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二章
最終話 やっぱりキスはおあずけ
しおりを挟む「叔父様!? どうしてここに!?」
叔父様は余っていたイスを移動して、無理やり私とレイビス様の間に座る。
「セリーナが頼み事をしてくれたのだから、私自ら出向くのが当然だろう」
友好国とはいえ、小国を守るために大帝国の皇帝自ら軍を率いてくるなんて通常ならありえない。
叔父様は、褒めてほしそうに私の顔を見ている。褒めるべきなのだろうか……
ただ、叔父様自らグルダを守るためにきたことで、もう二度とグルダに攻撃しようと考える国はなくなるだろう。
「ありがとうございました。さすが、叔父様ですね」
「セリーナのためなら、こんなことなんでもない。久しぶりだな」
今度は私の顔を見て涙ぐむ。コロコロと表情を変えて、忙しい人だ。けれど、私を愛してくれていると素直に伝わる。
「叔父様にお会いできて、嬉しいです」
頻繁に会えるわけではないのだから、一緒に過ごせる時間は貴重だ。
「私も、セリーナに会えて嬉しい! こんなに可愛い姪を持って、私は幸せだ」
もう一人、幸せそうな顔をしている人物がいる。久しぶりに会えた愛しい人に、顔を真っ赤にしているカタリーナ。
「陛下、お久しぶりです」
「カタリーナ、久しぶりだな。元気そうでなによりだ。頻繁に手紙のやり取りをしているから、久しぶりな気がしないがな」
そう言って微笑む叔父様を見て、さらに顔を赤く染めるカタリーナ。そんなに頻繁に私の報告をしてたのかと呆れるけれど、カタリーナは嬉しそうだからなにも言わないでおこう。
「陛下、この度はグルダのためにありがとうございました」
シェリルがイスから立ち上がり、叔父様に頭を下げる。
「頭を上げなさい。君は、セリーナの親友だ。それに、グルダは我が国の友好国だ。困った時は、いつでも言いなさい」
叔父様は、私の友達にはとても優しい。けれど……
「そういえば、セリーナを危険な目に合わせたそうだな。雪の花……だったか? セリーナが崖から落ちたそうではないか」
レイビス様には、とても厳しい。カタリーナは、本当に細かいことまで叔父様に報告していたようだ。
「叔父様、あれは私が悪いのです。レイビス様の幻を追いかけて、足を滑らせてしまいました」
「いいえ、俺の責任です! もう二度とあのようなことがないように、必ずセリーナを守ります!」
レイビス様の真剣な横顔を見て、嬉しいと思ってしまった。
「……ならいい」
叔父様も彼の真剣な顔を見て、なにも言えなくなったようだ。
ひとつ、気になることがある。叔父様の後ろに控えているのは、カタリーナのお父様だ。二人とも、挨拶を交わすどころか、目を合わせようともしない。
二人は、決して仲が悪いというわけではない。きっとお父様は護衛に徹していて、それを理解しているカタリーナはなにも行動をしないのだろう。
けれど親子が久しぶりに会えたのだから、知らんぷりは悲しい。
「エリクソン伯爵も、お久しぶりですね。カタリーナには、とてもお世話になっております」
「お久しぶりです、セリーナ様。無骨な娘ですが、セリーナ様のお役に立てているようで安心しました」
カタリーナの話をするエリクソン伯爵は、とても優しい目になる。
「カタリーナは護衛としても、友人としても、とても素晴らしい女性です。久しぶりに会えたのですから、親子でお話したらいかがですか?」
「セリーナ!? 私は別に……」
「今度はいつ会えるかわからないのだから、お父様とお話してきて」
「おお、そうしなさい! 庭園を二人で散歩して来たらどうだ?」
叔父様も、同意してくれた。
「……陛下、セリーナ様、感謝いたします。カタリーナ、行こう」
二人はゆっくりと、庭園を歩いて行く。私も、お父様とサミュエルに会いたくなってしまった。
「ところで、セリーナの膝の上にいる犬はなんだ?」
叔父様は、膝の上で眠るクウが気になったようだ。ずっと膝の上にいたのだけれど、今頃気づいたらしい。
「この子は、クウっていうんです。ガレスタ王国で白い狼に出会って、その白い狼から託されました」
「狼……なのか!?」
狼と知り、驚いて目を見開いたままクウを凝視する。
「抱いてみますか?」
叔父様にクウを手渡すと、クウが目を覚ます。
「クゥ……ン」
「なんて可愛いんだ!」
目を開けたクウが、潤んだ目で叔父様を見つめた。一瞬で、クウの虜になったようだ。
クウを抱きしめ、頬擦りをしている。
「……さすが、親戚だな」
レイビス様は呆れた顔で、ボソッと言った。私も、そう思う。叔父様がしていることは、私がいつもしていることだ。
クウも嬉しそうに、叔父様の頬をぺろぺろと舐めている。
「クウ……か。私の代わりに、セリーナを頼むぞ」
「クゥーン」
クウが「任せろ」と言ったみたいに聞こえて、おかしくてみんなで笑ってしまう。
