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7、お茶会
しおりを挟むお茶会が開かれている、マーカス邸に到着した。馬車を降りて、庭園に向かって歩き出す。
門番に聞いたら、2人はすでに来ていると言っていた。
今日は、このお茶会の為に今までにないくらいオシャレをして来た。あまり社交の場は好きじゃない。容姿が地味な私は、いつも陰で笑われて来たからだ。だけど今日は、すごく楽しみ。
庭園に行くと、皆が楽しそうにお茶を飲んでいた。すぐにハリソン様を見つけた。隣に座っているのは、金色のふわふわな髪に真っ白な肌、緑色の瞳にほんのり赤い唇のとても可愛らしい女の子。彼女が、マーシャさんのようだ。誰が見ても美しい彼女と比べたら、自分が余計に惨めになる。少しだけ弱気になった私の背中を、いつから居たのか、リーシュが押してくれた。
「行って来い」
たった一言だけど、私には十分だった。
ゆっくり近付き、2人が座る目の前の席に腰を下ろした。2人は話すのに夢中で、私が目の前に居ることに気付いていない。
「ハリソン様ったら、こんなところでいけません」
「いいだろう? 君に、触れていたいんだ」
婚約者の目の前で、イチャイチャする2人。他の人達は、気付いている。私達を見ながら、くすくすと笑い出す。
確かに、他の人から見たら笑ってしまうのも無理はない。人目を気にせずにイチャイチャしているところを見ると、2人の関係を周りに隠す気なんかないようだ。ずっとマーシャさんのことを、幼馴染みだと言い張っていたハリソン様が、友人にベラベラ話したり、人前でイチャイチャしだしたのは、私がマーシャさんの家に行ったことがきっかけのようだ。これはハリソン様じゃなく、マーシャさんからのメッセージだろう。『ハリソン様は、あなたじゃなく私を愛してる』そう聞こえたような気がした。マーシャさんは頭が良いと思っていたけど、買いかぶりすぎていたようだ。
「それ、いつまで続けるおつもりですか?」
長々とイチャイチャされ続け、飽きてしまった私は声をかけた。
「ルイーズ!?」
完全に気付いていなかったのか、本気で驚いている。
「ハリソン様……信じていたのに……酷いです……」
本気で驚いていたのが面白くなって、少し困らせてみることにした。
「こ、これはだな……」
少し意外だった。あんなに堂々とイチャイチャしていたのに、私に見つかったことに動揺している。浮気現場を見つかったことで、婚約を破棄されたら困るからだろう。それなら、もう少し気を付けたらいいのにと思いながら、両手で顔を隠して泣き真似をする。
「マーシャさんは、幼馴染みだと言っていたじゃありませんか! それなのに、こんな仕打ちをするなんて……」
「すまなかった! 裏切るつもりはなかったんだ!!」
悪びれもせず、よくそんな嘘が言える……
マーシャさんが好きだったから、ずっと雑貨に通っていた。彼女にお金が必要だと言われたから、私達を騙して婚約までした。私のことなんて、これっぽっちも気にしていないくせに、お金が手に入らないと思うと頭まで下げる。
情けない……
「マーシャさんは、どういうおつもりなのですか?」
ハリソン様のことは、後回しだ。ずっとマーシャさんのせいで苦しめられて来たのだから、彼女に思い知らせてあげなくちゃ。
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