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2、離婚前提の結婚
しおりを挟むこうなったら、ここから話すしかないですね!
私はドア越しに、リック様に話をする事にしました。
「リック様、鍵を開けてください。お話があります」
怒っても出ては来ないでしょうから、優しく言ってみました。
「……………………」
無視されるのなんて、想定内ですよー!
「では、このままお話しますね。リック様は、子供ですか? 無視していれば、何とかなるとでもお思いなのですか? このまま無視していれば、私と離婚出来るとでも?」
「…………………………」
まだ無視しますか。
「私だって、リック様のような情けない男性が夫になるなんて、ものすごく嫌です。嫌ですが、仕方がないと諦めております。リック様も諦めて、この現実を受け入れてください!」
自分で言っていて、悲しくなって来ました。自分の部屋に行こう……そう思ってドアから離れると、ガチャっという音が聞こえ、部屋からリック様が出て来ました。
「……顔を隠せば、抱けない事もないか」
ピキピキと、こめかみに怒りマークが浮かび上がった気がします……
「こんの、クズ野郎ーーーーーッッッ!!!」
私は思わず、リック様の大事なところを思いっきり蹴り上げていました。リック様は白目を向いて、悶絶しています。
「うう……う……」
呻き声を上げ、大事なところを押さえたまま動かないリック様。……自業自得です! と心の中で思いましたが、さすがにやり過ぎたかと反省しました。
「申し訳ありません。手が……いいえ、足が出てしまったことは反省します。ですが、私は道具ではありません。リック様の言葉に傷付く事もあります。妻扱いしなくても結構ですが、人間扱いはしてください。それでは、失礼します」
軽く頭を下げてその場から離れました。その間も、リック様は痛がっていました。この先、リック様とやっていけるかものすごく不安です。それでも、結婚したのですから、努力はしないといけませんね。
翌朝、朝食をとりに食堂へ行くと、リック様はすでに席に着いていました。
「おはようございます」
昨日のことはまるでなかったかのように、笑顔で挨拶をしました。
「お、おはよう……」
声をかけると、びくつかれてしまいました。昨日の蹴りが、よほど痛かったようです。
「そんなに怖がらないでください。昨日は、申し訳ありませんでした」
頭を下げてから、席に着きます。
執事のジェイスと、メイド達が朝食を運んでくれました。朝食の間、リック様は一言も話そうとはしません。挨拶はしてくれたのだから、無視はされていないとは思うのですが……
「昨日は、良く眠れましたか?」
眠れていないのは、リック様の顔にあるクマを見れば分かりますが、話題がないので……
「……ああ、眠れた。君は?」
まさか、私の事を聞いてくれるとは思ってもみませんでした。これは、いい兆候ですね。
「私はぐっすり眠れました」
本当は、あまり眠れませんでした。家族と離れたのは初めてで、これから一緒に過ごす相手がリック様。不安にならない方が、おかしいです。
「良かった。朝食を終えたら、仕事に出る」
昨日とは別人のようなリック様。無視をするのはやめたようです。
「真実の愛は、もうよろしいのですか?」
リック様はスープを飲む手を止め、スプーンを置いて私を真っ直ぐ見て来ました。
「真実の愛が欲しいのは変わらない。悪いが、君とは離婚前提の結婚だから、そのつもりでいてくれ」
離婚なんて、出来るはずがありません。離婚するのなら、父が立て替えた借金の返済が必要です。リック様に、そんな大金を用意する事は不可能です。どこまでもおめでたい方ですね。
「真実の愛、見つかるといいですね」
バカなのか、純粋なのか分かりませんね……
「ありがとう! 君がそんな風に言ってくれるとは思わなかった! 君を誤解していたようだ!」
リック様は、バカのようです。
嫌味で言っただけなのに、そんなに子供みたいに喜ばれたら、もう何も言えないじゃないですか。
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