〖完結〗いつ私があなたの婚約者を好きだと言いました?

藍川みいな

文字の大きさ
1 / 10

仕組まれた罠

しおりを挟む

 「メーガン様は、私の婚約者のグレン様がお好きみたいですね。どういうおつもりなんですか!? 」

 あまり面識のない伯爵令嬢のシルビア様から話があるからと、貴族の令嬢や令息達が好んで使うカフェに呼び出された私は、シルビア様の言ってる意味が分からず困惑していた。

 くりくりした目で見つめられると、女性の私でもドキッとする位可愛らしいシルビア様の、今にも泣き出しそうな声に周りの令嬢や令息達は何事かとこちらを伺っている。

 「シルビア様がおっしゃっている意味が分からないのですが……? グレン様とはほとんど面識もありませんし、私には婚約者がいます。勘違いなさっているのでは?」

 感情的に話すシルビアに、感情を表に出さないメーガン。
 傍から見ると、メーガンが適当にあしらっているようにしか見えない。

 「とぼけないでください! グレン様が私にハッキリおっしゃったのです! メーガン様に想いを寄せられ困っていると!」

 一体どういうことでしょう?
 社交の場で何度かお見かけした程度で、グレン様とはお話した事さえないのに……。


 私はメーガン・ホルツ。ホルツ伯爵の長女で、ビーンホルト侯爵の長男のダリル様と婚約しています。婚約者がいる身で、他の男性に余所見をするなんて有り得ません。
 ダリル様とは親同士が決めた政略結婚ですが、まだ結婚はしていなくても、ダリル様に尽くしてきたつもりです。
 ダリル様だけを見て、ダリル様を愛する努力もして来ました。
 こんなわけのわからないことをいきなり言われ、シルビア様こそどういうおつもりなのか聞きたいくらいです。

 「グレン様をお呼び頂けますか? ご本人がいない所で、そうおっしゃっていたなどと言われても信じられません。」

 「グレン様はメーガン様にはお会いしたくないとおっしゃっていました! まさか……私に隠れて、グレン様にお会いしていたのですか!?」

 言ってる事がおかしい……。
 私が一方的に想いを寄せて、グレン様が迷惑していたって話だったのに、どうしてシルビア様に隠れて会っているという話になるのですか!?

 「それはどういう事だ!?」

 この声は……

 「メーガン……君は私を……裏切っていたのか!?」

 ダリル様!?

 「なぜダリル様がこちらに!?」

 「そんな事はどうでもいいだろ! 今の話はどういう事かと聞いているんだ!」

 どういう事かと言われましても……

 「私には全く身に覚えのないことです。」

 「嘘をつかないでください! 私の婚約者と、隠れて会っていたのでしょう!? グレン様を返して……うぅ……っ……」

 シルビアは顔を両手で覆い、泣き出した。

 「メーガン、お前との婚約は破棄する! 浮気する女など、妻に迎えることは出来ない!」

 ダリルはメーガンを、蔑んだような目で見ながらそう告げた。
 そして、周りにいた令嬢や令息達もダリル同様、メーガンを蔑んだような目で見ていた。

 どうしてこんな事に!?
 私には全く身に覚えがないのに、ダリル様は信じてくれないのですか!?

 これは最初から仕組まれていた事に、この時の私は知る由もなかった。

しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されてすぐに新しい婚約者ができたけど、元婚約者が反対してきます

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私ミレッサは、婚約者のウルクに罪を捏造されて婚約破棄を言い渡されてしまう。    私が無実だと友人のカインがその場で説明して――カインが私の新しい婚約者になっていた。  すぐに新しい婚約者ができたけど、元婚約者ウルクは反対してくる。  元婚約者が何を言っても、私には何も関係がなかった。

悪いのは全て妹なのに、婚約者は私を捨てるようです

天宮有
恋愛
伯爵令嬢シンディの妹デーリカは、様々な人に迷惑をかけていた。 デーリカはシンディが迷惑をかけていると言い出して、婚約者のオリドスはデーリカの発言を信じてしまう。 オリドスはシンディとの婚約を破棄して、デーリカと婚約したいようだ。 婚約破棄を言い渡されたシンディは、家を捨てようとしていた。

婚約破棄を謝っても、許す気はありません

天宮有
恋愛
 侯爵令嬢の私カルラは、ザノーク王子に婚約破棄を言い渡されてしまう。  ザノークの親友ルドノが、成績が上の私を憎み仕組んだようだ。  私が不正をしたという嘘を信じて婚約を破棄した後、ザノークとルドノは私を虐げてくる。  それを耐えながら準備した私の反撃を受けて、ザノークは今までのことを謝ろうとしていた。

【完結】婚約破棄したのに殿下が何かと絡んでくる

冬月光輝
恋愛
「お前とは婚約破棄したけど友達でいたい」 第三王子のカールと五歳の頃から婚約していた公爵令嬢のシーラ。 しかし、カールは妖艶で美しいと評判の子爵家の次女マリーナに夢中になり強引に婚約破棄して、彼女を新たな婚約者にした。 カールとシーラは幼いときより交流があるので気心の知れた関係でカールは彼女に何でも相談していた。 カールは婚約破棄した後も当然のようにシーラを相談があると毎日のように訪ねる。

【完結】義妹と婚約者どちらを取るのですか?

里音
恋愛
私はどこにでもいる中堅の伯爵令嬢アリシア・モンマルタン。どこにでもあるような隣の領地の同じく伯爵家、といってもうちよりも少し格が上のトリスタン・ドクトールと幼い頃に婚約していた。 ドクトール伯爵は2年前に奥様を亡くし、連れ子と共に後妻がいる。 その連れ子はトリスタンの1つ下になるアマンダ。 トリスタンはなかなかの美貌でアマンダはトリスタンに執着している。そしてそれを隠そうともしない。 学園に入り1年は何も問題がなかったが、今年アマンダが学園に入学してきて事態は一変した。

私の元婚約者は、新しく婚約した妹の酷さを知らなかった

天宮有
恋愛
公爵貴族ジェードが、侯爵令嬢の私アイリスとの婚約破棄を言い渡す。 私の妹クーナスを新しく婚約者にするようだけど、ジェードはクーナスの酷さを知らない。 私が忠告するけど聞き入れず、ジェードは後悔することとなる。 その後、私に新たな婚約者が決まった頃に、謝罪に来たジェードが再び婚約して欲しいとやって来た。 ジェードは必死に頼むけど、私がジェードと婚約することはなかった。

【完結】愛してきた義妹と婚約者に騙され、全てを奪われましたが、大商人に拾われて幸せになりました

よどら文鳥
恋愛
 私の婚約者であるダルム様との婚約を破棄しろと、義父様から突然告げられました。  理由は妹のように慕っているマーヤと結婚させたいのだと言うのです。  ですが、そんなことをマーヤが快く思うはずがありません。  何故ならば、私とマーヤは本当の姉妹のように仲が良いのですから。  あまりにも自信満々に言ってくるので、マーヤの元へこのことを告げます。  しかし、そこでマーヤから驚くべき言葉を告げられました。  婚約者のダルム様のところへ行き、助けを求めましたが……。  行き場を完全に失ったので、王都の外へ出て、途方に暮れていましたが、そこに馬車が通りかかって……。

処理中です...