悪役令嬢は言いたい

はじめまして！ 再び

「はじめまして！うわぁー、やっぱりすごく素敵！私ずっと、ずーーっとハリス様にお会いできる日を楽しみに、勉強も、魔法も剣技も、死ぬほど頑張って来ました！だから必ずハリス様のお役にたって見せます！」

「……。」

　友人のミアと2人、今日は良いお天気でしたので、昼食を中庭でいただこうと廊下を歩いていると…10日ほど前に聞いた覚えのある声とセリフが聞こえてきました。
そちらを見ると、あの時の少女がやはり大きな瞳を見開き、拳を振り回して騎士団長のご子息であられるハリス・グラッセン様に勢いよく話しかけてらっしゃいました。

「いや、君がぶつかって来た時に、思いっきり鼻打ってただろう？鼻、赤いが大丈夫なのか？」

　ぶつかって来たと言う事は、どうやら、彼女はまたフラフラしていた様です。グラッセン様のあのご様子ですと初対面、お名前呼びは不適切です。グラッセン様のご婚約者のアリア様もここにはおられませんので、ここは高位貴族であるわたくしが、お話しをうかがい注意させていただきましょう。先日少しお調べした所、彼女は今は貴族でいらっしゃる事は分かりましたので。
お鼻の心配をしてくださったのが嬉しかったのか、何やらクネクネニヤニヤしてますが…

「貴方は、」

「ぐぅえっっ」
「バカ女が失礼した様で申し訳ございませんでした。お目汚し？かと思いますので回収させて頂きます。」

　私が言葉を発すると同時に、またしても何処からともなく現れた黒髪琥珀色の瞳をした少年が、彼女の首の後ろの襟を掴んで連れ去ってしまいました。
彼女は無抵抗でしたけど…大丈夫でしょうか？鼻血出しながらもニヤニヤしてたから大丈夫ですね…

「何だったんだ？」
「何なの、あれ？」

グラッセン様もミアも呆気に取られ呟きます。

「何なんでしょうねぇ…」