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どの口が仰っているのですか?

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 「美しい顔が、台無しではないか!」

 ……本当に、美しいと思っているのですか?

 「旦那様には、他に愛する方がいるではありませんか。私の事は、心配なさらないでください。」

 ちょっと嫌味っぽかったかな……
 いつから私は、こんな性格になってしまったのでしょう?

 「何を言っているんだ? 愛する人は、君じゃないか。俺は君しか愛していない。」

 どの口が仰っているのでしょうか……

 「そんな言葉を信じるとお思いなのですか? ローラさんとロロナさんがいるではありませんか。」

 ローラさんを連れて来てから、私達は話し合う事すらなかった。ずっとローラさんの部屋に入り浸りだったと思ったら、次の愛人を連れて来た。
 こんな状況で、私だけを愛してるだなんて、誰が信じるのでしょうか。

 「愛人はペットのようなものだよ。可愛いが、愛とは違う。君は妻なんだから、彼女達に嫉妬する必要はないよ。妻は君しかいない。愛しているのは君だけだから、安心して欲しい。」

 レナード様は何を仰っているの!?
 人間はペットではないわ! 

 「私の気持ちは、考えてくださらないのですか?」 

 愛してるからこんなに苦しいのに、レナード様は私を傷付けても平気なのでしょうか?

 「俺が幸せなら自分も幸せだと、君がいつも言っていたじゃないか。俺は幸せだよ。」

 「それとこれとは……」

 「とにかく、俺は君が居てくれて幸せだし。愛人と別れるつもりはない。もうこの話は終わりだ。」

 言い返そうとしたら、言葉を遮られました。そして、これ以上話す事さえ許されなかった。
 レナード様は怒っているようです。……怒りたいのは、私の方なのに。
 レナード様は食事を終えると、何も言わずに去っていきました。

 「奥様、大丈夫ですか?」

 声をかけてきたのは、使用人のライアン。
 いつも私を気遣ってくれています。

 「……大丈夫よ。ありがとう。」

 本当は大丈夫なんかじゃない。
 レナード様と婚約していた時、こんな結婚生活になるなんて想像もしていなかった。
 あんなに優しかったレナード様は、もう私の事なんてどうでもいいみたい。 
 愛しているから……こんなにも辛いなら、こんな感情いらない。

 「無理なさらないでください。お辛いのは分かっております。話したい事があったら、いつでも聞きますので、溜め込まないでくださいね。」

 ライアンの優しさだけが、今の私にとっての救いです。
 他の使用人はレナード様が愛人を連れて来てから、私を避けるようになっていました。

 そしてまた、レナード様は愛人を連れてきた。

 何人連れて来るのでしょうか……
 愛人を連れて来れば連れて来る程、レナード様にお会いする事がなくなっていきました。
 ローラさんを連れて来てから1年、レナード様との夜の営みもありません。
 そんな私に子供が出来るはずもなく、愛人の1人、ロロナさんが子供を身篭ったのです。
 
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