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11、自業自得
しおりを挟む「そんな金、払えるわけがないだろう!?」
やっと立ち上がると、真っ赤な顔で怒り出した。
「私を散々お金を出す道具として扱って来たのだから、倍の額は慰謝料だと思ってください。確かに私の容姿は、あなたやマーシャさんのように美しくはありません。ですが、それをバカにする権利は誰にもない!」
私の言葉に、何も言えなくなるハリソン様。
今までザワついていた周りの人達も、一瞬で口を閉じた。容姿しか見ていなかった人達も、少しは変わってくれるような気がした。
「ルイーズ~! カッコイイ!!」
パチパチと拍手をしながら、このお茶会を開いてくれたユーリが姿を現した。ユーリの明るい声に、静まり返っていた人達も拍手をしてくれた。
「ユーリ、今日はありがとう」
「私は何もしてないよ。凄く楽しいお茶会になったね!」
何事もなかったように、焼き立てのお菓子をメイド達が運んで来る。
「さあ、皆さん! お茶会を楽しみましょう!」
ユーリの合図で、オーケストラの演奏が始まる。
トボトボと邸から出て行くハリソン様に、誰も気付くことはなかった。ハリソン様が去ってから、すぐにリーシュが戻って来た。私を見つけて手を振ってくれた彼を見て、私も手を振り返す。
やっと終わった。
とりあえず、何も考えずにお茶会を楽しもう。
その後は何事もなかったように、リーシュとユーリと共にお茶会を楽しんだ。2年分笑った気がした。それほど、ハリソン様の婚約者だった2年間が苦痛だったと知った。
ガードナー侯爵は邸を手放し、半分を返して来た。全額をすぐに返すことは出来ないからと、分割して返すと約束した。借金まみれのガードナー侯爵家に、縁談が来ることはないだろう。あのお茶会で、ハリソン様の最低な行いが噂になり、容姿だけでは相手を見つけることは困難になった。
コリーさんが有罪となり、財産を没収され、母娘共々国を追放された。マーシャさんは恨みのこもった手紙を、ハリソン様に大量に出してから国を出て行った。その手紙を読んだハリソン様は、部屋に閉じこもり、出て来なくなったらしい。
─────小さな家に引っ越したガードナー侯爵は、息子が部屋に引きこもっていることに頭を抱えていた。
「いい加減、出て来い!!」
部屋のドアを何回叩いても、ハリソンは出てこないどころか反応さえしない。
部屋の隅で小さくなり、ハリソンはブツブツと独り言を言っている。
「……殺される殺される殺される……殺される殺される殺される……」
床に散らばっている、マーシャからの手紙には、『お前のせいだ!』『殺してやる!』『役立ずののクズ!』『逃げられると思うなよ!』『どこまでも追いかけてやるから、覚悟しろ!』などという言葉が書かれていた。女性不信になったことは、言うまでもない。
コリーとマーシャは、隣国に向かうことにした。持ち前の美貌で、隣国に行く馬車に乗せてもらっていた。
「お母さん、私、貴族はもうこりごり。次は、商人にしましょう!」
「そうねぇ、財産没収されたから、お金がないと困るしね。大商人を探さなくちゃね!」
2人は、懲りていなかった。得意げに悪巧みをする2人を待っているのは、地獄であることは間違いない。
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