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12、幸せの味
しおりを挟むあのお茶会から数ヶ月後、私はリーシュと婚約した。
「遠回りしたけど、やっとルイーズが俺のものになった」
庭園を2人で散歩していたら、リーシュが私の手をギュッと握った。指先から伝わる体温に、私の全身が熱を持ち始める。
遠回りしたのは、もしかしたら私達にとって良かったのかもしれない。ハリソン様との婚約がなかったら、リーシュの大切さに気づかなかったかもしれない。ずっと彼に甘えて、成長することがなかったら、彼を兄としてしか見ていなかった。
もちろん、リーシュはとても素敵な人だけど、幼い頃の可愛らしい彼の印象から抜け出せなかったような気がする。
「リーシュは、いつから私のことを好きだったの?」
不思議だったのは、リーシュの気持ちだ。好きになってもらえるほど、可愛げがあったとは思えない。
「初めて会った時からだよ。ルイーズは、初恋なんだ。お前の強さに、憧れを抱いたのが始まりだった」
リーシュは変わっていると思った。強い女の子が好きだなんて……
「その答えは、ロマンチックじゃない」
唇を尖らせて拗ねた振りをして背を向けると、リーシュは後ろから私を抱きしめた。
「ルイーズに触れたかったのを、ずっと我慢していた。お前のことが、頭から離れなくて毎日苦しかった。出会った日から、ルイーズが好きだった」
耳元で聞こえる彼の切ない声が、胸の鼓動を早くする。そんなに想ってくれていたのかと思うと、胸が苦しくなる。
彼の腕に、力がこもる。まるで、このままずっと離さないと言わんばかりに。
ロマンチックじゃなくてもいい。彼は、こんな私を可愛いと言ってくれる。いつだって、私を見守ってくれる。それに何より、愛してくれる。
「私も……リーシュが好き」
そう口にした瞬間、彼の方を向かされて、唇を奪われていた。
長いような、短いような、時が止まってしまったみたいな感覚。彼の唇が、ゆっくり離れて行く。
初めてのキスは、幸せな味がした。
END
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みんなの感想(22件)
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裏も取らずに口から言われたらはいはい契約したり、契約破棄したり。軽い貴族ばかりで怖い国ですね。
約立たず×
役立たず⚪︎
ありがとうございます。訂正しました。
完結おめでとうございます。㊗️💐🏵️
詐欺母娘が面白かったです。😄
あれだけ華麗に騙せたらある意味才能みたいなものかな。🙂
ハリソンがクズ過ぎて笑える。😁
面白かったです。
次回作も楽しみにしています。😀🥞🍹
ありがとうございます!
詐欺母娘の出番、もう少し増やせば良かったですね笑
次回作、実はこれから投稿します笑
良かったら、読んでください(⸝⸝>ᴗ<⸝⸝)