〖完結〗真実の愛が欲しいという旦那様と結婚した私は……

藍川みいな

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1、真実の愛なんて……

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 「俺は、真実の愛が欲しいんだ……」

 結婚式当日、仮にも今から結婚する相手に向けて言う言葉でしょうか?
 ずっと不機嫌な顔をしていたと思ったら、いきなりそう言った彼に困惑しています。
 私だって、いつか素敵な人と結ばれる! 何て、子供の頃は夢見ていました。だけど、現実はそんなに甘くありません! 貴族の家に生まれたのだから、政略結婚など当たり前の事です。

 私は、ミシェル。18歳。ターナー男爵家の長女です。本日、リック・ダイアン様と結婚します。そして今、結婚式の真っ只中です。
 リック様は、ダイアン伯爵家のご長男で、私の2つ年上です。背が高く、綺麗な黒髪で、鼻が高く形のいい唇……容姿はとても美しい方です。
 ダイアン伯爵家には、多額な借金があり、お父様がその借金を返済する事を条件に、私達は結婚することになったのです。
 婚約期間は1ヶ月という、急がれた結婚。借金を急いで返済したいからと、すぐに結婚する事になったのです。

 結婚資金もお父様が全て出し、盛大な結婚式が行われています。こんなに盛大な結婚式で、旦那様になるはずのリック様は、私には一切興味を示さずに他の女性ばかり見ています。
 
 「美しい女性がこんなにも大勢いるというのに、どうして俺の妻になる女性はこんな……」

 そう言って、リック様は私をチラリと見て来ました。それは、私にとっても同じことです。あんなに沢山、素敵な方がいらっしゃるのに、どうして私の夫はこんなに情けなくて、男らしくないのでしょう。
 
 確かに、私の容姿は可もなく不可もなく、お世辞にも美しいとは言えません。この茶色い髪も、黒い目も、好きではありませんし、鼻も口も小さくてスタイルも幼児体型で、容姿に全く自信がありません。
 ですが、そもそもその考え方、おかしくありませんか? 真実の愛が欲しいと言いながら、見た目に左右されているではありませんか。

 「君……名前、なんだっけ?」

 妻となる私の名前さえ、覚えていないとか正気ですか!? 
 が、我慢しなくてはなりません……今は、結婚式の最中なのですから。

 「ミシェルです。リック様」

 作り笑顔を浮かべて、自分の名前を言いました。ついでに、私は覚えですアピールもしてみました。

 「ああ、ミシェルか。名前は綺麗だな」

 バカにする言い方に、怒りが込み上げて来ましたが、私は一生懸命平静を装っています。

 「ありがとうございます」

 感情を抑え、笑顔でお礼を言いました。

 「ミシェルも、この結婚には納得いかないだろ? 今日が初対面で、いきなり夫婦になるなんてさ」

 言いたいことは分かります。急に決まった結婚なので、リック様とは今日が初対面です。納得いかないのも分かります。私だって、納得していません。ですが、結婚式の最中に、不満を口にする必要がありますか? 全部聞こえていますし、全部私への不満ではないですか。
 自分の事しか考えていない彼に、私の方が不満でいっぱいですよ。

 「リック様、今日は私達の結婚式です。諦めて、笑顔で挨拶してください」

 「……君には、感情がないのか?」

 わざとなのでしょうか……それとも天然なのかもしれません。
 散々、私をバカにするような発言をしておいて、今度は感情がないとは失礼過ぎます。

 「そうかもしれませんね。リック様のような方の妻になるのだから、いちいち感情的になっていたら身が持ちそうにありません」

 私の言葉に、なぜかリック様は笑いました。
 

*****


 結婚式は、何とか無事に終える事が出来ました。これから、リック様の妻として生きていかなければならないのかと思うと、すごく気が重いです。
 
 私達は、お父様が用意してくれた邸に住む事になっていて、結婚式を終えたあとは馬車に乗り込み、その邸に向かいました。
 邸に到着すると、私のことは無視して1人でさっさと馬車を降りて邸の中に入って行くリック様。
 馬車の中でも一言も話さず、終始、外の景色を見ていました。このままずっと、私を無視し続けるおつもりなのでしょうか。
 リック様の後を追って邸に入ると、すでにリック様の姿は見当たりません。出迎えたメイドに、リック様の居場所を聞いたところ、自室で休むから誰も通すなと言われたそうです。

 私達は今日結婚したのに、ほとんど会話もせずに自室に閉じこもるなんて、何を考えているのでしょう。リック様の態度を見ていれば、初夜なんてないことくらい分かっていましたし、正直今日が初対面の相手となんて私だって心の準備が出来ていませんでした。
 ですが、話くらいしましょうよ! 私達は夫婦になったのに、気に食わないから完全に無視するなんて、子供ですか!?
 
 結婚式も無事に終わりましたし、一言……いいえ、言いたいこと言ってやります!

 メイドにリック様の部屋まで案内してもらい、ノックをしました。

 ……………………………………

 無視ですか。それなら、無理やり入るのみです! ドアノブを回して中に入ろうとすると……

 鍵がかかっていましたーーーッ!!!

 
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