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19、シルビアとメリルの結末
罪人を全て捕らえ、次々に会場から連れて行かれる。こっそり逃げようとしていたセシルも、デリード公爵の家族として連行された。
連行されて行く者達を見送ったドーランド公爵や貴族達は、壇上の前で跪いた。
「私達はデリード公爵の脅しに屈し、陛下をお守りすることが出来ませんでした。その罪を、償わせてください!」
ホルス王子につくと決めた時から、ドーランド公爵は罰を受ける覚悟を決めていた。
「あなた達を処罰するということは、陛下と私も罰を受けなければなりません。そして、国を守る貴族がいなくなってしまう。それでも、処罰を望みますか?」
ハンス王子の問いに、ドーランド公爵も貴族達も答えることが出来ない。
ハンス王子も、自分が罰を受けるべきだと思っている。だがそれは、国王をも罰せられなければならなくなる。罪を償うことは、罰を受けなくても出来る。
「答えられないのなら、立ちなさい。これからこの国の為、そして国民の為に共に力を尽くしましょう」
ハンス王子は、クレアの方に身体を向け、深々と頭を下げた。
「ハンス様……!? 頭をおあげ下さい!!」
クレアが戸惑っていると、ドーランド公爵や他の貴族達、そして国王と王妃までもがクレアに頭を下げた。
「クレア、君には本当に申し訳ないことをしました。冤罪だと分かっていながら、何も出来なかった」
クレアがホルス王子の顔を見ると、彼は頷いた。
「そのようなことはありません。私はこうして、生きています。あの日、死を選んだのは私自身です。この命を救って下さり、ありがとうございました」
命を救われ、愛する人と再会し、無実も証明され、両親を殺害した犯人を捕まえてくれた。クレアに、これ以上望むことなどない。
「ありがとう……ございます。ホルスを、よろしくお願いします」
ようやく全てが、終わった。
ベルミード王国は、この日新たな国へと生まれ変わる。
クレアが生きていたことと無実であることが国中に広がり、国民は喜んだ。使用人が流したクレアの噂が広まっていたことで、彼女には大勢の味方が出来ていた。
デリード公爵邸の地下室から、メリルが助け出された。カーターが兵に捕まったあと、その知らせを受けたシルビアは、急いでデリード公爵邸に向かった。
「メリル! 私よ!! 分かる!?」
邸のリビングのソファーに、メリルは膝を抱えて座っていた。髪はボサボサ、服はボロボロ、身体は傷だらけ。目は虚ろで、小さな声でブツブツと何かを言っている。
シルビアが話しかけても、全く反応がない。
「メリル……酷い目にあったのね。もう大丈夫よ」
シルビアはそっと抱きしめた……が、それでもメリルは反応しない。
二人は、シルビアがかくまわれていた家に戻った。全てが終わったら国を出るつもりだったが、メリルには無理だと判断した。
「あなたが生まれた時、必ず守ると約束したのに……。どうしてこんなことになったのかしら……」
何を話しても、メリルは反応を示さない。
地下室に連れて行かれたメリルは、鎖に繋がれ、使用人達の慰みものにされた。毎日犯され、殴られ続け、感情を失った。
小さな声で言っていることは、「死にたい」だった。何度も何度も同じ言葉を繰り返している。
シルビアは、コール侯爵邸の庭から証拠を手に入れた時に、もう一つの証拠を入手していた。
それは、カーターがクレアに渡した毒と同じ物だった。
「一人でいかせたりはしない。ずっと一緒よ、メリル」
シルビアはグラスに水を注ぎ、その中に毒を入れた。そしてそれを、メリルに飲ませた。
「……っ…………っ…………」
感情を失ったはずの、メリルの目から涙が流れ落ちる。シルビアはその涙を拭い、自分も毒を飲んだ。
翌日、二人の遺体が発見された。
シルビアはメリルを抱きしめたまま、守るように亡くなっていた。
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