恋人が天使すぎて大変です

嫉妬 １

　僕は春樹を見ていた。
　彰の体調が良くなり学校に戻ってきてから、春樹はずっと彰の側にいる。いつもなら私の隣にいるのに。もう一週　間もこの調子だ
　休み時間になると、春樹は彰の席に駆け寄って行く。
「彰～、体調は本当に大丈夫？まだ咳とか出ない？」
　春樹が彰の肩に手を置く。普段なら僕にしかしないスキンシップを、彰にしている。
　私は自分の机の下で、手を強く握った。
「もう大丈夫だって。それより春樹、お前昨日優と何してたんだ？」
「え～、優とね、一緒に帰って、一緒にコンビニ行って、一緒におにぎり食べたの～。優のおにぎりの食べ方が可愛くてね～。小さい口でちょっとずつ食べるんだよ～。」
「はいはい⋯⋯。」
「それでね、優が『おいしい』って言ってくれたの～。すっごく可愛かった～。」
　春樹は彰に向かって僕の話をしている。いつもなら僕に直接言ってくれるのに。
　手を握る力がさらに強くなった。
　昼休み。
「彰～、一緒にお昼食べよう～。」
　春樹が彰の腕を引っ張る。僕はお弁当を開けながら、二人を横目で見た。
「優も一緒に食べよ～。」
「⋯⋯いい。」
　僕はそっけなく答えた。
　春樹と彰は机を向かい合わせにして座る。僕は一人で窓際の自分の席でお弁当を食べた。
「え～、優、どうしたんだろう。そうそう、優がね、この前すっごく可愛いことしたんだよ～。」
　春樹の声が聞こえてくる。また僕の話をしている。
「猫を見つけてね、じーっと見てるの。で、猫が『にゃー』って鳴いたら、優も小さく『にゃー』って真似したんだよ～。もう可愛すぎて死ぬかと思った～。」
「お前が死んだら優が困るだろ⋯⋯。」
「あ、そうか～。優のために生きなきゃ～。」
　いつもなら嬉しい話のはずなのに、今は違う。春樹が彰に僕のことを話している。彰と楽しそうに笑い合っている。
　僕はお箸を持つ手に力を込めた。