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18、王太子殿下の最初の仕事
「皆、よく集まってくれた。今宵は、この国が生まれ変わる記念すべき日だ。私は力がなく、これまで国王として何も出来なかった。だが、これからは違う! ハンスよ、こちらへ」
驚き戸惑っているデリード公爵を気にすることなく、国王は話し出す。
そしてハンス王子が壇上に上がり、国王の隣に立った。
「ハンスを王太子とすることとし、ここからはハンスに任せる」
ハンス王子は一歩前に出ると、
「入りなさい」
そう言って、会場の入口を見た。
姿を現したのは、ホルス王子とクレアだった。
会場がどよめきたつ。
人質としてガダルガにいるはずのホルス王子だけでなく、死んだはずのクレアが生きていたのだから、混乱するのも当然のこと。
二人は笑顔で、壇上へと歩いて行く。
「な、なぜ死んだはずの罪人がいるのだ!? お前は死んだはずだ!!」
一番慌てたのは、カーター。自分の罪を全てクレアに着せて、毒まで渡したのだから、まさか生きているとは夢にも思っていなかった。
「黙りなさい!」
優しいだけのはずのハンス王子が、声を荒らげた。そのことにも、会場にいる貴族達は驚く。
ハンス王子のあまりの威圧感に、カーターはそのまま何も言えなくなり下を向いた。
ホルス王子とクレアが壇上に上がると、ハンス王子が口を開く。
「先ずは、我が弟ホルスの帰国を祝おう。そしてホルスの手に入れた証拠によって、クレア・コールの無実が証明された。卑劣な手を使いクレアに罪を着せ、死を強要したカーター・コールと、カーターにダンカン・コール夫妻を殺害させたハリソン・デリード公爵。デリード公爵に味方する全ての貴族を捕らえよ!!」
ハンス王子の合図で、待機していた近衛兵達がいっせいにデリード公爵達を取り囲む!
「私を誰だと思っているのです!? その手を離しなさい!!」
兵に捕らえられ、身動きが取れずに怒りをあらわにする。
「デリード公爵、あなたはやり過ぎました。この国は、あなた個人のものではありません」
ドーランド公爵は、見苦しく抵抗するデリード公爵に後ろから声をかけた。
今日まで、全てが上手く行っていると思っていたデリード公爵の顔から血の気が引いた。
「もう少し……もう少しで、私はこの国を……」
その場に崩れ落ちるデリード公爵。
デリード公爵が捕まり、他の貴族が抵抗をやめた。少しでも罪を軽くしてもらうつもりなのだろう。だが、カーターだけは最後まで抵抗していた。
「離せ! こんな目に会う為に侯爵になったんじゃない!! 何もかも奪われたのに、まだ奪う気なのか!?」
暴れまくるカーターを、兵は力任せに押さえ付ける。
「見苦しいわね! 何もかも奪われたんじゃなく、あなたが捨てたんじゃない!! 自業自得よ!!」
顔を上げたカーターの前に、シルビアが立っていた。証拠だけでなく、全てを証言したことで、コール公爵の殺害に関わった者全員を捕まえることが出来た。
「お前……!!?」
シルビアの顔を見た瞬間、彼女が証言したのだと理解した。だがカーターは、そんなことよりシルビアにもう一度会えたことが嬉しいと思っていた。自分で捨てた妻。その妻が、自分にとってどれほど大切だったのか気付いた。もう遅い……それは、分かっている。
「……もういい」
なぜか笑顔でそう呟き抵抗をやめたカーターに、シルビアは納得がいかなかった。苦しんで、苦しみまくって、悔やんで欲しかった。それなのに、カーターは笑顔を浮かべていた。
「もういいって何よ!? もっと苦しみなさいよ! メリルと私にしたことを、後悔しなさいよ!!」
シルビアが何を言っても、カーターは笑顔を崩すことなく、兵に大人しく着いて行った。
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