エリクソン伯爵とカタリーナが戻ると、叔父様はスフィリル帝国へと帰って行った……というより、エリクソン伯爵が無理やり連れ帰って行った。
忙しいのに、わざわざ来てくれたことに感謝だ。
叔父様とお父様に会えて、カタリーナは「ありがとう」と嬉しそうに笑っていた。
叔父様の「頻繁に手紙のやり取りをしているから、久しぶりな気がしないがな」という言葉がよほど嬉しかったのか、すぐに次の手紙を書いていた。
「もう、お別れなのね」
ガレスタ王国からグルダ王国に来たから、長居するわけにはいかない。きちんと報告もしなければならないし、私たちはグランディ王国に帰ることになった。
「またすぐに会えるわ。ルギウス様とシェリルの結婚式、楽しみにしているね」
今回の後始末やらで、結婚式はまだ先になるだろう。それは、私たちにも言えることだけれど……
「その時は、いっぱい話そうね!」
それは、新婚のルギウス様が可哀想。
「今度は、無理したりしないようにな。なにかあったら、必ず俺たちに連絡しろ」
兄の顔になるレイビス様が、なんだか新鮮だ。ケンカばかりしていても、シェリルのことが本当に大切なのだろう。
「わかったわ。お兄様、セリーナに嫌われないように頑張ってね」
「おまえは、ひとこと多い! セリーナが俺を嫌いになるはずがないだろう!」
「そんなのわからないじゃない! お兄様は独占欲が強いし、セリーナを困らせないか心配よ」
「おまえこそ、ルギウスに嫌われないように気をつけろよ」
「あら、私は大丈夫よ。だって私、こんなに可愛いんですもの」
「俺とおまえは、同じ顔だ!」
結局、いつもの二人に戻ってしまった。けれど、これでいいと思えた。ケンカしながら、二人は楽しそうだ。
馬車に乗り込み、窓を開ける。シェリルの姿が見えなくなるまで、手を振っていた。
「やっぱり、寂しいですね」
久しぶりにシェリルと過ごして、とても楽しかった。
「セリーナには、俺がいるだろ?」
カタリーナは気を使ってくれたのか、今日は同じ馬車に乗っていない。馬車の中だけれど、久しぶりに二人きりだ。
「そうですね。レイビス様がいてくれて、よかった」
色々なことがあり過ぎる旅だったけれど、こうして無事にグランディ王国へと帰ることができる。
「聞いてもいいですか? どうして剣を、二本さしているのですか?」
腰には、私が贈った剣ともう一本の剣が装備されている。元王妃様に向けられたのは、もう一本の剣の方だった。
「君からの贈り物を、他人の血で汚したくはない。だから、戦う時は予備の剣を使うつもりだ」
それは、剣の意味がない気がする。それに、二本も腰に装備していたら邪魔だろう。
「でしたら、お部屋に飾るのはいかがですか?」
この様子なら、きっとレイビス様は私が贈った剣を使わない。それならば、邪魔にならないようにして欲しかった。
「そうしよう! 二本が擦れて傷がついてしまうし、せっかくのセリーナからの贈り物が汚れてしまうからな」
彼は快く了承してくれた。次は、違うものを贈ろうと心に誓う。
「そういえば、ルギウスから聞いたのだが……どうやら俺たちの噂が広まっているらしいんだ」
「噂……ですか?」
どんな噂だろうと、首をかしげる。
「小国を救う救世主……だそうだ」
「救世主……それはまた、大袈裟な……」
「まあ、俺にとって君は女神だけどね」
急に女神だなんて言われて、顔が熱くなる。彼の顔を見ると、瞳が潤んでいる。彼から、目をそらすことができずにじっと見つめ合う。
そして、ゆっくり顔が近づいてくる……
「クゥーン!」
唇が触れそうになった瞬間、膝の上で眠っていたはずのクウがジャンプして、レイビス様の顎にクウの頭がゴンッとぶつかる。
「……っ! クーウー!!」
顎に頭突きをされたレイビス様は激怒していたけれど、あまりにもおかしくて笑ってしまう。
「ふふっ」
甘い時間は邪魔されてしまったけれど、これはこれで楽しいからよしとしよう。
END
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年末までご執筆ありがとうございました。どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
新たな邪魔者登場ですね笑
返信が遅くなり、申し訳ありません。
今年も、よろしくお願いいたします( *ˊᵕˋ*)
更新お疲れ様です。
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いつも読んでくださり、ありがとうございます( *ˊᵕˋ*)
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こちらこそ、毎日読んでいただきありがとうございます( *ˊᵕˋ*)
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