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13、本当にバカなオリバー殿下
しおりを挟む「ここ、いいか?」
ミモザと学食でランチを食べていたら、聞きたくない声が聞こえて来た。今回も、返事をしていないのに隣に座るオリバー殿下。
「セシリーの妹を、攫ったそうだな」
相手にするだけ無駄なので、無視しよう。
ミモザも、黙々と食事をしている。
「おい! 聞いているのか!?」
聞いていないので、さっさとどっかに行ってください。
「……まあいい。そのまま、聞いてくれ。俺は、王太子ではなくなるそうだ。父上は、側室だった女の子を王太子にするそうだ。あいつは……ウォルターは、何もかも俺から奪って行く。くそっ! 俺がいったい、何をしたっていうんだ!? なんであいつばっかり!!」
無視しようと思ったのに、出来そうにない。
「……本気で、そのようなことを仰っているのですか? ウォルター殿下が優秀なのは、生まれ持ったものだとでも思っているのですか? ウォルター殿下は、幼い頃から誰よりも努力して来ました。オリバー殿下は、何をしたというのです? 周りにおだてられ、プライドばかり高くなり、しまいには悲劇の主人公気取り。あなたなんかより、ウォルター殿下は何万倍も何百万倍も王太子殿下に相応しいです!」
ウォルター殿下は、前王妃様にお母様であるスフィア様が蔑まれていたのを毎日見てきたそうだ。スフィア様を守る為に、必死に努力をしていたのだとライアン様から聞いた。ウォルター殿下は、最初から優秀だったわけじゃない。愛する人の為に頑張れる、とても素敵な人だ。
「そのように褒められたら、ライアンには悪いけど、リアナ嬢に惚れてしまいそうです」
気付いたら、ウォルター殿下とライアン様が向かい側に座るミモザの後ろに立っていた。
「リアナは渡さない!」
不機嫌そうに唇を尖らせるライアン様。ウォルター殿下は、冗談で言っているのに……
「……やはり、分かってくれるのはセシリーだけか」
オリバー殿下のその発言で、どうして彼がセシリー様をあんなに信じていたのか理解した。
「残念ながら、セシリー様はオリバー殿下の気持ちを少しも分かっていません。セシリー様に、『私も同じです』とでも言われましたか? 彼女は優秀な妹に嫉妬し、使用人のように扱っただけでなく、暴力までふるっていました。殿下の前では、怯える妹の姿を真似していただけにすぎません」
オリバー殿下は努力しなかったとはいえ、優秀なウォルター殿下と比べられて来たことは事実だ。その気持ちを、セシリー様は利用した。優秀な妹が、自分のものを全て奪って行くと言われ、自分と重ねたのかもしれない。
「ふ、ふざけるな! セシリーは、そんな女性じゃない!」
オリバー殿下は激怒したまま立ち上がり、そのまま去って行った。
殿下がセシリー様を信じていても、彼女はすぐに裏切るだろう。先程殿下が、自分は王太子ではなくなると言っていたからだ。王太子ではなくなるオリバー殿下には、利用価値さえなくなる。自業自得だけれど、少しだけ気の毒。
「兄が失礼な態度を取ってしまい、申し訳ありません」
ウォルター殿下は、申し訳なさそうに頭を下げた。ウォルター殿下の方は、オリバー殿下と違い、兄弟を心配しているようだ。
オリバー殿下が王太子に選ばれたのは、ウォルター殿下がそれを望んだからだ。必死に努力して来たのは、王太子になりたかったからではない。
心優しい弟の気持ちも分からない、ダメな兄。オリバー殿下の性格を考えると、二人が分かり合えることはないだろう。
翌日、二週間後に王宮で開かれる夜会への招待状が届いた。ウォルター殿下がオリバー殿下に代わり、王太子になると発表する為の夜会だろう。
そこできっと、セシリー様はオリバー殿下を見限る。
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