1年の恋

選道美世

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2学期 3−2

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私たち1年生の教室は旧校舎にある。旧校舎は新校舎と同じ敷地にあるが、裏門から入ったほうが近い。裏門は道を1本、中に入った道をまっすぐ進むと見えてくる。2,3年生の教室は新校舎だ。ほとんどの生徒が正門に繋がる道を使う。そのため、裏門へ行く道はさほど混雑していない。逆に正門へ向かう道は生徒でギュウギュウになる。私たちはギュウギュウにならずに済み、教室の校舎も近い裏門へ繋がる道を歩く。人が減り少し開放的になったが、気不味さは続いていた。
「そういえば、今日の小テスト大丈夫そう?勉強した?」
 気不味さをかき消すかのように話しかけてくる。
「小テスト?⋯小テストなんてあったっけ?」
「うん。ほら、数学の⋯いつもしてるやつじゃなくて⋯」
「あー。なんか言ってた気もする⋯。勉強してないけど⋯」
「とか言って、そういう人に限ってめっちゃ勉強してたりするじゃん。」
「いや、小テストあることすら覚えてないのに、どうやって勉強するの?」
 よくあるパターンの会話だ。そもそも、勉強してるのにしてないって嘘つく意味がわからない。
「だって、いつも点数いいじゃん。」
「私のテストの点数知ってるの?」
 私は彼にテストの点数なんて見せたことない。知らないはずなのに決めつけで物を言う彼を薄目で睨めつける。彼は、それに少し怯んで応える。
「いや、知らないけど、なんとなく⋯。ほら、鶴川とか仁香とかがよく言ってるし⋯。」
「テストの点数を?」
 彼は若菜と同じソフトテニス部だ。若菜とはテストの結果を見せあったり、報告しあったりする。しかし、若菜がわざわざ、彼にテストの点数を言うとは思えない。今度はしっかりと目を開いて、射貫くように視線を送る。
「そうじゃなくて、賢いとか、頭が良いとか。あと、テスト返却のとき点数を言い合ってるのが聞こえる時があって⋯。」
 女子同士の賢いとか、可愛いとかそういった褒め言葉は日常で使われるお世辞だ。それだけだったら、お世辞を言いあってるだけと言えたが⋯。友達同士で点数を教えあう時に聞かれていたとは⋯。そんなにいい点数ではないのに恥ずかしすぎる。
「あー、そうなんだ。それで言うなら、グレコも頭いいじゃん。いつも上位に入ってるし⋯。」
 私たちのクラスでは各科目、上位10名はニックネームで発表される。そのニックネームはみんなにはわからないように自分自身で作る。だから誰かわかりやすいものもあれば、わかりにくいものもある。グレコのニックネームはそのままで「グレコ」だった。よくグレコは上位10名に入っている。
「別にそんなことないよ。」
「グレコは?勉強した?」
「うん。まあ、一応ね。」
「テスト範囲ってどこだっけ?」
「今やってる単元全部。」
「なるほど⋯。まあ、どうにかなるでしょ。」
「意外と適当なんだね。」
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