恋人が天使すぎて大変です

選道美世

文字の大きさ
13 / 15

不安 2

しおりを挟む
 春樹が顔を上げる。
「でもね、たぶん⋯⋯いや、絶対、優は俺のことが好きだと思う。」
 急に春樹の顔が明るくなった。
「だって、優は俺にだけ話してくれるし、俺の袖を掴んでくれるし、たまに俺を見つめてくれるし⋯⋯。」
 あ、惚気モード入った。
「あの無表情の中にも、ちゃんと優の気持ちが込められてるんだよ。俺にはわかるんだ。」
「⋯⋯さっき不安だって言ってなかったか?」
「うん、不安だけど、でも好きなのは確実だよ。だって優は⋯⋯。」
「はいはい、わかったわかった。」
 俺は春樹の話を遮った。これ以上聞いてたら、また延々と惚気を聞かされる。
「春樹、今日優が怒ってた理由、分かっただろ?」
「⋯⋯うん。優、嫉妬してたんだよね⋯⋯。」
「そうだよ。お前が俺にばっかり構ってたから。」
「でも⋯⋯彰が心配だったし⋯⋯。」
「それは分かるけど、優の気持ちも考えろよ。」
 春樹が黙り込む。
「お前、優の反応が小さくて不安なんだろ?でも、今日の優は分かりやすかっただろ。あれが優なりの『寂しい』って気持ちだったんだよ。」
「⋯⋯そっか。」
「明日、ちゃんと話し合えよ。優の気持ちを聞いて、お前の気持ちも伝えて。」
「⋯⋯うん。」
 春樹が立ち上がった。
「彰⋯⋯ありがとう。」
「別に。それより早く帰れよ。明日に備えて、ちゃんと頭整理しとけ。」
「うん⋯⋯。」
 春樹がカバンを持って、教室を出ていく。その後ろ姿は、いつもより少し頼りなく見えた。
 俺も荷物をまとめながら、溜息をついた。
 さんざん春樹の不安と惚気を聞かされて、正直疲れた。
 でも⋯⋯あいつらなら、大丈夫だろう。
 明日には、またいつものイチャイチャに戻ってるに違いない。
 そして俺は、またあいつらのイチャイチャを見せつけられるんだろうな⋯⋯。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

メグエム
BL
 伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。

最後の夏休み

AI先生
BL
幼い頃から一緒だった2人 学生最後の夏休み いつもの日常のはずだった…

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

処理中です...