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男同士の時間※ロベルト視点
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キャサリン達が支度の為に出ていきサロンには男ばかり残った。
カインが黙って部屋内部に空間切断魔法を施した。これでここで話す事、起こる事が外に漏れる事は無くなる。
「ロベルト、絶望の書なのか?キャサリン・ユーキリアスが読んだと言うのは。」
殿下の言葉に部屋の空気が変わる。
絶望の書は80年前までは王宮の隠された場所にて誰にも持ち出され無い様に厳重に封印されていた呪いの書物だ。開いた時に読む事が出来る者がいて利用されない様に。絶望の書の呪いが食い物にして餌とするのは王太子である事が主だったからだ。
絶望の書は時が来なければ開かない。そして一度開くと満足するまで閉じる事がない。絶望を餌にしているのだ。開いている間は呪いを放ち続け、内容を知る事が出来ている王家の者でさえ抗えない現象を強制的に起こし国の中枢を荒らしつくす。最たるものは異なる世界から排除された邪悪な魂を、国を担うものの側に置く事だと言われている。担う者大抵は王太子がターゲットだ。王太子に愛する者がいる場合にはその物に入り込み、必ず王太子も愛する者も心を壊し亡くなる。愛する者がいない時には王太子を篭絡する者に入り込む事が多く見られた。そして嘲笑うかの様に、王太子の側近を含む高位貴族を巻き込みとにかく国の中枢から壊していく。
それを当時の国王の娘、末姫さまがご乱心なされ封印を解き持ち出し、末姫さまと絶望の書は共に姿を消した。
当時この国一番の魔力と、封印の鍵としていた建国より続く王家の血を持っていた者が行った事で起きてしまった王族の失態だった。これらの出来事を王家は秘匿するべく動いたが、高位貴族達には隠すことは出来なかった。高位貴族は国の王宮にも自家の目と耳を潜り込ませる事を怠らない。国や自家を守る為、王家に目を光らせる為に。
そして大商会サーキュリー家は国内ばかりでなく、広く国外にも支店を置き各所、各国の情報、情勢を手に入れ自らが仕える王家の者に報告する役割を持つ家だ。
(サーキュリー家が動きを阻害される事がない様、代々のサーキュリー家当主と嫡男がそれぞれ仕える国王とその側近、王太子とその側近と魔法契約を交わす。己らの事が決して表に出ない様に。)
その為絶望の書関連の調査も任されていたが長年捜索しても何も掴めてはいなかった。ロベルトがキャサリンと親しくなるまでは。
「いや、キャサリンの手に絶望の書が渡った訳ではない。それを手にした者がそれを読み手を加え、物語として彼女の言うインターネットとやらで一瞬で世界中の誰でも簡単に見る事の出来る物に拡散したようだ。」
「何それ⁈こわっ!膨大な魔力があってもそんな事出来ないよ⁈」
「魔法のない世界など、魔力を僅かしか持たない平民達の村と大差ないものかと思い描いていたが…」
「そうですね。私も進化と言っても魔道具程度の物だと。」
カイン、ハリス、アレックスの言う通り、この世界の者では想像に限界がある。それは殿下も同じであろう。
「キャサリンの話しを聞いてみるといい。理解し難い話しばかりだよ。
キャサリン自身が言っていた様に当たり前に身近にある物、ある世界としてしか彼女が認識してなかったから、それがどうやって、どういう仕組みで、何を使ってとかほぼ何も知らないときた、言葉の意味を尋ねるとまた別の意味の分からない言葉で説明される。おかげで聞いた事、物、現象が解決しない。謎が謎を呼ぶのみ。俺は初めて聞いた後悩み過ぎて三日間高熱を出し寝込んだ。」
今思い出しても頭が痛くなる。考えても決して解けない問題が次から次へと…ダメだ、考えるな俺。よし忘れた。
「すまない。話しがそれたがそういう訳でキャサリンが絶望の書を手にした訳でもなく、何が書かれていたかも、自分がなぜこちらに生まれ変わったのかも分かっていない。」
「しかし、いくつか考え得ることはあるな…。」
「はい。絶望の書が別世界にあり開いた事。世界の違う我々の事をキャサリンが知っていた事がその事実を示している。
そして、おそらく内容を拡散したのは末姫であろう事。キャサリンを見ていたからわかる様に、ご乱心と言われた末姫は転生者なる者か、憑依した者だったと考えれば何かしらの意図があってされたのでしょう。
キャサリンはご褒美と言っていたが、何かしらの世界を渡れる方法があり、それを使い末姫はあちらに帰られた。」
「ロベルトの話し全てを念頭に考えると、呪いは此方には及ぼす力がないと見て良いかと。」
「アレックス、なぜだ?」
「はい殿下。及ぼす力があったのであればあちらの世界からユーキリアス嬢を送られる意味が無いのです。結局邪悪の欠片もない全くの無害な女性でしたから。」
「あぁ、……アレックス、それカトリーヌ達には言うなよ?表に出さなかっただけでめちゃくちゃ振り回されてたからな。俺といてもしょっちゅうユーキリアスの事で頭が一杯になってたからな?」
「可愛いものじゃありませんか。でも殿下がよくそれを我慢しましたね?」
「ハリスお前俺を何だと思ってるんだ?まぁ、そんな時は遠慮なく罰を与えれたからな。」
殿下悪い顔でニヤつかないでください。求心力下がりますよ?ハリス余計な事言ってんじゃねーよ!
