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親友
しおりを挟む彰が風邪から回復し、一週間ぶりに学校に戻ってきた日のことだった。
「彰~!おかえり~!」
春樹は教室に入ってきた彰を見るなり、満面の笑みで駆け寄った。
「おお、春樹⋯⋯久しぶり。」
「体調はもう大丈夫?熱は?咳は?鼻水は?食欲は?」
「落ち着けよ⋯⋯もう大丈夫だから。」
優は自分の席で、いつものように無表情で二人を見ていた。
「そっか~、よかった~。心配したんだよ~。」
春樹は彰の周りをうろうろしながら話し続ける。
「一人で大丈夫だった?お母さんはちゃんと看病してくれた?薬は飲んでた?」
「春樹、お前うざい⋯⋯。」
「え~、でも久しぶりなんだもん。話したいことがいっぱいあるんだよ~。」
優が立ち上がり、二人の方に歩いてきた。
「おっ、優も心配してたんだよね~。優も久しぶりに彰に会えて嬉しいよね?」
春樹が嬉しそうに優を見る。
「別に⋯⋯。」
優はそっけなく答えた。
彰は苦笑いを浮かべる。
「相変わらずだな、優は。」
「でも本当は心配してたんだよ~。ね、優?」
春樹が優の肩に手を置こうとした瞬間、優がさっと避けた。
「⋯⋯席、戻る。」
優は振り返ることなく自分の席に戻っていく。
「あれ?優、どうしたのかな?」
「お前が俺にばっかり構ってたからじゃないか?」
「え~、そうかな?でも久しぶりだから⋯⋯。」
彰は優の後ろ姿を見た。いつもより少し肩が下がっているような気がした。優なりに、拗ねているのかもしれない。
「春樹、お前たまには優の気持ちも考えろよ。」
「え~、でも優は大丈夫だよ。優は優しいから。」
「だからって甘えすぎるなよ。」
春樹は優の席に向かって歩いていく。優は窓の外を見つめたまま、春樹の方を見ようとしない。
「優~、機嫌悪い?」
「⋯⋯別に。」
「本当?」
「⋯⋯。」
優は無言で春樹を見上げた。その瞳には、いつもより少し寂しさが宿っているように見えた。
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