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27、ナラードへ
しおりを挟むナラード王国へ向かうために、馬車に乗り出発しました。お忍びでナラードへ行くわけではなく、すでに行くことをナラード王国の王には伝えてあるそうです。そして私達のために、貴族とその家族は全員出席の舞踏会を開催していただけるようです。ナラード王国へは、馬車で1ヶ月ほどかかります。護衛は100人。使用人が10人。
護衛が多いのは、アンダーソン公爵家を警戒してのことです。
「そういえば、ルーク様が料理長として邸に来たのは、前の料理長の紹介でしたよね? どこで知り合ったのですか?」
ナラードに行くことになり、昔を思い出した私は、疑問に思ったことを聞いてみました。
「ああ、ゴードンは昔、ドラナルドの王城で働いていたんだ」
「そうだったんですか」
「ゴードンとは、料理長に一緒にしごかれた仲だよ。ゴードンが、ナラード王国の貴族の邸で使用人をしているのは知っていたから、俺が城を出た後も定期的に連絡をとっていて、ゴードンが故郷に帰ることになったから、自分の代わりに料理長をして欲しいと頼まれたんだ」
それで、料理長として邸に来たのですね。
「なんだか不思議です。初めてルーク様にお会いした時は、なんて失礼な人なの! って思っていました」
「そう思われていたのは、気付いていた。夜会の時、部屋を訪ねたらものすごく嫌そうな顔をされたからね」
「そんなに嫌な顔は……」
「してたよね?」
していました。
あの時、お腹が鳴ってしまってものすごく恥ずかしかったのを覚えています。
ずっと昔のことみたいに思えます。思えばあの時から、ルーク様は私を気遣ってくれていたのですね。
「殿下、町が見えてきました。本日は、あの町に宿を取ります」
馬車の右側を馬に乗った護衛が併走しながら、報告を入れてきました。
「分かった」
ルーク様とナラード王国を出て、ドラナルド王国に向かっていた時は気楽な旅だったのに、まさかこんな厳戒態勢でナラードに向かうことになるとは思ってもみませんでした。
護衛の兵士の半分以上は、野宿をするそうです。そして、私達が泊まる部屋の両隣と前の部屋には護衛兵が5人ずつ待機。部屋の前に2人の見張り。
仕方がないこととはいえ、少し息苦しいです。
「ずっと見張られてるみたいで疲れただろう?」
ルーク様の方が疲れているのに、私のことばかり気にかけてくれます。城を出る直前まで公務をしていらして、ほとんど寝ていないはずです。
「大丈夫です。ルーク様こそ、お疲れではないですか? 少しはご自分のことを、考えてください」
さすがに旅先では、料理を作る事が出来ないので、その分は休んでくれそうです。
「不思議だけど、全然疲れていないんだ。君のことを考えるだけで、元気が湧いてくるんだ」
私は幸せ者ですね。こんなに素敵な方に、こんなにも愛されて。
「それでも、休める時はキチンと休んでくださいね」
「ああ、分かった。
……アナベル、話があるんだ」
「話、ですか?」
「ホーリー侯爵のことなんだが、亡くなったようだ」
え……? ホーリー侯爵が亡くなった?
「どうして亡くなったのですか?」
「事故という話だが、俺はそうは思っていない」
「……殺されたのでしょうか?」
「それは、分からない。だが、用心にこしたことはない」
だから、こんなに護衛が多いのですね。アンダーソン公爵家のこともあるけど、それにしても多すぎだと思っていました。
「こんなことに巻き込んでしまい、申し訳ありません」
ルーク様を危険なことに巻き込んでしまったのではないかと、心配になって来ました。
「謝るんじゃなく、もっと頼って欲しい。言ったはずだよ? 俺は何があってもアナベルの味方だと。もうあの時とは違う。君がつらい時、俺は何も出来なかった。あんな思いは二度としたくないんだ」
ルーク様はあの時から私を想ってくれていたのに、私はエルビン様しか見ていませんでした。
私も、ルーク様につらい思いをさせたくありません。
「じゃあ、全力で頼らせていただきますね。覚悟してください!」
ルーク様は安心したのか、優しい笑顔を見せてくださいました。
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