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しおりを挟むこの国では、貴族の子供が7歳になると
王宮に招かれ国王陛下のお言葉を賜る習慣があった
だが実際に言葉を交わす事が出来るのは
爵位の高い家柄の子供達だけ、というのが慣例
後は社交パーティーと変わりはない
建前上は全ての子に国王が顔を見せる機会だが
爵位が高い家の子供達は、皇太子や皇女の婚約者
それ以外の爵位の子供達は、それぞれの婚約者を
親達が見定め、値踏みする事が目的である
社交界に初めて足を踏み入れる子息、令嬢達
その年齢、その状況で、どのくらい
己の価値を示す事が出来るのか
それを子供ながらに、皆理解し、挑むのだ
「もうすぐ王宮に到着する。
私の娘としてしっかり自分の務めを果たせ。」
こちらを見る事もなく、お父様がそう告げる
娘の初めての戦場だというのに、それだけか…
お母様は私とお父様を交互に見遣り、
お父様に気付かれない程度に小さく溜息を吐く
その所作の美しさも、さすがは華だ
「…はい、公爵家の娘として務めを全う致します。」
返事を返してもお父様の様子は変わらない
無関心では無いと思うけど…
感情が読めない…、…はぁ…どうでもいい
顔色を伺っても、何をしても意味が無いから
私は諦めたものの代わりに
自分を守り、戦う為の術を身に付けた
苦しいと泣き叫ぶ心に蓋をして
どんな難題も死に物狂いで突破したのだ
必ず、成し遂げてみせる
「パルスヴァイン公爵様、ご家族皆様、
御到着でございます!!」
王宮に着き、謁見の間の扉が開かれた
公爵家が到着した知らせに、視線が一斉にこちらを向く
これくらいで怯む私ではない
両親に続いて、中へと歩みを進めた
玉座に一番近い場所まで辿り着くと
早速どこからともなく、
『…あれがフェリシア様…、お可愛いらしいわ…』
『…ご両親によく似ていらっしゃるな…』
『だが、まだ7歳…どれ程か、楽しみだな…』
『本日は王太子はいらっしゃらないからな…
1番の目玉はあの方であろうよ…』
値踏みが始まったようだ
聞こえているのは分かっている筈でしょうに…
まあ容姿は合格だったようね、両親様々だわ
そんな事を考えている内に
「皆様!!
国王陛下のお越しでございます!!」
後方より、高らかに声が響いた
入り口を向き、最上礼の姿勢をとると
ファンファーレと共に国王陛下が入場された
玉座にお座りになられるまで姿勢は崩さず
後を追うように体の向きだけを変える
小さい体には中々辛いその姿勢に
何人かの子供達が尻もちをつく音が聞こえる
慣れないと辛いわよね…、叱られないといいけど
姿勢が身につくまでと言って何日もの間
3時間ずっとこの体勢をさせられた時は辛かったな…
「皆の者、表を上げよ。」
感傷に浸っていると陛下が玉座に座したようだ
姿勢を正し、王のお姿を拝見する
ギルデオン・アイン・ラクレシアン国王陛下
王家の象徴である金色の瞳に黒かった髪は
多忙のせいも有り、ロマンスグレーになりつつはあるが
その色にも威厳が宿る、凛々しいお姿
民の為に、と日々心をお配りになる優しき賢王は
今も柔らかい視線で子供達に視線を送っている
「今日は良く参ったな、子供達よ
其方らはこのラクレシアン国の
次の世代を担っていくであろう、原石である
よく学び、よく考え、己を磨くのだ。
宝となり得るその日を、大いに期待している。」
お言葉を賜り、再度最上礼を行う
この後は爵位の高い家の子供達が1人ずつ呼ばれ
お言葉を交わす事になる
ちらりと陛下がこちらを向き、目が合った
まさか、この位置からして予測はしていたけど…
「まずは、パルスヴァイン公爵家令嬢、
こちらに来て顔を見せておくれ。」
優しく微笑む国王陛下の視線に一礼をする
とうとう来た、己の務めに胃が縮むような気がする
大丈夫、きっと大丈夫よ…
小さく呼吸を整え、王の待つその場所へと向かった
…………………………
一話に誤字があったので訂正しました。
違和感覚えられた方がいらっしゃったら、
本当に申し訳ありませんでした。
何かお気づきの事など有れば
感想などで教えて頂けると幸いです。
よろしくお願いします…!
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