〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな

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9、小動物のような女の子

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 「セシリー様が泣きながら言ったことは信じるのに、涙を浮かべて謝るマディソン様のことを信じないのはなぜ?」

 「それは……」

 深く考えることもせず、片方の言うことを鵜呑みにして一人を三人で囲んで責めるなんて許せない。

 「リアナ様は、セシリー様がお嫌いなのでしょう!? だから、セシリー様が酷い目にあっていようとどうでもいいのでしょう!?」

 確かに、セシリー様は嫌いだ。けれど、今はそんなこと関係ない。

 「私に、ケンカを売るつもりなの? それなら、買ってあげるわ」

 三人の女子生徒を睨みつけながら、少し低めの声でそう告げた。
 自分は正しいのだと思い込んでいる人間は、何を言ったところで納得したり反省したりはしない。私はオリバー殿下で、懲りている。

 「もう行こう……。リアナ様は、オリバー殿下に剣術で勝っているのよ? それに、腐っても公爵令嬢だし……」

 全部、聞こえているけど?
 誰が腐っても公爵令嬢よ……

 「きょ、今日はこれくくくらいにしておいいてあげげるわ」

 言えてないし。

 「そう」

 「きゃあ!」

 三人の女子生徒は、顔を真っ青にして悲鳴をあげながら逃げて行った。
 失礼ね……何だか、化け物になった気分。

 「大丈夫?」

 悲鳴をあげて逃げたりしないか少し不安になりながらも、マディソン様の目を見ながらそう聞く。

 「は、はい。助けて下さり、ありがとうございました」

 声は小さいけれど、少なくとも私を怖がって逃げたりはしないようだ。
 顔はセシリー様に似ているけれど、雰囲気が全然違う。
 
 「あの……姉が、リアナ様に酷いことをしてしまい、申し訳ありませんでした」

 深々と頭を下げるマディソン様。

 「マディソン様が謝る必要はないわ。頭を上げて。それに、セシリー様に酷い目にあっているのはお互い様でしょう?」

 お互い様と言ったけれど、私と彼女は全く違う。
 彼女の手は傷だらけで、首筋にアザのようなものが見える。夏だというのに長袖……きっと腕にはたくさんのアザがあるのだろう。髪はボサボサで、肌もボロボロ。
 マディソン様はセシリー様をいじめているどころか、毎日使用人のように扱われているのだろう。アザは、体罰を与えられている証拠。両親はそれを咎めもせず見て見ぬふりか、セシリー様と一緒にマディソン様を虐げている……といったところだろうか。

 「マ、マディソンで大丈夫です。リアナ様は、お優しいのですね……」

 なぜかマディソンがまた涙ぐむ。
 可愛い……何この小動物みたいな女の子は!

 「私のことも、リアナでいいわ。行こう!」

 マディソンの手を取って走り出す。
 すごく華奢な手で、食事もろくに食べさせてもらえていないのが分かる。

 「どちらへ?」

 「学食! まだお昼休みは終わっていないから!」

 私達は急いで学食に入り、二人分のおすすめメニューを注文した後、席に着いた。

 「さあ、食べよう! いただきまーす」

 「で、でも私、お昼は済ませました」

 マディソンがそう言った後、盛大に彼女のお腹の音が鳴った。

 「あ、えっと、これは……」

 顔を真っ赤にしながら必死にいいわけしようとする姿があまりに可愛くて、思いっきり抱き締めたくなる。

 「お金のことは気にしなくていいから。せっかく作ってくれたんだから、食べよう?」

 「……はい」

 ようやく食べる気になってくれて、ホッとしていると、すごい勢いでミモザがこちらに向かって来た。

 「どこ行ってたの!?」

 不機嫌そうに私の隣に腰を下ろし、頬を膨らませている。

 「ごめん、少し考え事がしたかったの。一言言えば良かったね。本当にごめん」

 いつもミモザとランチをしていたから、今日もそのつもりで探してくれていたようだ。

 「許さないけど許す!」

 それは、どっちなのだろう?

 「ところで、彼女は? 何だか、見覚えがあるようなないような……」

 マディソンの顔を、じーっと見つめるミモザ。

 「彼女は、マディソン。さっき友達になったの。セシリー様の妹よ」

 「……え?」

 マディソン様をじーっと見つめていたミモザが、私の方を向いて目を丸くした。

 「は、初めまして。マディソンと申します。先程、リアナ様に助けていただきました」

 マディソンは、さっき出会った時から今まで、ずっとオドオドしている。人見知りなのもあるだろうけれど、それ以上に人と関わることが怖いのかもしれない。

 「リアナでいいと言ったでしょう? はい、やり直し!」
 「え……リ、リ、リアナ……」
 「よろしい」

 誰かを救いたいなんて、おこがましいのかもしれない。けれど、どうしても放っておけない。

 「ようやく来たね。もうお昼休みが終わってしまう」

 「ライアン様! ウォルター殿下と、ご一緒だったのですね」

 「リアナ嬢が見つからないからと、ずっとあなたの話しばかり聞かされていました。そちらの方は?」

 どんな話をしたのか、すごく気になる……

 「彼女は、マディソンです。ウォルター殿下と同じ、一年生ですよ」

 「そうなのですね。よろしくお願いします」

 ウォルター殿下が、ライアン様と居てくれて良かった。

 「ウォルター殿下、マディソンをよろしくお願いします」

 ウォルター殿下と一緒に居れば、少なくともまたいじめられたりはしないだろう。

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