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22、サンドラを追って ―エヴァン視点―
しおりを挟む父上に追放して欲しいと頼み、了承してもらった俺は、1番速い馬に乗り、サンドラを追いかけた。
サンドラとアットウェルの王子は、凄い速さで移動していて、全く追いつける気がしない。休憩は最小限に抑え、少しでも早くサンドラと再会しなければならない。
オスカーに裏切られるまで、王太子の座を追われるなどということが起こるとは思ってもみなかった。サンドラにしても、まさか俺との婚約が嫌で、力を隠していたなどと考えもしなかった。
サンドラが生まれた時から婚約していたのに、俺は何も分かっていなかった。
正直、サンドラには興味がない。だが、聖女はロックダムには必要だ。彼女を説得して、必ずこの国に戻って来る。
2週間走り続け、ようやくロックダムの国境が見えて来た。国境の兵に聞いたところ、サンドラ達は既にアットウェルへと向かったようだ。
オスカーに同行してサンドラを連れ戻した兵の話によると、オスカーはサンドラが暮らしていた町の人間を傷付け、サンドラを脅して連れ戻したようだ。俺は、そんな事はしない。
サンドラの気持ちを俺に向けさせればいいだけの事だ。俺が本気で口説けば、落ちない女はいない。サンドラを役立たずだと決めつけ、ずっと冷たくして来た俺の失態だ。これからは、優しくしてやるから、待っていろ!
「お待ちください! この国は、ロックダムからの入国者を制限しております。身分証をご提示ください」
アットウェルの検問所で、兵に引き止められた。そんな事は、想定内だ。この国の奴らは、サンドラの力を必要としているのだろう。
サンドラを連れ戻しに来たのも、聖女であるサンドラを我が国に奪われない為。サンドラが大事だということを、逆に利用すればいい。
「この手紙は、サンドラの父親から預かって来たものだ。一刻も早く、届けてやりたい」
アットウェルに来る前に、没落したオデット男爵に会って手紙を書かせた。公爵家ではなくなったオデット男爵は、毎日飲んだくれていた。娘の心配など全くしていなかったが、さすが元公爵……スラスラと嘘の手紙を書いていた。
「サンドラ様の、お父上からですか!?」
「サンドラの父親は、サンドラが心配で身体を壊してしまって、自ら会いに来ることが出来ない。俺はロックダムを追放された身だが、サンドラの元婚約者でもあった。彼女に、この手紙を届けてやりたいんだ……」
ここで涙を流して……完璧な演技を見せた。
検問所の奴らは、俺がロックダムを追放されたことも信じ、すんなり通してくれた。簡単だったな。
簡単だったのだが、何故か兵士が1人ついて来た。兵士の名はラルフ。こいつの名前などどうでもいいが、覚えておいた方が、サンドラの心象もいいだろう。
ラルフに案内され、ナージルダルという町に向かうことになった。ラルフの馬に合わせて移動しなければならなくなり、速度が落ちた。
サンドラはナージルダルの宿屋にずっと滞在しているようだし、そう急がなくても大丈夫そうだ。
ナージルダルに到着して、サンドラが滞在しているという宿屋に来たが、サンドラは留守だった。
「サンドラ様は、冒険者ギルドのあるリバイに、依頼を受けに行ったようです。手紙は、私がお預かりしましょうか?」
いらん優しさだな。
「サンドラに直接渡したいから、気を使わないでくれ。俺はもう、王太子でも王子でもないから、時間だけは有り余っている」
本当は、あまり時間がない。サンドラが張ったロックダムの結界が、消滅しかけているからだ。前王妃様が残した水晶も割れてしまい、サンドラを連れ戻せなければ、ロックダムは終わりだ。
「ラルフお兄ちゃん! お姉ちゃんに会いに来たの?」
何だこのちびっ子は……
ちびっ子の肩には、小さな犬が乗っている。
「レニーは、今日も元気だな」
ラルフは、少し屈んで、ちびっ子の頭を撫でている。
「エヴァン様、レニーはサンドラ様が引き取って育てているんです」
サンドラが引き取っただと!? まさか、養子にしたのか!?
「お兄ちゃん、だあれ?」
ちびっ子……レニーは、上目遣いで俺を見てくる。
とにかく、サンドラにとってこの子は大事な存在という事か。それならば、優しくしないとな。
「俺はエヴァンだ。サンドラの婚約者だったんだぞ~」
子供など相手にしたことがないから、扱いが分からん。とにかく、語尾を優しく言ってみた。
「お兄ちゃん、変なしゃべり方! あははっ」
バカにされているように感じるが、笑ってくれたからよしとしよう。
「こんにゃくってなぁに?」
そこからか……
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