〖完結〗親友だと思っていた彼女が、私の婚約者を奪おうとしたのですが……

藍川みいな

文字の大きさ
2 / 2

後編



 私の涙を見て、満足そうに微笑むマギー。 
 残念だけど、その幸せはすぐに崩れ去ってしまう。先程会話した時に伝えることは出来たけれど、そうしなかった私も性悪なのかもしれない。だけど、親切に教えてあげる義理なんかない。あなたが、私との関係を壊したのだから。

 「実は、もう一つ報告があります」

 パトリック様とマギーが壇上を降りると、ボーグル侯爵は嬉しそうにそう話す。そして……

 「このボーグル侯爵家を継ぐ息子のランドールと、ローズ男爵家のミラーナの婚約をご報告致します! 二人共、こちらに来なさい 」
 
 言われた通り壇上へと上がると、壇上のすぐ下で、まだ状況を把握出来ていないマギーが口を開けたまま呆然としていた。
 マギーが婚約した相手は、ボーグル侯爵家の嫡男ではなく、夫人の連れ子だ。ランドール様のお母様は、彼を産んですぐに亡くなったそうだ。夫人は伯爵令嬢だったが、平民の男性と結婚して生まれたのがパトリック様。夫に先立たれた夫人に、幼馴染みだったボーグル侯爵が求婚して二人は結婚をした。マギーが私の婚約を知ったのが一週間前で、ボーグル侯爵家の事情を調べる時間がなく、を奪うことに全力を注いだのだろう。
 マギーはボーグル侯爵家の嫡男だと勘違いし、パトリック様を誘惑していた。そのことに気付いたランドール様は、パトリック様に忠告したが、聞く耳を持たなかったそうだ。ドレスと共に送られて来た手紙には、そのことが書かれていた。
 
 「どういう……こと?」

 ランドール様と私を見上げながら、顔が青ざめていくマギー。ようやく、思考が動き出したようだ。

 「お前がバカだっただけだろう」

 マギーの隣で、ニヤリと笑いながらそう言ったパトリック様。パトリック様は、もしかしたら最初からマギーの魂胆に気付いていたのかもしれない。
 パトリック様の豹変ぶりに、マギーの思考はまた停止したようで、目を見開いたまま固まっていた。

 挨拶を終えて壇上を降りると、マギーはものすごい形相で睨みながらこちらに向かって歩いて来る。

 「あなたの仕業でしょ!?」

 私の前で足を止めると、責めるような口調でそう言った。マギーの思考回路は、どうなっているのだろうか。

 「いい加減にしろ。これ以上、僕の婚約者に近付くな」

 静かな口調だったけれど、ランドール様が怒っているのが分かる。彼を信じきれなかったことに、罪悪感を感じた。

 「ランドール様、どうしてミラーナなのですか!? ミラーナなんかより、私の方が美しいです。今からでも遅くはありません。私を選んでください! ミラーナは、パトリック様と婚約すればいいではありませんか! 私達、お似合いだと思います!」

 必死にランドール様にアピールするマギーを見ていたら、怒りを通り越して哀れに思えた。なぜそんなにも必死になって、私の婚約者を奪おうとするのか……。
 自分を少しでも良く見せる為に私を利用し、私から婚約者を奪うことで自分の方が優れているのだと実感する。周囲の目ばかりを気にして生きている彼女は、幸せなのだろうか。

 「君を美しいとは思わない。美しいというのは、ミラーナのような女性のことだ。それに、君を好きになることは決してない。僕はミラーナ以外、愛せない」

 ランドール様の言葉に、胸の鼓動が早くなる。そのように思ってくれていたなんて、知らなかった。確かに、妻になって欲しいとは言われたけれたど、愛してくださっていたなんて……。

 「お前は、俺の婚約者だということを忘れたのか? 婚約者の前で、他の男に色目を使うなんて最低だな。厳しい躾が必要なようだ」

 パトリック様は鋭い目付きでマギーを見ると、逃がさないと言わんばかりに強引に肩を抱き寄せた。

 「な!? 離してください! 婚約は破棄します! ボーグル侯爵家を継げないパトリック様との結婚なんて、何の意味もありません!」

 ランドール様を落とせないと悟ったマギーは、本性を現した。腕を振り払おうと暴れるマギーに、パトリック様は耳元で囁いた。

 「婚約を破棄することなど出来ない。そう、誓約書に書いてあったはずだが? 急いで婚約したかったようだから、きちんと読まなかったのだろう。お前は、私と結婚して平民になるか、お前の実家の財産を全て差し出すしか道はない。はたしてお前の為に、お父上は全財産を差し出すだろうか?」