「あー、はい。詳細は結構です。」
「何だハリス?聞きたいだろ?」
「はい、皆さん話しを戻しますよ!夜会に遅れて婚約者を怒らせたいんですか?」
「「……。」」
アレックスの言葉に殿下もハリスも黙り込む。流石アレックス。カインと俺は苦笑するしかない。
カインが黙って部屋内部に空間切断魔法を施した。これでここで話す事、起こる事が外に漏れる事は無くなる。
「ロベルト、絶望の書なのか?キャサリン・ユーキリアスが読んだと言うのは。」
殿下の言葉に部屋の空気が変わる。
絶望の書は80年前までは王宮の隠された場所にて誰にも持ち出され無い様に厳重に封印されていた呪いの書物だ。開いた時に読む事が出来る者がいて利用されない様に。絶望の書の呪いが食い物にして餌とするのは王太子である事が主だったからだ。
絶望の書は時が来なければ開かない。そして一度開くと満足するまで閉じる事がない。絶望を餌にしているのだ。開いている間は呪いを放ち続け、内容を知る事が出来ている王家の者でさえ抗えない現象を強制的に起こし国の中枢を荒らしつくす。最たるものは異なる世界から排除された邪悪な魂を、国を担うものの側に置く事だと言われている。担う者大抵は王太子がターゲットだ。王太子に愛する者がいる場合にはその物に入り込み、必ず王太子も愛する者も心を壊し亡くなる。愛する者がいない時には王太子を篭絡する者に入り込む事が多く見られた。そして嘲笑うかの様に、王太子の側近を含む高位貴族を巻き込みとにかく国の中枢から壊していく。
それを当時の国王の娘、末姫さまがご乱心なされ封印を解き持ち出し、末姫さまと絶望の書は共に姿を消した。
当時この国一番の魔力と、封印の鍵としていた建国より続く王家の血を持っていた者が行った事で起きてしまった王族の失態だった。これらの出来事を王家は秘匿するべく動いたが、高位貴族達には隠すことは出来なかった。高位貴族は国の王宮にも自家の目と耳を潜り込ませる事を怠らない。国や自家を守る為、王家に目を光らせる為に。
そして大商会サーキュリー家は国内ばかりでなく、広く国外にも支店を置き各所、各国の情報、情勢を手に入れ自らが仕える王家の者に報告する役割を持つ家だ。
(サーキュリー家が動きを阻害される事がない様、代々のサーキュリー家当主と嫡男がそれぞれ仕える国王とその側近、王太子とその側近と魔法契約を交わす。己らの事が決して表に出ない様に。)
その為絶望の書関連の調査も任されていたが長年捜索しても何も掴めてはいなかった。ロベルトがキャサリンと親しくなるまでは。
「いや、キャサリンの手に絶望の書が渡った訳ではない。それを手にした者がそれを読み手を加え、物語として彼女の言うインターネットとやらで一瞬で世界中の誰でも簡単に見る事の出来る物に拡散したようだ。」
「何それ⁈こわっ!膨大な魔力があってもそんな事出来ないよ⁈」
「魔法のない世界など、魔力を僅かしか持たない平民達の村と大差ないものかと思い描いていたが…」
「そうですね。私も進化と言っても魔道具程度の物だと。」
カイン、ハリス、アレックスの言う通り、この世界の者では想像に限界がある。それは殿下も同じであろう。
「キャサリンの話しを聞いてみるといい。理解し難い話しばかりだよ。
キャサリン自身が言っていた様に当たり前に身近にある物、ある世界としてしか彼女が認識してなかったから、それがどうやって、どういう仕組みで、何を使ってとかほぼ何も知らないときた、言葉の意味を尋ねるとまた別の意味の分からない言葉で説明される。おかげで聞いた事、物、現象が解決しない。謎が謎を呼ぶのみ。俺は初めて聞いた後悩み過ぎて三日間高熱を出し寝込んだ。」
今思い出しても頭が痛くなる。考えても決して解けない問題が次から次へと…ダメだ、考えるな俺。よし忘れた。
「すまない。話しがそれたがそういう訳でキャサリンが絶望の書を手にした訳でもなく、何が書かれていたかも、自分がなぜこちらに生まれ変わったのかも分かっていない。」
「しかし、いくつか考え得ることはあるな…。」
「はい。絶望の書が別世界にあり開いた事。世界の違う我々の事をキャサリンが知っていた事がその事実を示している。
そして、おそらく内容を拡散したのは末姫であろう事。キャサリンを見ていたからわかる様に、ご乱心と言われた末姫は転生者なる者か、憑依した者だったと考えれば何かしらの意図があってされたのでしょう。
キャサリンはご褒美と言っていたが、何かしらの世界を渡れる方法があり、それを使い末姫はあちらに帰られた。」
「ロベルトの話し全てを念頭に考えると、呪いは此方には及ぼす力がないと見て良いかと。」
「アレックス、なぜだ?」
「はい殿下。及ぼす力があったのであればあちらの世界からユーキリアス嬢を送られる意味が無いのです。結局邪悪の欠片もない全くの無害な女性でしたから。」
「あぁ、……アレックス、それカトリーヌ達には言うなよ?表に出さなかっただけでめちゃくちゃ振り回されてたからな。俺といてもしょっちゅうユーキリアスの事で頭が一杯になってたからな?」
「可愛いものじゃありませんか。でも殿下がよくそれを我慢しましたね?」
「ハリスお前俺を何だと思ってるんだ?まぁ、そんな時は遠慮なく罰を与えれたからな。」
殿下悪い顔でニヤつかないでください。求心力下がりますよ?ハリス余計な事言ってんじゃねーよ!
「あー、はい。詳細は結構です。」
「何だハリス?聞きたいだろ?」
「はい、皆さん話しを戻しますよ!夜会に遅れて婚約者を怒らせたいんですか?」
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アレックスの言葉に殿下もハリスも黙り込む。流石アレックス。カインと俺は苦笑するしかない。
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