〖完結〗聖女の力を隠して生きて来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。

藍川みいな

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19、初めての依頼

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 ジュードが王都に向かって出発した後、私はリバイの冒険者ギルドに行くことにした。お店を開く為には、お金が必要。お金を稼ぐ為に、依頼を受けようと考えた。
 レニーとティアは、ナージルダルに残ってもらった。手っ取り早くお金を稼ぐには、危険な依頼を受けるしかない。レニーを危険な目には合わせたくなかったから、ティアに面倒を見てもらうことにしたのだ。宿屋のおばさんも、町長も、町の人達も、レニーを可愛がって面倒を見てくれている。アットウェルの国境から、ナージルダルまでは、結界を張って来た。そのくらいの距離ならば、すぐに張ることが出来たからだ。

 1人だったこともあり、すぐにリバイに着いた。早速、ギルドを訪れる。

 「リバイの冒険者ギルドへ、ようこそ! どのような用件でしょうか?」

 前の時と同じお姉さんが、同じセリフで出迎えてくれた。

 「あなたは、最低ランクの冒険者様じゃないですか!?」

 覚えてくれてたのは嬉しいけど、相変わらず失礼な人だな。

 「あの……審査って、もう一度受けることは出来ますか?」

 最低ランク……Fランクだと、簡単な依頼しか受けることが出来ない。簡単な依頼ということは、依頼料が安いということだ。私は一刻も早くお金を稼ぎたい。ちまちま簡単な依頼をこなしてランクアップする時間が惜しい。

 「審査を……ですか? 数ヶ月程度で変わるとは思えませんが、審査することは可能です。書類を準備しますので、少しお待ちください」

 お姉さんは奥の部屋へと行き、数分後に戻って来た。

 「こちらの、ランク更新の書類にサインしてから、右上の印に魔力を込めてください」

 契約書の時と同じね。今回は力を隠す必要もないから、全力で魔力を込める。(前回も、全力だったけど……)

 「う……そ…………」

 魔力を込めた書類を見たお姉さんの顔色が、みるみるうちに変わって行く。

 「Sランクだなんて!! この数ヶ月の間に、何があったと言うのですか!?」

 カウンターから身を乗り出して来るお姉さん。
 顔が近い……

 お姉さんが大声でランクを言ったから、周りの冒険者達がジロジロと見てくる。

 「この前来た時は、魔法を使ったことがなかったんです。あの後、魔法を教わっただけですよ~」

 めちゃくちゃ近いお姉さんの顔を押し退けながら答えると、お姉さんは元の位置に戻った。

 「聞いてもよろしいでしょうか? 魔法を使ったことがないのに、冒険者ギルドに登録したのは何故でしょう? 冒険者とは、命懸けの職業なのですよ!?」

 聖女の力は使えていたけど、それを話すつもりはない。

 「冒険者を、甘く見ていたわけではないです。早急に、ギルドに登録しなければならない理由があっただけです。気を悪くしたなら、すみません」

 「冒険者の多くは、大なり小なり、事情がある人が多いので、深くお聞きするつもりはありません。騒ぎ立ててしまい、申し訳ありませんでした」

 Fランクだったのが、いきなりSランクになったのだから、驚くのも無理はない。これも、ジュードが魔法を教えてくれたおかげだ。

 「あの……Sランク冒険者様に、お願いがあるのですが……」

 今までの態度とは違い、切羽詰まったような様子のお姉さん。

 「お願いとは、どのようなことですか?」

 お姉さんのお願いとは、討伐依頼だった。お姉さんの名前は、セリア。セリアさんは、アットウェルの北にあるドーグ村出身で、3日前にドーグ村に魔物が現れたという知らせが届いたらしい。ドーグ村までは、この町から馬車で半日の距離。村人は教会の地下室に隠れているとのことだ。この町から、冒険者が何人か魔物の討伐に向かったが、連絡が取れなくなり、王都からの援軍を待っていたところだった。

 この国アットウェルは、ロックダムとは違い、国の中に魔物の住処が複数存在する。(ロックダムは、王都を中心に結界を徐々に張っていき、ロックダムに住む魔物を全て追い出し、長年国全体を強力な結界で守っていることで、国全体が安全で平和に暮らせていた。)
 魔物が住処を出て、町や村を襲うことは珍しくない。

 それにしても、この国はずっと魔物と戦い、国を守って来たはず。それなのに、この短期間で、2回も強力な魔物に襲われるなんて……
 私はこの国の人達に、凄く助けられている。放っておくことなんて出来ない。

 「その依頼、受けさせていただきます!」


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