〖完結〗陛下、溺愛されたら困ります。

藍川みいな

文字の大きさ
22 / 23

傷の理由

しおりを挟む

 「えっと……色々ありまして……」

 マギー王女は疲れたのか、部屋に戻り休みました。夕食をとりながら、ビンセント様に全てお話すると、笑顔を向けてくれました。

 「さすが、セリーナだな。
 私は警戒して、マギー王女の事を何も考えてやれなかった。実際、邪魔だったし。
 だが、少し妬けるな。私のセリーナとずっと一緒にいられるなんて……」

 ビンセント様も子供のようです。

 「今日からは寝室も一緒ですし、ビンセント様とも前より一緒にいられるではないですか。」

 そう言うと、ビンセント様の顔がバッと赤くなりました。私ったら、なんて恥ずかしい事を言ってしまったのでしょう……
 自分の言葉で、私の顔も真っ赤に……

 「君と一緒に眠れるなんて、幸せ過ぎて溶けてしまいそうだ。愛し過ぎて困る。」

 その夜、私達は初めての一夜を過ごしました。甘くて、少しだけ切ないようなそんな感覚。
 どんどんビンセント様に惹かれていく。こんなにも大切に思える人が、私を見つめて微笑んでくれる。ビンセント様のぬくもりに包まれて、その日はぐっすり眠れました。


 
 ビンセント様と身も心も結ばれ、充実した日々を送っています。
 マギー王女も私を慕ってくれて、私のする事を手伝ってくれています。ナーガブルクに帰りたくないようで、ずっとこの国で暮らしたいと言っています。ナーガブルクからは、何も言ってこないので、マギー王女が少し気の毒ですが……前ほどは悲しくはないと言っていました。
 この国に来たばかりのマギー王女とは、まるで別人みたいで、毎日楽しそうにしています。
 ですが、ドリクセン公爵とビンセント様の仲は、今も拗れたままです。
 


 コンコン……
 「王妃様、少しよろしいでしょうか?」

 会いに来たのは、執事のロンでした。

 「どうしたの? 」

 「王妃様に、お話しておきたいことがあります。」

 真剣な顔で話してくれたのは、ビンセント様とドリクセン公爵、そして先代の国王様の話でした。
 その話は、とても衝撃的だった……

 ドリクセン公爵は、先代の国王ケビン様の本当の息子ではなかった。亡くなったビンセント様のお母様、先代の王妃様の過ちで出来た子だと……
 その事を、先代の王妃様はずっと隠していた。そしてそのまま亡くなったそうなのですが、あの日……ケビン様が亡くなった日に、ケビン様は先代の王妃様の日記を見つけた。
 その日記には、過ちを犯した事と、”ジョシュアはケビン様の子ではない”と書かれていたそうです。
 その日記を読んだケビン様は激怒し、我を忘れ、ドリクセン公爵を殺そうと呼び出した。
 ビンセント様は必死で止めようとしたけど、ドリクセン公爵を殺そうと持っていたナイフで、顔を切り付けられた……
 その時、ケビン様は胸を押さえてお倒れになり、そのままかえらぬ人になった。
 その光景を、ドリクセン公爵は見たようです。
 ケビン様の死因は、心臓麻痺でした。

 「陛下は、ジョシュア様の事を守りたかったのです。この事を知ったら、ジョシュア様が傷つく……それなら、ご自分が恨まれた方がいいからと仰り、私は口を閉ざしました。私には、ジョシュア様の心を癒して差し上げる事が出来なかったからです。
 こうして王妃様にお話したのは、王妃様なら陛下のお心も、ジョシュア様のお心もお救い出来るのではと思ったからです。」

 私に出来るのでしょうか……
 ですが、その日の事で2人が苦しんでいるのは分かります。
 ドリクセン公爵もですが、ビンセント様もです。ビンセント様はまだ、私の前以外で仮面を外すことがありません。
 私がこの事を話していいのでしょうか……
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました

Blue
恋愛
 幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」

幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」 「はあ……なるほどね」 伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。 彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。 アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。 ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。 ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。

拾った指輪で公爵様の妻になりました

奏多
恋愛
結婚の宣誓を行う直前、落ちていた指輪を拾ったエミリア。 とっさに取り替えたのは、家族ごと自分をも売り飛ばそうと計画している高利貸しとの結婚を回避できるからだ。 この指輪の本当の持ち主との結婚相手は怒るのではと思ったが、最悪殺されてもいいと思ったのに、予想外に受け入れてくれたけれど……? 「この試験を通過できれば、君との結婚を継続する。そうでなければ、死んだものとして他国へ行ってもらおうか」 公爵閣下の19回目の結婚相手になったエミリアのお話です。

【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました

綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
腹を痛めて産んだ子を蔑ろにする身勝手な旦那様、離縁してくださいませ! 完璧な人生だと思っていた。優しい夫、大切にしてくれる義父母……待望の跡取り息子を産んだ私は、彼らの仕打ちに打ちのめされた。腹を痛めて産んだ我が子を取り戻すため、バレンティナは離縁を選ぶ。復讐する気のなかった彼女だが、新しく出会った隣国貴族に一目惚れで口説かれる。身勝手な元婚家は、嘘がバレて自業自得で没落していった。 崩壊する幸せ⇒異国での出会い⇒ハッピーエンド 元婚家の自業自得ざまぁ有りです。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/07……アルファポリス、女性向けHOT4位 2022/10/05……カクヨム、恋愛週間13位 2022/10/04……小説家になろう、恋愛日間63位 2022/09/30……エブリスタ、トレンド恋愛19位 2022/09/28……連載開始

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...