部長の視線が蓮華寺先輩へと移る。短い沈黙が流れた後、部長は深く頷いた。
「当たり前だ。だが、灰崎がどう答えるにせよ、お前たちには協力する心積もりをしておいてもらう必要がある。それが魔法少年としての責任だ」
白人先輩はため息をついてソファにもたれ直した。
「責任、ねえ……分かってるってば。ただ、ほら、こういうのってもっと……自然な流れとか、タイミングとかさ、大事だと思うわけよ」
彼はいつもの軽い笑みを浮かべたが、その裏に何か含むものがあるように見えた。
笑顔の裏で、白人先輩の瞳には陰りがあるようにも見える。それは、責任を負うことへの重圧なのか、あるいは……恐れなのか。
恐れ?白人先輩が、何を恐れるんだろう。
「無理矢理するなんてことはできないし、オレはやっぱり有理須ちゃんとデートとかして、いいムードを作ってからさあ……」
「わかったから、一度黙れ」
部長はそう言うと、小さくため息をつく。蓮華寺先輩は真面目な表情のまま、小さく息をついている。
白人先輩の言葉は、いつも通りのチャラチャラしたものに聞こえる。でも、私には白人先輩は、どこか無理をしているように見えた。
――私との行為を、避けているようだ。
私のこと、嫌なのかな。誰からも好かれる美少女でないのはわかっている、けれど。そういう態度を取られると、少し傷ついてしまう。
「灰崎」
目々澤部長が私の名前を呼ぶ。厳しいけれど、部長の言葉は、優しい。
私が彼らとしなければならない行為のことを、きちんとわかっているのだ。
「あの時、ほかの部員と性行為をすることを踏まえて、それでもお前はマネージャーを続けることを決意した。しかし、だからと言って必ずこいつらとしろ、なんてことは言わない。ただ、お前の力を借りたい。頼めるか」
真剣な目つき。
目々澤部長のだらしない見た目と、その真摯な眼差しのギャップに、いつもドキドキしてしまう。
白人先輩と、蓮華寺先輩のほうを見る。そして累を。
みんな、真剣なんだ。
「はい、みなさんが、よければ――」
そう私が言うと、目々澤部長はほっとした様子で椅子に座る。
「タイミングはお前たちに任せる。しかし、あまりグズグズはするなよ」
蓮華寺先輩は、その言葉に少し顔を赤らめてうつむいてしまう。穏やかな先輩の、女慣れ指定なさそうな態度が微笑ましくて、なんだかキュンとしてしまう。
一方の白人先輩は、パイプ椅子に腰かけ足を組んだまま前髪を弄っている。なんだか落ち着かない様子だ。
インフルエンサーで、モデル。
白人先輩は気者だ。学園ではいつも人に囲まれていて、教えてもらったInstagramの画面の中の白人先輩は楽しそうで、キラキラ輝いて見える。女の子にだって、モテているに違いない。
彼女だっているかもしれない。というか、こんなにカッコよくてかわいい先輩に、彼女がいないわけがないだろう。
……これまでに、いろんな人と、えっちしてきたのかな。
……ほかの人と比べられたりしたら、ちょっと嫌だな。
……やっぱり、私みたいな普通の子じゃ、白人先輩は嫌なのかな。
……いや、私が白人先輩としたい、ってことじゃなくて。えっと……。
そんなことを考えながら白人先輩を見つめていると、先輩がこちらを向く。目が合うと、白人先輩の顔が一気に赤くなる。
バン、と白人先輩が長机を叩く。
「あー!オレ今日撮影あるの忘れてた。部長、すみません。また明日!」
白人先輩はそう言うと、慌てて部室を出て行ってしまった。
部室を出ていった白人先輩の背中を、私たちはぽかんと見つめていた。
「……なんだアイツ」
部長の言葉を聞きながら、私は胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚を覚えていた。
私を避けた……、いや。逃げた……?
白人先輩のいつもの軽い態度と、どこか違う今日の態度。
何か引っかかるものがある。心の中がちくちくする。彼の笑顔の裏にあるものが、私にはどうしても分からなかった。
私は居ても立ってもいられなくて、立ち上がった。
「すみません、私も行きます!」
私は部室を出て、白人先輩の後を追った。
撮影なんて、嘘に決まってる。
白人先輩と話がしたかった。
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