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25、ドラゴン退治
しおりを挟む金貨100枚なんて、やるしかない! 100枚あれば、家を買うことが出来る!
依頼主は、マリアードという町に住む、ガードナー侯爵。町の場所が分からないから、セリアさんに聞いてみよう。
「セリアさん、こんにちは」
「サンドラさん! 昨日は、本当にありがとうございました!」
「あの、この依頼受けたいんですけど、マリアードという町はどこにあるのか教えていただけますか?」
依頼書を見たセリアさんは、目をキラキラさせた。
「さすが、サンドラさんです! この依頼は、サンドラさんにしか受けられないと思っていたんですよ!」
セリアさんによると、この依頼は数日前から出されていたが、高めの依頼料なのに誰も受けようとはしなかったようだ。
その理由は、マリアードの近くにあるこの洞窟には、ドラゴンが住むと言われているからだとか。
ドラゴンは100年間封印をされていたのだが、その封印がもうすぐ解けてしまうらしい。ドラゴンの封印が解けてしまう事を懸念したガードナー侯爵が、討伐依頼を出したというわけだ。
ドラゴン討伐と書いてしまうと、依頼を受ける冒険者が居なくなると思って、洞窟の魔物の一掃という依頼を出したのね。……洞窟のドラゴンの噂が流れているから、意味はなかったけど。
ドラゴンかあ……なんだかワクワクして来た。
「サンドラ!? まさか、そんな危険な依頼を受けるのか!?」
いつの間にか、セリアさんに見せていた依頼書を、エヴァン様が覗き込んでいた。
「エヴァン様は、連れて行きませんよ」
「何故だ!? 俺達は仲間だろ!?」
絶対に仲間じゃない!
「死にたいんですか? エヴァン様は、ドラゴンに勝てますか? 一緒に行くなら、ドラゴンと戦わせますよ?」
一瞬で粉々でしょうね。
「な!? きょ、今日のところは、ギルドに登録しに来ただけだしな。つ、次は一緒に行ってやるから、安心して行ってこい」
次もないですよ。
「ギルドへの加入をご希望ですか? ギルドに加入するには、レベルの審査を受けて頂く必要があります。そのランクに応じて、受けられる依頼が決まります。よろしいでしょうか?」
セリアさんの説明を、真剣に聞いているエヴァン様。契約書を受け取り、右上の印に魔力を込めた。
「Fランクですね」
やっぱり、エヴァン様にはほとんど魔力がない。
「………………」
言葉が出ないエヴァン様に、セリアさんは追い打ちをかける。
「気を落とす事はありませんよ! 例え、最下位ランクでも、依頼を沢山こなせばランクは上がりますので、最下位ランクから脱出出来ます! 最下位ランクより上の下位ランク目指して頑張って下さいね!」
セリアさんは、私の時と同じことを言った。
さすがセリアさん! 全くブレない!
落ち込むエヴァン様は放っておいて、セリアさんにマリアードの場所を聞いてギルドから出ると、ダンカンさんと自称Aランク冒険者が待っていた。
「「俺達も、連れて行ってく……」」
言い終わらないうちに、風魔法を纏い、土魔方で身体を強化して、猛スピードでマリアードに向けて出発した。
マリアードまでは、全力で飛ばしても3時間はかかりそう。この依頼が終わったら、ナージルダルに家を買って、お店を開こう。
そんなことを考えながら移動していたら、3時間があっという間だった。
「ここね……」
洞窟の中から、異様な空気を感じる。
封印が解けそうではなく、この感じは既に解けている。洞窟の中に入ると、真っ暗で何も見えない。光魔法で辺りを照らし、ゆっくりと進んで行く。奥に進むにつれて、洞窟の中が広くなって来た。
この匂いは何だろう?
洞窟のに入ったときから、すごくいい匂いがしてる。 洞窟の中央に来たのか、開けた場所に出た。
「……何で!!?」
目の前に、血だらけのティアとジュードが倒れている。
助けなきゃ! きっとまだ救える!
ティアとジュードに駆け寄ろうとすると、泣き声が聞こえて来た。この声は……
「レニー!!?」
泣き声が聞こえた方を振り返ると、レニーが泣きながらこちらを見ていた。
「レニー! ここは危険なの! こっちにおいで!」
そう言って両手を広げた瞬間、私の身体が何かに吹き飛ばされて、洞窟の壁に激しく叩きつけられた!!
「……っ!!!」
痛みで身体が動かない。回復魔法で治そうにも、頭を強く打ったからか集中出来ない……
朦朧としながらレニーが居た場所を見ると、そこに居たのはレニーではなく巨大なブラックドラゴンだった。
ティアもジュードも消えている。全て、幻術だったようだ。
ブラックドラゴンが、少しずつ近付いてくる。だけど身体は動かない。
私、死ぬの?
ブラックドラゴンは右手の鋭い爪を、私に向かって振り下ろした!
ごめんね、ティア……レニー……ジュード……
死を覚悟して、ギュッと目をつぶった。
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