夢の話

sora

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み、短すぎる ~その1~

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あまりにも短くて1話ずつ載せるのは躊躇する夢をいくつかまとめて挙げておきたい。


「夢なのに」
目を開ける前から身体が揺れている。
地震かと思ったがそうではないようだ。
低いエンジン音がする。
プシューっと停車する音がして扉が開く音がした、それから初めて目を開けた。
乗っていたのはバスで、降りるのはどうやら自分のようだ。
扉の先は陽がさしているせいかよく見えない。
足元に注意しながらバスから降りて、そこで目が覚めた。


夢の中にも関わらず揺れていた感覚があったのは初めてだった。
歩いたり走ったりというのは動きの速さで分かるものの、そのときの振動を感じることはなかった。
夢の世界も少しずつ進歩しているのかもしれない。



「間に合っ……た?」
目を開けると、私はものすごい勢いで走っていた。
状況が全く分からないが息切れすることなく走っている。
周りは町並みが広がっているものの、進む先に不思議と人はいない。
商店街なのか様々な店先に数人ずつ人がいる。
身体は自動的に動いているようでどこに向かっているかは分からない。
パッと視線が上がる。
青と赤の三角が描かれた看板が見える。
看板には方向を示す矢印も見えた。
身体はその矢印の方向へと進路をかえた。
あれは何の看板だろうと考え、分かったその瞬間にとてつもない尿意を感じた。
そう、トイレに向かっていたのだ。
ひとたび尿意を感じると忘れることができない。
波が幾度かに分けて押し寄せてくる。
押し寄せては少し和らぎ、少し強くなってまた押し寄せるを繰り返す。
トイレに到着し、なんとか間に合ったと分かった瞬間に目が覚めた。
慌てて濡れてないか確認し、大丈夫そうだと分かって安心した。
現実でもどうやら間に合ったようだ。


こういった夢は誰にでも経験があるのではないだろうか。
ちなみに私は小学校高学年くらいまで間に合わなかった経験が多く、大人になってからも1度だけ間に合わなかったことがある。
その時は人生で一番と言っていいくらいの不安を感じながら寝たために間に合わなかったのだと後々分かった。
強い不安を感じたまま眠りにつくのは間に合わない可能性が出るため、気をつけたいところである。



「ただそれだけ」
誰かの声が聞こえる。
明るい弾むような声で聞き馴染みのある声だ。
目を開け……ようとしたが開かない。
この声は小学校時代の同級生だと思う。
卒業式以来、話してもないし会ってもいない。
それでもその人だとなぜか分かってしまう。
それなりに仲は良かったが卒業してすぐに引っ越してしまった、理由は知らない。
恋愛感情はなく、ただ一緒に遊ぶことが多かった。
その人の懐かしい声が聴こえる。
誰かを呼んでいるようだ。
私は話しかけようとしたが声も出なかった。
話したいことや聞きたいことがたくさんあったのになぁ、と
心の中でつぶやく。
ただただその人が誰かを呼ぶ声を聴いていた。
時折誰かと話しているような声も聞こえてくるが、その相手の声はしない。
少しずつ声が遠ざかり、静かにまぶたをあけた。


この夢は登場人物を変えて何度も見ている。
ある意味シリーズものと言えるかもしれない。
この夢と同じように久しく会っていない人やつい先日会った人まで様々である。
想い出を反芻しているのか、忘れないようにしているのか分からないが、その姿を見れなくても喋れなくても、それでも良いと思える夢ではある。
私が今までに出会った人々を忘れることができないのはこの夢ありきなのかもしれない。
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