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セリーナの人気
しおりを挟む噂を聞いたエレノアとジェイソン、そしてモーラ王妃はセリーナに腹を立てていた。
「セリーナのやつ、大人しくしておけばいいのに、どういうつもりなのかしら!! あんな小国で人気者だからって、なんだというのよ!」
エレノアはテーブルをバンッと叩きながら、怒り狂っている。
「あのブス……俺達の評判を下げるために、わざとやってるんだ!」
セリーナはもう、この家族の事など気にしていない。民を思う気持ちが少しでもこの家族にあったなら、こんな考え方はしない。
「国民がまたローズの話をしだしたわ! 本当に忌々しいわね! ローズは死んだのよ! この国の王妃は私よ! 」
ローズという名前を聞くだけで発狂するモーラ。
どこまでも、自分達の事しか考えていない3人は、セリーナを殺しておけば良かったと思っていた。
「そうよ! セリーナを殺せばいいんだわ!」
一番先に口にしたのは、エレノアだった。
「そうだな! セリーナは毎日街に出かけているそうだから、チャンスはいくらでもある!」
待ってましたと言わんばかりに、ジェイソンも同意する。
「そうね。セリーナがいるから、ローズの話が出るんだわ! セリーナがいなくなれば、私達は幸せになれるわ!」
なにかに取り憑かれたように、ローズの事ばかり気になってしまうモーラも、ローズの娘がいなくなればいいのだと考えた。
「決まりね! 凄腕の殺し屋を探しましょ!」
3人がセリーナ暗殺を企てていた頃、ビモード王もセリーナの事を考えていた。
ビモード王は、日に日にローズに似てくるセリーナを愛する事が出来なかった。
ローズとは父である前国王が決めた結婚だったが、ローズと一緒にいるうちに惹かれていった。
頭では、セリーナが悪くない事はわかっている……が、セリーナを産んだことで亡くなってしまった最愛の妻を忘れる事が出来なかった。
『あの子が生まれなければ……』そう思わずにはいられず、顔を見るのも辛かった。
辛さを忘れる為に、愛してもいないモーラとの結婚を選び、モーラがセリーナを虐げていても気にとめることもない。むしろ、モーラがセリーナに自室から出る事を禁じた事が救いだった。
「セリーナ様を手放したのは失敗でしたね。」
クリフォード公爵は、デリター王国で愛されているセリーナの話を聞いて、自分は正しかったと言いに来たようだ。
「今からでもデリター王国を攻めて、属国にしましょう! そして、セリーナ様を取り戻すのです!」
クリフォード公爵は、セリーナをまだ女王にする気でいた。だが、大国でさえデリターに勝てないのに、ビモードで勝てるはずはなかった。
それに、ビモード王はセリーナを取り戻したいとは思っていない。
この国からいなくなってくれて、ホッとしていた。セリーナの存在が、ビモード王には苦痛でしかなかった。
「セリーナの事は、忘れてください。ローズを殺したあの子が死んでくれたら……そう思わずにはいられないのです。」
「しかし……」
「これ以上、セリーナの話をするおつもりなら、帰ってください。」
そう言って、クリフォード公爵に背を向けた。
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