恋人が天使すぎて大変です

選道美世

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見舞い 2

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 優が彰の枕元に歩み寄り、小さな声で言った。
「⋯⋯お大事に。」
 その瞬間、春樹が優に抱きついた。
「うわ~、優が気遣ってる~。可愛すぎる~。」
「おい、病室でイチャイチャすんな⋯⋯。」
 彰は溜息をついた。風邪で辛いのに、この二人のせいでさらに疲れてしまいそうだった。
「お前、ただ惚気に来ただけだろう。」
「そんなわけないじゃん。ちゃんと、お見舞い兼看病しに来たんだよ。」
「なら、惚気けんな。」
「だって~、今日1日惚気ける相手いなくて溜まってるんだもん。」
「はあ......」
 彰は。また呆れてため息をついた。春樹は彰の横に腰を下ろし、勝手にタオルを替えたり水を汲んできたりと大忙し。だが、その度に優に「持ってて」「これお願い」と用事を振る。優は無言で従うが、仕草がどれも妙に丁寧で、春樹のグラスを持つ指先はやけに優しかった。

「ほら~、優って本当に天使なんだよ。無表情なのに、ちゃんと気遣ってくれるんだ~」
「……お前、俺の看病に来たんだよな?」
「もちろんだよ! でも優がいてくれるから、俺まで元気出ちゃうんだよね~」
「元気出すのは俺だろ……」

 彰は布団の中でげんなりする。熱でふらふらしながらも、目の前で繰り広げられる春樹の“天使語り”が一番体力を奪っている気がした。

「優、はい、これお粥できたよ。……あ、あ~んしてあげよっか?」
「……」
 優はスプーンを受け取り、当然のように春樹の口に持っていった。
「えっ、俺!? あ~ん?」
「……ん」
 短い返事。春樹は顔を真っ赤にしてぱくりと食べる。
「ん~~~! 優にあ~んされるなんて幸せすぎる~!」
「……帰れ」
 布団の中から呻くような彰の声がした。

 結局、春樹は終始優に構ってもらって上機嫌、優はぶっきらぼうなまま付き合い、彰は自分の部屋で恋人同士のノロケを延々聞かされる羽目になった。

「……俺の看病って、何だったんだろうな」
 その独り言だけが、部屋に虚しく響いていた。

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