悪役令嬢は言いたい

みみみ

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これだけは ※前半デューク視点後半カトリーヌ視点

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 ロベルトが苦笑する。

「わりぃ、どっちかって言うと自分の為だな。」
「「「お前は~!」」」
「結果お前たちも幸せだろうがっ!!」

 ハリス達に背中を殴られてロベルトがすかさず殴り返している。そんな皆を見ていると安心する。
 学園を卒業し俺たちはもう甘えてはいられない。公務、執務、他国への視察もある。
だが俺にはカトリーヌも友人もいる。前を向いて行くだけだ。
まずは妹姫、リリーナ様の事を報告だな。裏もなるべく取らないと高位貴族は受け入れまい。
「お前達、取り敢えず王宮に行くぞ。」



「酷い目にあった…。」
「ユーキリアス様、何か仰いまして?」
「いいえ!何でもございません。」
「さて、ユーキリアス様にお尋ねします。貴方はこれからの事をお決めですか?」
「え?…これから…あぁぁ私帰れないんだ⁈やだ、考えた事無かった!!カトリーヌ様どうしよう⁈」

 ユーキリアス様はせっかく我が家の侍女達に磨き上げられ見た目は上等な淑女に仕上がりましたのに…何で頭を振り回してらっしゃるの⁈あぁ、仕上げてくれた侍女が睨んでいますわよ。

「落ち着いて下さい。ユーキリアス様は、キャサリン様は今まで貴族の教育はされてましたか?これからは貴族として生きて行きたいですか?」
「え?無理無理!私は好きに生きたいです。働いたりもしたいし、普通に恋愛もしたい。これからはこっちの世界にあるのか分かんないけどラノベも読みたい!無ければ書いてくれる人の発掘だ!!」

 キャサリン様は何やら熱くなり腕を振り回しています。あぁ、侍女が倒れました。分かります。

「貴方の望む生き方は貴族では難しいようですね。それでしたらサーキュリー様にご相談されるのが一番宜しいかと思いますよ。(きっちり囲まれてしまうと思いますが)」
「あっ!そうですね!!ロルちゃーん!」
「ちょっ、キャっ…。」

 全力で走って行かれました…ドレス姿で。学園まで走って行くつもりでしょうか?…行きそうですね。 
 
 結局、わたくしは何も出来ませんでした…。貴族でなくなるであろう方に今更淑女とはをお教えしても何にもなりません。
いいえ、それでも今はまだキャサリン様は貴族。彼女の為にも、いいえ違いますね。わたくしの…だとしても、これだけは言いたいのです。

「デューク様と側近である皆様を、婚約者でも無い方がお名前で呼ばれるのはお辞め下さい!」

と。



 
 卒業から1年経ち、わたくしは本日、デューク様の元に嫁ぎます。
陛下はまだ数年は頑張ってくださるそうなので、デューク様は陛下に教えを乞い日々精進されています。勿論わたくしも王妃様に学んでおります。式の準備も同時進行でしたのでデューク様の側近の方々共々皆忙しく、季節も巡りこの日を迎えました。
 昨日、サーキュリー様とキャサリン様がお祝いの品を持ってデューク様とわたくしに会いに来て下さいました。
 わたくしはあの日、夜会でやっとキャサリン様に言いました。
そうしましたら…

「え?あ、はい!勿論そうですよねー。すみません!中々小説のキャラクター意識が抜けなくってヘヘヘ。気をつけまーす!って言うか、やだ!カトリーヌ様ジェラシーですか⁈名前で⁈可愛すぎて尊いわっ!あら?顔が真っ赤に!可愛いが過ぎるわぁ。」
「……。」
「そのぐらいにしてあげて。」 
「あ、デュ、殿下!フフ愛されてますね!」

キャサリン様に関わると思ってもない方向に行くのですね。分かっていてもよかった筈なのに…周りの皆様の生温い視線が…
うう、忘れましょう…。

 お祝いの品と共にキャサリン様は本をくださいました。卒業後、サーキュリー様の商会で働きながらラノベ布教?を頑張ってらしたら、同じ従業員に逸材がいらしたそうです。「10年、いや5年後には私の知らないストーリーを考えついてくれると信じています!」等々お祝いより熱く語られました。いつの間にかデューク様とサーキュリー様は姿を消していましたが。
そんな感じで、キャサリン様は夢を諦めず楽しそうにお過ごしのご様子でした。ただ、「二月ほど前にいつの間にかロルちゃんの嫁になっていました!」と言う話しには何と言って良いのか分かりませんでしたわ。婚姻っていつの間にかしてる物では決してないはずなのですが。

彼女に関わりますと、わたくしは常に言いたい事が出来てしまいます。そうデューク様に相談しましたら、サーキュリー様のお言葉をくださいました。キャサリン様の前世の世界の常識?らしいのですが…

「スルーするか、突っ込み技術を磨くしか無いらしいよ。」

と、何ですか、それは?












 

 
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