 マギーのお父様が、全財産を差し出すはずがない。何よりも、お金を大切に思っている方だ。
 一刻も早く私から婚約者を奪おうとして、誓約書を読むことなくサインしてしまったのだろう。
 
 「そん……な……」

 サインしたことを思い出したのか、マギーはその場に崩れ落ちたまま、ブツブツと何かを言っているが、聞き取ることは出来ない。

 「兄上は、それでよろしいのですか!?」

 ランドール様は、心配そうにパトリック様を見ている。
 パトリック様は、マギーの本性を知っていて、彼女と婚約をした。しかも、彼女の逃げ道まで奪っている。ということは、パトリック様はマギーと結婚するということだ。パトリック様が、マギーを愛しているとは思えなかった。

 「こんな俺を、お前は義兄として慕ってくれた。俺はお前の義兄だから、お前の幸せを守る責任があるんだ。ミラーナ嬢、不安な思いをさせて悪かった。マギーに俺が君の婚約者だと思わせる為に、ランドールには君に会うのを控えてもらっていたんだ。だから、ランドールを責めないでくれ」

 マギーを見る冷たい表情とは違い、優しくて温かい表情になるパトリック様。

 「責めるだなんて、ありえません。今回のことで、ランドール様への想いが強くなりました」

 パトリック様は、柔らかい表情で微笑んだ後、

 「良かった。あ、そうそう、俺のことは気にしないでくれ。マギーには働きに出てもらって、楽をするつもりだ。こんな性悪をもらってやるのだから、それくらいはしてもらわないとな」

 そう言って、豪快に笑った。

 数週間後、パトリック様とマギーは小さな教会で式を挙げた。
 パトリック様が言っていた通り、マギーは食堂で働き出したそうだ。家事をしたことも、働いたこともないマギーは、毎日店主に叱られているという話しだ。それでも、朝から晩まであのマギーが働きに出ている。パトリック様は、どんな躾をしたのか……。

 そして一年後、私はランドール様の妻になった。
 
 「君が思うよりずっと、僕は君を愛してる」

 結婚初夜、彼は私の頬に手を添えて、優しくキスをした。
 
 「知っています」

 唇が離れると、私はそう言って微笑んだ。
 この手を、離さない。この先、ずっと……
 


                                                          END

 
感想 6

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

毒島醜女
2025.02.28 毒島醜女

パトリック…何か特殊な趣味をお持ちなようで(笑)

解除
田中角栄
2023.12.09 田中角栄

胸クソ悪い性悪毒婦!!
もう少し『ざまぁ』の詳細を知り、心の底から『ざまぁ』と言いたい!!💢👎

解除
碧.y
2023.06.26 碧.y

まさか、侯爵家には二人の息子が居るとは思いませんでした。
パトリックが上だから、パトリックが嫡男と思っていたマギーは、パーティで真実を知り平民になった。一生、パトリックが働かせると思います。親友の婚約者を奪おうとしたマギーは自業自得ですね。
ミラーナが無事にランドールと一緒になれた。末永く幸せになって下さい。

2023.06.26 藍川みいな

読んでくださりありがとうございます♪
そうなんです、パトリックが年上だから勘違いを笑
一生、パトリックの奴隷ですね…

解除

あなたにおすすめの小説

【完】お望み通り婚約解消してあげたわ

さち姫
恋愛
婚約者から婚約解消を求められた。 愛する女性と出会ったから、だと言う。 そう、それなら喜んで婚約解消してあげるわ。 ゆるゆる設定です。3話完結で書き終わっています。

婚約者には既に美しい妻が居た…私を騙そうとした愚か者たちには、天罰が下りました。

coco
恋愛
婚約者には、既に美しい妻が居ました。 真実を知った私は、嘆き悲しみましたが…二人には天罰が下ったようです─。

裏切りは許さない…今まで私を騙し利用していた夫を、捨てる事にしました─。

coco
恋愛
家を空け、仕事に勤しむ夫。 だが、そんな夫の裏切りを知る事になった私は─?

妹に幸せになって欲しくて結婚相手を譲りました。

しあ
恋愛
「貴女は、真心からこの男子を夫とすることを願いますか」 神父様の問いに、新婦はハッキリと答える。 「いいえ、願いません!私は彼と妹が結婚することを望みます!」 妹と婚約者が恋仲だと気付いたので、妹大好きな姉は婚約者を結婚式で譲ることに! 100%善意の行動だが、妹と婚約者の反応はーーー。

好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?

完璧すぎる幼馴染に惚れ、私の元を去って行く婚約者ですが…何も知らず愚かですね─。

coco
恋愛
婚約者から、突然別れを告げられた私。 彼は、完璧すぎる私の幼馴染に惚れたのだと言う。 そして私の元から去って行く彼ですが…何も知らず、愚かですね─。